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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
王墓編

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EP124 抗いの鎖

ガギィィィンッ!!


「ぐ、ああぁぁぁッ!?」


カイエンの魔剣から、激しい火花とともに黒紫の魔力が削り落とされていく。 使徒の力すら削ぎ落とす『終焉剣』の絶対的な消滅能力の前に、カイエンの体勢が大きく崩れ、弾き飛ばされた。


ドサッ……と灰色の石畳を転がり、血を吐き出すカイエン。 魔剣の刃身は無残に削れ、黒い指輪を通じて伝わる「事象の崩壊」のフィードバックが、カイエンの右腕の肉体を苛む。


「カイエン!」


アイフェリスが叫び、援護のために最大級の氷結魔法を放つ。 だが、飛翔する巨大な氷の槍は、終焉王が右腕を一振揺らしただけで――軌道上の空間ごと「存在」を削り取られ、チリ一つ残さず消滅した。


「そんな……魔法の術式そのものが、届く前に消されるなんて……!」


アイフェリスが膝をつく。生命力を削って施したバフも、終焉の気配に触れるだけでサラサラと解体されていく。


「で、あれば……実体のある高密度物理弾なら……っ!」


マキマが残された肩部大型実体砲の引き金を引く。超硬度の徹甲弾が音速を超えて終焉王の胸を穿とうとするが、触れた瞬間に『終焉侵食』が働き、弾丸は黒い結晶へと変質してカチンと床に転がった。


「ダメであります……! 技術(科学)も、魔術(魔法)も……この存在の前では全部『なかったこと』にされる……!」


「影からの奇襲も無理だ……っ! 近づくだけで……アタシの存在が削られちまう……!」


ヒナが影の中から弾き出され、痛みに耐えながら地面を這う。


攻める手立てが、何一つとして存在しない。 攻撃すれば存在を削られ、防御すれば結晶化して爆発し、近付けば魔力と命を吸い出される。 圧倒的な「詰み」。全員の心に、底なしの絶望が広がり始めていた。


「ハァ……ハァ……っ」


立ち上がろうとするカイエンの視界も、絶望に染まりかけていた。 削られ続け、ジリ貧。仲間たちも満身創痍。このままでは全滅を待つばかりだ。


その時――。


ズズズ……ガァンッ!


灰色の地面を突き破り、無数の太い黒い鎖が地打ち現れた。


「くっ……『鎖』……!? まだ何か攻撃が来るのか!?」


アイフェリスが悲壮な叫びを上げ、傷ついた仲間をかばうように庇い立つ。 しかし――その幾重にも絡み合う黒い鎖は、カイエンたちへ向かうことはなかった。


ジャリジャリジャリッ!!


重厚な金属音が響き渡り、鎖が締め上げたのは――終焉王エドガルド自身だった。


「ガっ……は……あぁぁぁっ!」


鎖は王の右半身、暴走する黒い甲殻と終焉剣をぐるぐる巻きに縛り上げ、その進行を強引に引き留めた。あまりの締め付けの強さに、王の白銀の鎧が悲鳴を上げ、メリメリと歪んでいく。


「な……に……?」


マキマが呆然と目を見開く。


王自身を縛りつける、黒い重圧の鎖。 それを見た瞬間、カイエンの紅い魔眼が、鎖に刻まれた「事象の糸」の真実を捉えた。


その鎖を呼び出しているのは、地下の封印でも、暴走する終焉の力でもない。 王の左半身――人間として残されたエドガルド王の、最後の最後の『魂の力』だった。


能力『王の鎖』。 それは敵を捕らえるためのものではない。暴走し世界を削り取ろうとする己の肉体を、命を賭して繋ぎ止めるための、あまりに悲痛な自縛術式。


「違う……!」


カイエンは血を吐きながら、絞り出すような大声で叫んだ。


「違うんだ! 王が暴走してるんじゃない! 王は――今この瞬間も、命を燃やして『暴走を止めてる』んだ!!」


「え……!?」


仲間たちに衝撃が走る。


王の左目、青い瞳がカイエンを捉えていた。 その瞳には、狂気など一切ない。ただ、民を守り抜き、世界を救おうとする一人の「王」としての誇りと、カイエンたちへの願いだけが宿っていた。


「頼む……カイエン……」


王の血を吐くようなかすれ声が、鎖の軋む音の隙間から漏れ出る。


「私が……私を抑え込んでいるうちに……私を……殺せ……ッ!!」


「王様……っ!」


アイフェリスの目から涙が溢れ出す。


だが、王の意志による抗いも、限界を迎えていた。 肉体を侵食する「世界の歪み」が、王の意思と『王の鎖』を内側から食い破り、膨れ上がっていく。


「ル……ァァァァァァァァァァッ!!!」


王の口から放たれたのは、言葉ではなかった。


能力――『終焉の咆哮』。


それは攻撃という意図すら持たない、ただの絶叫。 だが、世界の理を崩壊させるバグのノイズを孕んだその「声」は、空間そのものの構造を物理的に破壊した。


バリバリバリギャァァァンッ!!


「きゃあぁぁぁぁっ!?」


叫び一閃。 空間が裂け、天井の巨大な遺跡構造物が爆発的な音とともに崩落し始める。 何百年もの間、地底深くにありながらこの空間を維持していた古代の極大封印陣が、ガラス細工のように一瞬で粉々に砕け散った。


『王墓』の空間が瓦解し、遺跡全体が絶叫のような地鳴りを上げて崩壊していく。 落石と黒い瘴気の渦が吹き荒れる中、カイエンは砕けかけた魔剣を握り締め、咆哮する王を見据えた。

ついにクライマックスです!

評価ありがとうございます!小躍りしてます!

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次回もお会いしましょう!

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