EP123 削ぎ落とされる世界
灰色の空と無数の墓標が埋め尽くす『王墓』の空間。 立ち昇る瘴気の中心で、エドガルド王の右腕――黒い甲殻と王剣がグチャグチャに引きちぎれ、完全に再構築されていく。
ギチ……ギチギチッ……!
硬質で不気味な音が響く。 右腕全体が一本の歪な黒銀の巨大な刃そのものへと変貌していた。刃の表面には無数の赤黒い脈絡が走り、存在そのものが世界の理を拒絶するように暴れている。
王の能力――『終焉剣』。
「……逃げ……ろ……カイエン……っ!」
終焉王の左目、かすかに残る青い瞳が血の涙を流しながら叫ぶ。 だが、その意思を無視して、融合した右腕の終焉剣が緩やかに振り下ろされた。
速さも重さもない。ただの素振り。 しかし、その刃が通過した空間の「空気」も、「光」も、「概念」も、まるで最初から存在しなかったかのように綺麗に削り落とされた。
「な……っ!?」
アイフェリスが息を呑む。 彼女が咄嗟にカイエンの前に展開した、精霊術の極致である古代多重結界――それが、終焉剣の刃に触れることすらなく、刃の描いた軌跡の延長線上にあったというだけで、文字通り「存在を削られて」蒸発した。
斬るのではない。 質量を断つのではなく、その空間に存在する一切の事象そのものを消滅させているのだ。
(結界だけじゃない……時間すら……動きを止める隙すら削り取られているのか!?)
カイエンの紅い魔眼が、戦慄すべき光景を捉えていた。 終焉剣の通過した空間は、事象の糸すらも残らず消滅し、完全な「無」の亀裂となって空間に穿たれていた。どんな防具も、どんな概念防御も、あの刃の前では何の意味もなさない。
「カイエン!!」
アイフェリスが青ざめた顔で杖を強く掲げた。
「あの刃を受けたら終わりです! 私の全魔力を捧げます……走ってください!」
アイフェリスの全身から、エルフの命の輝きとも言える濃密な緑金の魔力が爆発的に噴き出した。 彼女は己の生命力を削る覚悟で、カイエンの全身へ途方もない高次元の強化魔術を叩き込む。
『精霊王の加護』『瞬光の歩法』『事象固定の鎖』――
カイエンの肉体を包む重圧が跳ね返され、筋肉と神経が極限を超えて活性化する。全身を巡る圧倒的な魔力の奔流。
「感謝する、アイフェリス……!」
カイエンは牙を剥き、左手の黒い指輪、そして背中の魔剣へと意識を没入させた。
「来い……『使徒』の力……っ!」
ドクンッ!
カイエンの心臓が激しく跳ね跳び、魔剣から溢れ出た不吉な黒紫の魔力が全身を包み込んだ。 肉体が「世界の一部」として解体されていく痛みが全身を襲うが、それを鋭利な集中力で抑え込む。使徒を喰らう禁忌の魔剣――その全能力を限界突破させ、カイエンは踏み込んだ。
「オオオオオオッ!」
残像すら置き去りにする超神速。 カイエンは『王墓』の灰を巻き上げ、消滅の軌跡を描く終焉剣の死角へと潜り込んだ。
事象の糸が見える。 王の左半身、胸の奥で必死に抵抗し続けている「エドガルド王本人の命の結晶」。そこへ届かせるべく、使徒の力を極限まで引き上げた魔剣を全力で振り下ろした。
使徒の魔力は、世界の理を書き換える絶対的な侵食力を持つ。どれほどの防具も、どれほどのエラーも喰らい尽くすはずの不滅の力。
――勝てる!
そう確信し、カイエンの魔剣が終焉王の首元へ届こうとした、その瞬間。
ギャリィィィッ!!
暴走する王の右腕――終焉剣が、人間には不可能な関節の捻りで反転し、カイエンの魔剣と正面から激突した。
空間が激しく歪み、互いの魔力が狂ったように火花を散らす。
だが――カイエンの顔が、驚愕に引きつった。
「な……に……!?」
魔剣から放たれていた、絶対に滅びないはずの『使徒の魔力』。 世界の理を侵食するはずの黒紫のオーラが、終焉剣と触れ合った瞬間から、サラサラと黒い砂のように崩れ落ち、消滅していく。
侵食されているのではない。相殺されているのでもない。 使徒の力そのものが――『存在を削られて』消えているのだ。
(バカな……!? こいつ……使徒の力すらも削るというのか……!?)
「グ……ガぁぁぁッ!」
終焉王の右目が紅く暴走し、終焉剣がさらに押し込まれる。 カイエンの魔剣の刃身が、ミシミシと音を立てて削れ始めた。使徒の概念そのものを消し去る終焉の刃が、カイエンの最後の切り札すらも呑み込もうとしていた。
少し短いですが、本日はここまでです。
王のキャラ作りをしている時に色々な資料を見ていたのですが、結構気に入っているキャラです!
既視感があったら、ぜひコメントで教えてください!
最後まで駆け抜けていきますのでよろしくお願いいたします!(失踪はしないです)
ぜひ、コメント、ブクマ、評価をお願いいたします!




