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不適合者のレギュレーター  作者: シャロン=ミ
王墓編

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EP120 王国の残像

「全員の覚悟を呑み込んだ上で、カイエン――お前はなお、この『棺』を開け、世界を整理すると言うのか?」


喉元に突きつけられた刃の先で、エドガルド王の冷徹な問いが響く。


カイエンは血を吐き出しながら、紅く光る魔眼で王を射抜いた。 倒れたヒナ、アイフェリス、マキマが傷つきながらも立ち上がろうとする気配を背中に感じながら、カイエンは柄を握る手に力を込めた。


「ああ、決まっている……! どんな悲劇があろうと、どんな誇りがあろうと……止まった過去に縛られ、世界が崩壊するのを指をくわえて見ているわけにはいかない!」


「そうか」


エドガルド王は短く答えた。 次の瞬間、静寂に包まれていた星柩の間が、激しく揺れ動いた。


ズズズ……と地鳴りが轟き、王が座していた巨大な玉座に亀裂が入る。 メキメキと音を立てて玉座が崩壊し、その破片が宙に浮かび上がると、黒い結晶が弾けて眩い光の粒子となった。


光は渦を巻き、大広間の天井や壁、床の光景を瞬く間に塗り替えていく。


「な……!?」


アイフェリスが目を見開く。


空間全体が書き換わっていく。 現れたのは――燃え盛る巨大な街並み。天を突く煙、崩れ落ちる重厚な石造りの建物、逃げ惑い悲鳴を上げる民の群れ、絶望に倒れていく無数の兵士たち。


それは実体ではない。数百年前、この地が地底へ沈んだ『あの日』の光景が、王の記憶と魔力によって空間に展開された「過去の幻影」だった。


燃える王都のただ中に、カイエンたちは立っていた。 周囲で泣き叫ぶ人々の声、炎の爆ぜる音、死にゆく者の熱気が、肌を刺すほどの臨場感をもって押し寄せてくる。


崩壊した玉座の跡地に立つエドガルド王は、燃え上がる我が国を見つめ、静かに両腕を広げた。


「見えるか」


王の声が、燃える王都の絶叫を覆い隠すように響き渡る。


「これが――私の国だ」


そこには、王として自らの手で国を沈めた男の、無限の悔恨と誇りが満ちていた。 王の身体から溢れ出す魔力が変質する。ただの武人としての剣気が、世界そのものを支配する「法」の圧迫感へと昇華していく。


王国の残像の中で、エドガルド王は静かに口を開いた。 それは剣を振るう動作すら伴わない、ただの言葉。――しかし、それはかつて一国を統率した『王命』そのものだった。


「――『跪け』」


ドガッ……!


瞬間、カイエンたちの頭上に途方もない絶対的な質量が叩きつけられた。 見えない重圧の壁。重力魔法などという生易しい代物ではない。空間そのものが「王の命令」に従い、そこに存在する者すべてを強制的に平伏させようと叩き潰してくる。


「くっ……ぁあ!?」


傷ついたヒナとマキマが、抗う間もなく石畳へ叩きつけられる。アイフェリスも杖を支えに耐えようとするが、両膝が激しい音を立てて床に折れ曲がった。 カイエンもまた、魔剣を床に突き立て、全身の骨が軋む音を聞きながら必死に踏みとどまる。


「これが……王の権能か……!」


これが第二形態――『王国そのもの』を背負い、行使するエドガルド王の真の姿。


王は一切の感情を排した無機質な瞳で、抗うカイエンを見下ろした。 王の手が空を払う。その空間に、まばゆい光とともに歴代の王家が遺した国宝――『王権』が召喚された。


王の頭上に浮かび上がる、輝く『王冠』。 左手に顕現する、あらゆる概念の攻撃を弾き返す巨大な『王家の盾』。 右手に握られる、黄金の輝きを放つ『神聖なる槍』と『歴代の宝剣』。


数千年の歴史、何十代にわたり受け継がれてきた王国の「概念の結晶」が、エドガルド王の周囲を埋め尽くす。


王は立ち上がろうとするカイエンに向かって、冷酷に次の命を下した。


「――『進め』」


燃え盛る街の影から、無数の騎士の幻影が重厚な鎧の音を響かせて現れた。 かつて王国を守り、王と共に散った数千の英霊たち。 彼らは王の「進め」の一言に従い、槍と剣を掲げ、怒涛の突撃を開始した。


「死者どもの幻影が……!」


カイエンは紅い魔眼を限界まで見開き、迫り来る幻影の軍勢と、空中に浮かぶ王権の宝具群の「事象の糸」を手繰り寄せる。


「失われた過去の栄光で……俺たちの『今』を止めてたまるかぁぁぁっ!」


叩きつけるような重力の嵐を押し返し、カイエンは覚悟の破砕音を響かせながら、燃え上がる王都の幻影の中へと駆け出した。

この1人1戦ってラスボスが尻すぼみになることが多いのでめちゃくちゃキャラ作りに悩んだ思い出です!


ブクマ、コメント、レビューお願いします!考察などもだいすきなので、是非聞かせてください!

次回もお楽しみに!

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