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追放悪役令嬢、辺境の荒れ地を楽園に!元夫の求婚?ざまぁ、今更遅いです!  作者: 黒崎隼人


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第2章:聖域の目覚めと神獣の契約

 来る日も来るる日も、私は土と向き合い続けた。村人たちの冷たい視線にも慣れ、彼らが何を言おうと気に留めなくなった。私の世界は、この広大な荒れ地と、いつか芽吹くであろう未来の作物だけだったから。

 一ヶ月が経つ頃には、荒れ地の一部は見違えるように整地され、ふかふかのうねが何列もできていた。私は持参したわずかな種――カブやジャガイモといった、痩せた土地でも比較的育ちやすいものを選んで蒔いた。

「お願い、育ってね」

 小さな種に語りかけ、水をやる。それが私の日課であり、唯一の楽しみだった。


 そんなある日のこと。さらに土地を広げようと、荒れ地の奥深くへと足を踏み入れた時だった。そこは特に岩が多く、不気味なほど静まり返っている場所だった。私が大きな岩をどかそうと鍬を突き立てた、その瞬間。

 ゴゴゴゴゴ……!

 地響きと共に、足元の地面が淡い光を放ち始めた。驚いて後ずさると、光は古代遺跡のような文様を描き出し、その中心から黒い影がゆっくりと立ち上ってくる。

「……なに?」

 影は徐々に形を成し、私の目の前に現れたのは、家ほどもある巨大な黒い狼だった。月光を吸い込んだような漆黒の毛並み、鋭くも知性を感じさせる黄金の瞳。それはただの獣ではない、神々しいまでの威厳を放つ存在だった。

「グルルル……」

 低い唸り声が空気を震わせる。これが、この辺境に棲むという魔物だろうか。しかし、不思議と恐怖は感じなかった。その黄金の瞳が、ただじっと私を見つめているだけだったからだ。

「……驚かせてごめんなさい。あなたの眠りを妨げてしまったのね」

 私は自然とそう口にしていた。鍬を置き、ゆっくりと頭を下げる。

 すると、巨大な黒狼は少し驚いたように瞬きし、やがて荘厳な声で、直接私の頭の中に語りかけてきた。

『……我に謝罪するか、人の子よ。我はフェンリル。この聖域を守護する者なり』

 聖域?ここが?ただの荒れ地ではなかったというの?

『永き眠りについていたが、汝の行いが我を目覚めさせた。汝はこの土地を傷つけず、むしろ慈しみ、育もうとしている。その心、まこと純粋なり』

 フェンリルと名乗った神獣は、ゆっくりと私に近づいてくる。その巨体にもかかわらず、足音はほとんどしない。私は身動き一つせず、彼を見つめ返した。

『人の子よ。汝の名は?』

「レイナ、と申します」

『レイナか。良い名だ。……レイナよ、我と契約を結ぶ気はないか?』

「契約……ですか?」

『うむ。汝の純粋な魂と、この土地を愛する心は、我が力を与えるにふさわしい。契約を結べば、汝は我が加護を得るだろう。この聖域は汝の意思に応え、荒れ地は豊かな大地へと姿を変える』

 願ってもない申し出だった。けれど、私は尋ねた。

「私に、見返りを求めないのですか?」

『見返りか。……ならば、一つだけ。我のそばで、その農作業を続けるがいい。汝が土を耕し、種を蒔く姿を見るのは、悪くない』

 その言葉に、私は思わず笑みをこぼした。

「分かりました。私でよければ。フェンリル、あなたと契約します」

 私がそう答えると、フェンリルの額の文様が強く輝き、一筋の光が私の額に触れた。温かく、心地よい力が全身を駆け巡る感覚。これが、神獣の加護。

 契約が終わると、信じられない光景が目の前で繰り広げられた。

 私が耕した畑から、柔らかな緑色の光が立ち上り、蒔いたばかりの種が一斉に芽吹いたのだ。そして、それは驚異的な速さで成長し、数分もしないうちに、青々とした葉を茂らせ、地面の下には丸々としたカブやジャガイモが実っているのが分かった。

「すごい……」

 あまりの出来事に、私はただ呆然と立ち尽くす。

 フェンリルは満足そうに喉を鳴らし、私の足元にそっと体を横たえた。その漆黒の毛並みは、陽の光を浴びてキラキラと輝いている。

 私はおそるおそるその背中に触れてみた。硬そうに見えた毛は、驚くほど柔らかく、もふもふとしていて温かかった。

 こうして私は、最強の味方を得た。

 神獣フェンリルと、その加護を受けた聖域。私の辺境スローライフは、予想もしなかった方向へと、大きく舵を切ることになったのだった。

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