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96 質問タイム

 夜、外に出ると月が綺麗でした。

 乱視なので分裂していくつも見えるんですけどね。

 夏目漱石先生が乱視だったらどんな表現をするのかとか考えます。


 では96話目、月の下でも、照りつける太陽の下でも楽しんで頂けたら幸いです。

「スリーサイズは?」

「つ、付き合ってる人はいますか?」

 ジョンさんに近寄って、勢いよく手を上げた黒次と白次が、教育実習に若い先生がきた時みたいな質問をする。


「アホか!」

 すかさず月子さんがジャンプして、頭から煙の出そうなチョップをズビシ! っとお見舞いする。

 その後しゃがみこんだ二人の襟首を掴んで後ろに引きずって行く。

 手慣れている。流れるような動作に迷いが無い。


「コイビト ボシュウ チュウ スリーサイズ は 43、52、55 メルル ダヨ」

 ジョンさんがイタズラっぽく笑って質問に答えた。


「メルル、ってジョンさんの星の単位か? 仮に二倍だとすると、86、104、110! 見た目と合わない。何か特別な変換法則があるのか、順番が違う? 何か見落としてる? シープに聞けば・・・」

 丞がシープを捜して振り替えると、見落としていた笑顔のスパッツ鬼がクイッと肩越しに親指で、正座している男卯上の隣を差した。


「「僕、声に出してた?」」

 丞は白次の隣に正座しながら思考通信で

シープに問いかける。


『『はい、おもいっきり』』

 シープは丞ではなくジョンさんの方を見て答えた。丞との思考通信を九海にバレないようにしているようだ。


「「メルルって単位シープ知ってる?」」

 項垂れて反省してますよのポーズをしながら、シープの知識に丞は期待する。


『『ちっとも反省していませんね。センチメートルにするには2・76掛けます』』

 あきれたようなシープの声と共に丞に三つの数値が伝えられた。


「バカな! ジョンさんの見た目と合わないよ!」

 ガバッと顔を上げて丞がシープに叫ぶ。


「何? いきなり・・・ バカは、丞でしょ! ナビと思考通信で話してたのね! ジョンさんの種族のスリーサイズは頭の周囲よ!」

 いきなり叫んだ丞に赤い顔の九海も叫ぶ。


 九海の叫びで丞の疑問が解けた。

 ああ、なるほど。ジョンさんの種族は髪? 羊毛? の部分が魅力の基準なのかと、早くも足の痺れを感じながら正座した丞は遠い目をする。数値が二つ多いのは角の分か。


 フムフムとジョンさんのアフロっぽい頭を見ていると、丞にウインクが飛んできた。


『え、私も正座ですか? 連帯責任?』

 丞の隣にシープも正座させられる。

 九海にわからないよう、少し浮いてごまかしてるので、シープも足が痺れるのかと丞は驚いた。



「野球は好きですか?」

 虎城君はぶれない。


「ナツ コウシエン ミル グライ ガンバル キュウジ オオエン スルヨ」

 ジョンさんがボールを投げる真似をする。


「宇宙人も注目してるのか・・・」

 感慨深げに呟いた虎城君が目を閉じて何かに耐えた。

 目から出なかったそれはちょっと鼻から垂れそうになっている。


「今日のゲームは芸術的にはどうなのでしょうか?」

 委員長もぶれない。


「ゲイジュツ アマリ イシキ ナイ デモ セカイ ツクリ コンダ」

 あんまり説明するとネタバレするとジョンさんは人指し指を唇にあてる。


「ジョンって男性の名前ですよね。女性なのに何で?」

 全が何でみんな最初に聞かないんだろうと、異世界会員の変わり者っぷりに首を傾げる。


「サイショ チキュウ イッタ トキ マチガエタ シリアイ デキタ カラ ソノママ ミンナ オボエヤスイ イウネ」

 ジョンさんの頬がほんのりと赤くなった。


「どんなゲームですの!」

 姫様は質問する時も叫ぶ。


「ン? ワタシ シツモン モウナイ? ナイナラ ゲーム セツメイ ハジメルヨ」

 ジョンさんは全員を確認してうなずくと、バケツ大の火の玉に合図する。


『このゲームのナビゲーションを勤める』

『鬼火とウィルオーウイスプでございます』

 火の玉がゆらりと身を震わせながら自己紹介した。


「見分けがつかネーな」

 黒次がさりげなく立とうとして、月子さんに肩を押さえられている。


『では、これで』

『どうでしょうか』

 片方の火の玉が鮮やかな緑色に変わっていく。


どうが入ったのね」

 委員長が良い色と、誉めながらうんうん頷く。


『私をオニビーと』

『私をウィルとお呼びください。』

 赤と緑の火の玉がジョンさんを中心にぐるぐる回る。


『皆様が』『これから』『体験する』『ゲームは』

『お化け屋敷』『謎解き』『脱出』『ゲーム』

『入れ替わりも』『あるよ』

 

『恐怖と』

『達成感を』

『『お楽しみ下さい』』


 火の玉が分裂しながら、見事なフォーメーションをきめてゲームの説明をする。


 委員長がパチパチと拍手をしたので、丞達も一呼吸遅れて拍手した。


 正直、フォーメーションの動きに気を取られて説明が頭に入ってこない。


「マズ クジ ヒコウ」

 ポンと軽い爆発音と共に現れた先がボックスの中に入って見えない棒クジを、ジョンさんが丞達に差し出した。


 カラン、カランとプラスチックが当たる音をならしながら、皆でくじを引く。


『赤がチャレンジャー』

『緑がお化けの役です』

『今なら双方合意すれば』

『入れ替わりはありです』

 火の玉ナビが丞達の回りを廻る。


 赤チーム、丞、全、ミッケニ、月子さん、委員長

 緑チーム、九海、黒次、白次、虎城君、姫様


『『皆さん準備よろしいですか?』』

「ミンナ モニター ゲーム キニナル アトデ オシエテ」


 火の玉がピカッと光ると赤チーム、緑チーム、はそれぞれのスタート位置に立っていた。

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