90 何難? 水難?
いつの間にか90話。
作中では一月たっていない・・・
上手く時間を経過させたいと思っております。
では、90話目楽しんで頂けたら幸いです。
起きると同時に目を閉じる。
白い空間になるがシープがいない。
「非実体モードでしょ」
『丞様もフぃみョンに慣れてきましたね』
シープが丞の目の前に実体化する。
「御断りのメッセージってもう送った?」
『いえ、丞様に確認してから送ります』
「どんな感じ?」
『今回のフレンド申請は貴殿の御期待に添えない為、許可を見送りました。○○様のさらなる御活躍をお祈り致します』
「丁寧だけど、何か嫌だな」
『御断りの一般的な文章から抽出してみたのですが』
「う~ん。断るって難しいな」
『あんまり、日本人はノーと言わないですしね。これで送りましょう』
「ノー」
『そうですか。そういえば、丞様が断らなくても、ミッケニさんがご両親を通じてやんわり言ってくれるそうですよ?』
「最初に言ってよ!」
『聞かれませんでしたので』
シープがいつものしれっとした顔で消えていく。
「シープにはいつまでたっても慣れないな!」
丞はベッドに仁王立ちして小声で叫ぶ。
時刻は六時前、隣に配慮するところが日本人らしい。
そして、裸族の丞の仁王立ちは色んな意味でアウトだ。
無駄な時間をすごした。
首を振りながら急いでシャワーを浴び、学校に行く準備を整えた丞は部屋の鍵をかける。
「おはようございます」
食堂で管理人のおばちゃんに挨拶して、朝食のトレイを取る。
「飯堂寺君、昨日の残りのチャーハンあるんだけど食べる?」
おばちゃんがラップのかかった大盛りの皿を冷蔵庫から取り出す。
「いただきます」
昨日は姫様の騒動でコンビニご飯だった。
食べ損ねたけど、おじちゃんのチャーハン気になってたんだよね、と丞はお言葉に甘える。
今日のおかずは目玉焼きにベーコンにハム。汁物は味噌汁。
おかずの皿から目玉焼きを温めたチャーハンに載せれば、朝からちょっと贅沢な気分になれる。
テレビの前に座るとおひつじ座の運勢を見逃すところだった。
~難に注意。全体的にはラッキーな一日になるでしょう。
何難だろう? この占い結構当たるから気になる。
占いを少し聞き逃した事を残念に思いながら、レンゲで目玉焼きの黄身を潰したところにちょっと醤油をかけて、丞は米粒をかきこんだ。
天気予報で傘が要らないことを確認し食器をかたずける。
「ご馳走様でした」
おばちゃんに挨拶して食堂を出る。
玄関で管理人のおじちゃんにチャーハンの感想といってきますを言って丞は学校に向かった。
「七百円お買い上げごとにくじが引けますよ」
昨日の夜、爪を噛んでブツブツ言っていた男の店員さんが、明るい笑顔で接客してくれる。
よかった。TKGが手を打ってくれたのかな。
丞の心配事がひとつ減った。
「これ追加でお願いします」
レジ前のソフトキャンディーを追加して、丞は中の見えない箱に手を入れる。
このくじのコツは一番上から取る。
当たりくじを入れる店員さんの怠け心に期待を込めた。
「大当たり~」
店員さんがレジの後ろに積んであった品物から、二リットルのスポーツドリンクをビニール袋に入れて丞に渡してくる。
「新商品です。イヤ~。うらやましい!」
店員さんのテンションが少しおかしい。
そういえば、昨日の夜も働いていたな、入り口の求人のポスターも無くなった事ないし。
丞の心配事がひとつ増えた。
「また、きてね~」
学校帰りもいたらどうしよう。
妖怪いつもの店員。怖くないな、無限店員だと何か違うな? と新たな名前を考えながら丞は歩き出す。
聞き逃した占いは水難だったかと、荷物になったペットボトルを持ち直して教室に入る。地味に重いしビニール袋の持ち手が手に食い込んで痛い。
「おはよう。何で二リットルの飲み物持ってんの?」
白次が聞いてくる。
「コンビニのくじで当たっちゃって」
「朝からついてんな。これ新商品じゃね?」
黒次がペットボトルのラベルを読む。
「飲んでみたい」
月子さんも興味津々だ。
「お昼でよければ。でもコップがないんだよね」
女子がいるので回し飲みとはいかない。
男だけでも嫌だが。
「コップあるわよ」
委員長がプラスチックの使い捨てコップを取り出す。
「何で?」「こんな事もあろうかと」
委員長の眼鏡がキラッと光る。
「まあ、いいや。みんなフぃみョンどう?」
鞄の中身を机に移しながら丞は聞いてみた。
「絶好調」「う~ん」「思ったのとちょっと違った」「綺麗よ」
四人が思い思いに答えた。
「一般レースは勝ったり負けたり。負け犬ドッグスが何人か上がってきた」
月子さんが右手を左手が追い越すまねをしながら熱っぽく語る。
「マシンアンドマジンはまだまだ序盤だね。ポケモンみたいにパートナーに後ろで指示するのかと思ってたら、最初は僕らの戦闘がメインだった」
運動苦手と白次がぼやく。
「おう、俺らが加勢しないとすぐパートナーが行動不能になるのな。丞にもらった木刀が役にたってるぜ」
黒次が見えない木刀を振り回す。
「委員長は美術館めぐりだっけ?」
白次が委員長に向き直る。
「そう。綺麗よ」
「風景、それとも美術作品が?」
丞もどんな感じなのか聞いてみたい。
「どっちも綺麗よ」
「?」
「イインチョーは起きたら覚えて無いんだから聞いても意味ネーだろ」
黒次がフぃみョンのブロックを思い出させる。
「ああ、そうだった」
「忘れてた」
「そう! 忘れてたんだよ! 球を追う喜び」
野球部の朝練に久しぶりに参加した虎城君が、興奮した様子で話に入ったところで、先生がきてホームルームが始まった。




