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74 タイムアップ

 ブックマークが増えました。

 ブックマークして頂いた方ありがとうございます。

 貴方にぴったりな服がすぐ見つかるように祈ります。

 いつも読んでくださる皆様もありがとうございます。

 去年の服がすんなり入るように祈ります。(太らない人はぶかぶかにならないように祈ります)


では、74話目楽しんで頂けたら幸いです。

「もう、冗談ではありませんわ」

 寮の廊下を一人、姫様が歩く。


「ミッケニまで帰るつもりなんて」

 姫様が三毛の子猫を思い浮かべる。

 姫様にとってミッケニは乳兄妹だ。

 お乳の出が悪かった王妃に代わり、ミッケニのお母さんのお乳で姫様は育った。

 隣りでお乳を飲んでいたミッケニは、姫様にとって頼れるお兄ちゃんみたいな存在なのだ。


「代わり映えしませんわね?」

 ドアの並んでいる廊下で姫様が独り言を言って振り返る。


「ミッケニはいないんでしたわ」

 白い子猫はだんだん心細くなってきた。


「ま、まあ、そろそろミッケニも反省したかしら。謝ったら許してあげますわ」

 引き返して丞の部屋に戻ろうとした姫様の背後から、黒い影が近づいてきていた。



「飯堂寺君いつも早いね。でも今日は早すぎかな。まだ出来てないよ」

 丞が食堂に入ると続き部屋になっている寮の厨房から、管理人のおっちゃんが玉ねぎを刻みながら話しかけてきた。

 今日の夕飯はチャーハン系のようだ。


「いえ、ちょっと探し物を」

 丞はテーブルの下を順番に見ていく。

「何を探してるの?」

 おっちゃんが聞いてくる。


「ひ、ウッ! か、鍵。鍵です。自転車の鍵」

 姫様と言いそうになった丞の腰に、鞄の中からミッケニの猫パンチが入った。


「自転車につけっぱなしになってない?」

 おっちゃんが玉ねぎを刻み終わる。


「そうですね。見てきます」

 姫様がいないので丞はおっちゃんの言葉に従う感じで、自然に食堂から出ようとした。


「お母さん! 猫ちゃん拾った!」

 管理人さん一家の娘さんの無邪気な声が厨房の奥の方から聞こえてきた。

 今なんて? 丞はもっと何か聞こえないか耳を澄ます。

 残念ながら娘さんの声に続きはない。

 バタバタと動く鞄をおっちゃんに隠しながら食堂をでる。

 廊下に誰もいないのを確認して、鞄のメッシュ越しにミッケニと顔を見合わせた。


「姫様だと思う?」

 姫様だろうなと思いながら、丞が一応ミッケニに確認する。


「まずは確認しよう」

 ミッケニが爪を器用に使って鞄を内側から開ける。


「さっきの壁に張り付くやつでいこうか。外から管理人さん家を覗いてみよう」

 丞は鞄から出ようとするミッケニを押さえながら外に出た。



「どう? 見える? 娘さんが拾った猫って姫様?」

 外壁に張り付いてミッケニが管理人さん家の窓から中を覗くのを、他の人に見つからないように見張りながら丞が小声で聞く。


「ああ、やっぱり姫様だった」

 ミッケニがトンと丞の前に着地する。


「ミルクをご馳走になっていた」

 ミッケニがホッとした様子で丞に報告する。


「見つかって良かった。姫様と何か話す手段はないの?携帯電話みたいなヤツ」

 丞は電話をかける真似をする。


「普段ならあるが今はお忍び中なので使えない。通信出来るようにすると、他のお付きの者に姫様の位置がわかる」

 ミッケニが毛に隠れていた細いネックレスを丞に見せてくる。

 真ん中に鈴みたいな丸い物が付いており子猫によく似合っている。


「姫様のお付きの者って何人ぐらいいるの?」

 二足歩行の猫のメイドや執事を丞は思い浮かべた。


「今回来ているのは50人だ」

 ミッケニの言葉で丞の想像が暴走した。

 50人の猫メイドがこの寮に押し寄せる様子を想像して青くなる。

 寮が猫だらけになる前に姫様をどうにか回収しないと。

 丞はキリッと表情を引き締めた。


 丞とミッケニは向かい合って目を閉じて、同じ腕組みポーズでうんうん唸ったが、姫様を回収する良いアイデアは浮かばない。


 今の状態は例えるなら宝物を狙う怪盗に近い。

 人のいる家から物を盗ってくるのは普通の人には不可能だ。


 でも、今のところ姫様に危険は無い。

 通信機能を使ったりもしないだろう。

 姫様が自力で脱出するのを待つしかないかな。

 夜、寝静まった頃なら打てる手も増える。

 うん。これ以上状況は悪くならない。


 結論を出した丞が目を開ける。

 状況が悪くなっていた。

 ミッケニがいない。


「ミッケニどこ?」

 丞は小声で呼んでキョロキョロとミッケニを探す。


「ここだ」

 ミッケニの返事に丞が顔を上げるとミッケニがまた窓を覗いている。


「何してるの?」

 丞の質問にミッケニが行動で答えた。

 ペシペシと窓ガラスを叩く。


「お母さん! 猫ちゃん喋った!」

 管理人の娘さんの驚いて叫ぶ声が丞の耳に届く。

 ミッケニを見つけた姫様が叫んだな。

 丞の脳裏にその様子がありありと浮かぶ。


 丞は両手で顔を覆った。

 状況は最悪だ。

 さっきこれ以上悪くならないと考えた自分に教えてやりたい。


「ミッケニこっち!」

 丞はミッケニを呼んで窓のある壁の角を曲がって隠れる。

 間一髪。窓の開く音がする。

「あれ、いない」

 娘さんの声がして窓とカーテンの閉まる音がする。


「何してるのミッケニ!」

 丞はミッケニを顔の高さまで持ち上げる。

 子猫は震えて涙目になっている。

 うわ、僕そんなに怖いかなと思った丞が

妙な事に気づいた。

 ミッケニの視線が丞の後ろを見ている。


「何してるの タ・ス・ク?」

 丞の背後から九海の声がする。

 声だけでわかる。怒りがオーラのように九海から噴き出しているのが。


 さっき状況は最悪と考えた自分に教えてやりたい。

 まだまだ状況は悪くなれると。


 ミッケニと同じように涙目になった丞の震えが止まらない。

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