75 セイザの世界
この作品PVが増えております。
ジャンル変更が効いているようです。
今度はローファンタジーもいけるか、などと考えております。
ジャンルが変わってもよろしくお願いします。
では、75話目楽しんで頂けたら幸いです。
「で、それから?」
仁王立ちした九海が正座した丞とミッケニに話を促す。
「私が窓を叩いて姫様に合図しました。そしたら姫様が私の名前を叫んだんです」
ミッケニがうつむきながら小さい声で九海に答える。
「管理人さんの家が騒がしくなったんでミッケニを呼んで、窓から見えない場所に隠れました」
丞もうつむきながら答える。
脛に食い込む小石が痛い。
「状況はわかりました。もう!何やってるの!」
九海がため息を吐きながら怒るという珍しい事をやってのける。
そのまま丞達を放置して何かを考え始めた。
「状況がわからない。何やってるんだ?」
やっと九海に追い付いた全が、首をかしげながら正座した丞と子猫に近づいてくる。
「ちょっと兄貴、聞いてよ。丞ったら・・・」
九海が全に状況説明を始める。
丞はうつむいて正座したままだ。
小太りの丞にはきつい責めである。
状況説明の前にそろそろ勘弁してもらえないだろうか。
丞の足から感覚がなくなっていく。
「それ、丞はあんまり悪くないな」
九海から状況を聞いた全が丞達に立っていいぞと言ってくれる。
「「助かった」」
丞とミッケニは立ち上がろうとしたがしびれた足では無理だった。
バランスを崩して二人で絡み合うように転がる。
九海のスカートの下に。
☆
真っ赤な顔で九海が丞からそっぽを向く。
丞の右頬には黒い靴あとが、左頬には赤い紅葉がプリントされていた。
もちろん印刷したのは九海だ。
日が沈んだので辺りは薄暗い。
スカートの中は丞にはよく見えなかった。
そう。スパッツなんて見ていないのだ。
「スパッツじゃないか」
うん。言ったら確実に怒りスイッチを押す。
丞は反論をあきらめて正座を続ける。
「どうやって姫様を助けるのだ?」
丞と一緒にスカートの下に転がったのに、無傷なミッケニが全に聞いている。
「まず、正攻法で行ってみます」
全は丞の救助は諦めたが、姫様の救助は諦めないようだ。
こっちも助けてという丞の視線を無視して全が九海に近寄る。
「あれ頼む。真面目で」
全が前髪を上げておでこを九海に差し出す。
「まぢめってどんな字?」
九海が首をかしげる。
「平仮名でいい」
全が双子の妹の学力に合わせた。
キュキュキュ~と音をたてながら九海が全のおでこに、まぢめと太目のフェルトペンで書いていく。
「鏡あるか?」
全が九海の出した鏡でおでこの出来を確認する。
「なんで平仮名で間違うんだ」
丞の隣りにしゃがみこむ。
「え、間違えた?どこ?」
九海はまぢめに書いたようだ。
「効果は薄れるが仕方ない」
全が自分で鏡をみながら ぢ に×を書いてその上側に じ を書いた。
「ああこれか?」
全が丞の何してるのという視線に答える。
「TKGの装備だよ。フぃみョンを使ってない、正確にはフェムトマシンが体内に無い人には、書いた字が読めるんだけど認識できない」
全が丞に自分のおでこを見せたり手でかくしたりする
「だから第一印象が書いた字に影響される。今回は真面目な印象だな。こんな髪でも」
全が自分の金髪を一房摘まむ。
「さらに字を認識しようとするから顔や服装を覚えづらくなるんだ。今日の服装ならまず間違いなく、相手は俺の事を覚えていられない」
今日の全の格好はどこでも売っているようなシャツにジーンズだ。
「じゃあ、行ってくる」
おでこにまじめと書いた全は、そのまま管理人さんの家のインターホンを押す。
「私、動物タレント事務所の・・・」
「はい。うちの猫タレントが逃げまして・・・」
「この建物に入ったという目撃者が・・・」
「はい。このスマホの画像の・・・」
「喋った?ああ、着ている服に仕掛け
が・・・」
「肖像権の問題で一応確認なのですが、写真を撮ったり・・・」
「はい。間違いないです。保護して頂いてありがとうございました」
「猫ちゃん、バイバイ~」
管理人の娘さんの声に送られて、姫様を肩に乗せた全が建物の角を曲がってきた。
「よし。上手くいった」
全がおでこをこすりながらガッツポーズをする。
「ミッケニ!」「姫様!」
子猫の感動の再会が始まりかける。
カッ!とスポットライトで照らされたように丞達の周りが明るくなった。
「え、何これ?」
丞が正座状態で浮かびあがる。
「ああ、迎えに来たんだな」「そうね」
全達は落ち着いている。
「お、怒られますわ!大変ですわ!」「姫様。まず誤解を、誤解をといて下さい!」
子猫達は大騒ぎだ。
☆
そのまま結構な高さを上昇して全員何かに収納された。
薄暗くてよくわからないが倉居家の秘密の部屋に似ている。
しかし規模が違う。何倍も広い。
装飾や絨毯など倉居家の秘密の部屋に無い物もたくさんある。
正座したままの丞が見上げると、透明な天井から綺麗な星座が見えた。




