72 クミ接近中
昨日からジャンルをVRゲームにしています。
PVとブックマークとポイントが増えるように願いをこめて。
本編はゲームしてませんが。w
では、72話目楽しんで頂けたら幸いです。
「ふぁい。何か用」
携帯電話のベルで起きた丞は寝ぼけながら電話にでた。
昼御飯を食べて横になった後、いつの間にか寝ていたようだ。
目を擦りながら丞が部屋の中を確認すると、姫様は相変わらずベッドで、ミッケニはテーブルの上で寝ている。
「留守電に急ぎで連絡くれって入れただろう?用事が無いなら切るぞ」
電話の向こうで全は忙しそうに言ってくる。
「姫様ならベッドで寝てる」
ボケ~っと丞がいい加減な返事をする。
「姫様が隣で寝てるってどういうこと!」
「ヒィィ!」
丞の口から悲鳴が漏れた。
九海の怒鳴り声で丞の目が完全に冷める。
ミッケニも飛び起きた。
キョロキョロと怒鳴り声の主を探している。
「うるさいですわ」
姫様は寝言を言っただけで寝続けている。
「こっちはフぃみョンから起きたあとずっと駆け落ちしたシャーム王女と従者を探してるのよ! 休日の予定を全部諦めて! それを、それを」
九海が黙る。
丞は嵐の前の静けさを感じる。
丞の見ていないテーブルの上でミッケニのしっぽがピン!と真っ直ぐになってブワッと太くなる。
なにか九海の怒りを静める方法は無いだろうか?
いや、知らないよとは絶対に言えない。言ったら九海がどうなるかわからない。
いや、本当はわかる。丞はダイナマイトの導火線が短くなっていく幻を見た。
このまま黙っていても結果は同じだろう。
怒りのあまり声が出なくなった九海をなだめる魔法の言葉。
丞は寝起きの頭でいきなり難しい問題を解くことになった。
「落ち着いて。ベッドで寝ている姫様がシャーム王女とは限らないんじゃないかな?」
宇宙人違い。可能性は低いがあり得る。
丞が限られた時間で考え付いたのはこれぐらいだった。
「服を着たシャム猫の子猫と、三毛猫の子猫に見える人なんだが違うのか?」
落ち着いた全の声が携帯から聞こえてくる。
助かった。九海の怒りスイッチを押した丞はホッとした。
「そうだよ。家の、ああ、寮じゃなくて社宅の方の物置にいたんだ」
丞は姫様達に出会ってから今までの事を説明した。
「丞に昨日TKGの説明しといて良かったよ」
「僕も聞いといて良かったって思ったよ」
ハッハッハと二人で笑う。
「で、聞きにくいんだけど九海は? 怒りは静まった?」
丞はつけっぱなしになっていたテレビの音量を下げながら、気になっている事を聞いてみた。
「丞、言いづらいんだが、もうここに九海はいない」
全が不吉な事を言ってくる。
「まさか・・・」
丞の脳裏に怒りながら走る九海の姿が浮かぶ。
「ああ、もうそっちに向かっている」
全が丞の想像通りと言ってくる。
「え?九海はここの場所知らないよね?」
丞は寮で幼馴染みにあった事はない。
「いや知ってるぞ。丞の親父さんの会社名で調べて、俺と一緒に建物の前まで行った」
幼馴染みがストーカーっぽい。
「なんでそんな事を」
「さあ、俺も付き合わされただけだから」
全が笑いを含んだ声で言外に九海に聞けばと言ってくる。
「まあ、いいや。それより九海がこっちに来るのを、止めてくれれば良かったのに」
丞はストーカーの追求を諦めた。
今の九海にそんな事は聞けない。
「あの状態の九海をか? 無理言うな。今日は朝からずっと機嫌悪かったんだぞ。それに一日付き合うのを想像をしてみろよ」
機嫌の悪い九海と一日一緒。
うん無理。丞は全に同情した。
「まあ、丞と一緒ならそんなに機嫌は悪くならないんだが」
全が不思議な事を言ってくる。
「ところで、俺と話す時間が伸びると、丞が一人で九海と相手する時間も伸びるんだがいいのか?」
なぜ九海の機嫌が悪くならないか聞こうとしていた丞に、全が重要な事を教えてくれる。
「良くない、良くない! 全然良くない! 早く九海に追いついて!」
「わかった、わかった。最後にこれだけ教えてやるよ。俺達がいた場所から丞の社員寮まで一時間はかかる。その頃には九海の頭も冷えるだろうさ」
全が笑うのをこらえるように言ってくる。
「本当にそう思ってる?」
「いや、全然」
「・・・」
「じゃあな。幸運をいのる」
丞は切れた電話を見ながら少し呆然としていた。
「災害と言うのはいつ起こるかわからない。日頃の備え、これが大事なのです」
テレビのコメンテーターが丞にやるべき事を教えてくれる。
「怒っている九海に対する備えか」
丞は過去に九海を怒らせた状況とそれによって被った被害を思い出す。
「小さい頃は良かった」
丞は謝ったらすぐ九海にゆるしてもらえた頃を懐かしむ。
ぺしぺしと丞の手をミッケニが叩いている。
「最近はどうもなあ」
中学の頃から九海の怒りスイッチの場所がよくわからない。
すぐ怒るようになったんだよなあ、これが。
さらに怒ったら理由がわからないから謝れないんだよなあ。
丞はどんどん自分の考えに沈んでいく。
べしべし。ミッケニの叩く力が強くなった。
今回も、僕悪くないよなあ。
姫様達を見つけた後すぐ全達の家に行ったし、電話もかけた。
でも、やっぱり九海に怒られるんだろうなあ。
丞は自分の考えに沈んで底に着いた。これ以上考えてももう新しい考えは浮かばない。
ミッケニがため息をついて爪をちょっとだけ出す。
プスリと丞の手に刺した。
「アイタ! ミッケニ何するの?」
丞はミッケニに引っ掻かれた手を押さえる。
「さっきからずっと聞きたい事があるのにボケ~っとしおって。自業自得だ」
フンとミッケニがそっぽを向く。
「ごめん。ちょっと現実逃避していた。聞きたい事って何?」
丞はミッケニに引っ掻かれた手を見る。キズがついていない。ちゃんと手加減してくれたようだ。




