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35/743

35 解説の鬼

 GW連続投稿最後です。

 

 では、35話目楽しんで頂けたら幸いです。

「コース決定、ランダムだって言ったよね?」

 安全運転でピットに戻ったあと、首をひねりながら丞はシープに質問した。

 あの後、さらに3回レースしたが、全部天空回廊だったのだ。

『間違いなくランダムなのですが』

 丞の質問に答えるシープも不思議そうだ。


「コースはどうでもいい!度胸がないのが問題!」

 月子さんが異世界会員に喝を入れる。


「けど、さすがにあのコースじゃスピード出せないよ」

「半透明だとコースが割れそうでコエーンだよ」

 白次、黒次が言い訳する。

 虎城君は無言で頷いてる。

「景色としては綺麗だけど、実際レースするには向いてないわね」

 委員長も同意見だ。


『まあ、ランダムなのは初級レースだけです。初級を突破すれば、コースを選べるようになります』

「初級レースを突破できる気がしない」

 丞が言うと月子さんを除く全員が、げんなりする。


『ゲームの種類はたくさんあります。御自分が楽しめるゲームを見つけるのがよろしいのでは?』

 シープがげんなりした異世界会員に解決法を提案する。


「ああ、そう言う話しだったね」

 白次が丞の説明を思い出す。


「でも、ポイント返さネーとな」

 黒次は案外律儀だ。


「いつ頃までに返さなければいけないのかしら?」

 委員長が頬に人指し指を当てて首をかしげる。


「正直に言うと返さなくてもいいって言ってくれてる」

 丞はジョンさんの言葉を正直に伝える。

 もし異世界会員がポイントを返さないといえば一人で返済するつもりだ。

 自分のうっかりなのだから責任はとる。


「いい人」

「でもあんま甘えるのもワリーな」

「月に一回集まって、返せるぶんだけ返しましょう」

「じゃ、各自フぃみョンを楽しみながら、自分に合ったゲームを見つけるって事で」

「そうね。別行動にしましょう」

 委員長の言葉に全員がうなずく。


 委員長は一人で、男子3人は連れだって、自分に合ったゲームを探しにいくようだ。

 月子さんはサーキットに戻っていく。


『この後、どうしますか?』

 一人残った丞にシープが聞いてくる。


「どうしようか?起きるまで後どのくらい?」

『一時間ぐらいです』

「そういえば、フぃみョンの中に時計は持ち込めないの?」

『持ち込めますが、一定の速度で進みません』

「どういうこと?」

『発夢の仕組みを利用しているので、時間の流れが速い、遅い感覚がそのまま影響します。ノンレム睡眠の時間もあります』

「ふーん。時計を見ても、あてにならないって事?」

『そうです』

「じゃあ、意味無いかな?」

『残り時間を気にしながら遊んでもつまらないですよ』

「そうだね。月子さんのレースを観戦しようかな。参加するのと見るのは違うよね」

 丞もサーキットに入っていく。


〈では初級第20レースを行います〉

 丞がサーキットの観覧席に座るとちょうどレースが始まる。


 コース全体が見えるように、外側の席にしたので、スタートラインに並ぶ車は小さく見える。

 乗っている人まではわからない。

 掲示板をみると3番のピンクの車体に月子さんの名前がある。


〈ステージは雪原回廊〉

 コース全体が白い雪原に変わっていく。コースの輪郭が光の線で浮き上がる。


「コースアウトしそうだね」

『雪原回廊はコースアウトペナルティが無く、コースに戻れます。雪原に出てしまうと滑るので戻るのが大変ですが』

「コースは滑らないの?」

『コースは色が違うだけで、いつもと同じです』


〈どんなレースを見せてくれるのか?ではスタート!〉

 月子さんの車を含む4台が飛び出す。


「ターボスタートだ。やっぱり全然違うね」

 レースはそのまま進んでいく。

 月子さんは3位だ。

「そこだ、抜け!」

 丞の言葉に応えるように最終カーブで月子さんが2台抜いてトップになった。

 しかし、カーブの最後で4位以下の車がターボを使い、ゴールまでの直線で月子さんを抜いていく。


「あー。ターボの回数って決まってたんだっけ?」

『周回数と同じですね』


「初級のコースはスタートから最初のカーブの距離より、最終カーブからゴールまでの距離が長い。わかっているやつは最初飛び出さないで、最後にターボを使うのさ」

 丞の横にいた人が解説してきた。

 肌が赤く、額から2本角が生えていて、黄色と黒の縞の服を着ている。

 凄く鬼っぽい。

 丞に話しかけているのか、一人言なのかわからない。返答に困る。


「俺の見立てじゃあのピンクと黄色の2台は見所がある。初級を突破するのもすぐだな」


「えーと」

 丞が鬼っぽい人に何か話しかけようとすると止められた。


「ほっといていいよ。一人言だから。その人はここの有名人なんだ。このサーキットができた頃からレースを見ていて、一人で解説してる。解説が的確だからファンも多い。僕もファンなんだ」

 丞の斜め後に座っている植物ぽい人が教えてくれる。

 口がない。手や頭の葉を擦り合わせると、言葉として聞こえてくる。


「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」

「うん。解説途中で話しかけると恥ずかしがってやめてしまうんだ。そっと聞いててね」

 

 その後月子さんは2回レースしたが初級突破はできなかった。


「初日に初級突破したのは俺が見はじめてから10人もいない。レースの回数を増やしても集中力が落ちる。今日は無理だな」

 鬼っぽい人が、残念そうに解説してる。


 レースも奥が深いと丞が感心していると起床時間になった。

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