29 異世界会会員のお試し=男子なら影分身ごっこ
今日で平成も終わりですね。
何か寂しい気分です。
では平成最後。
29話目、楽しんで頂けたら幸いです。
「ここが最後の作品ピョン。一緒に入ると感じ方が変わってしまうから、最初は一人で入るピョン。中には、ぶつかるものはないピョン。出たいと思えば出られるピョン」
うさ耳の女性は、壁に黒い紙を貼ったような部屋の入口の前でそう言うと、受付に戻って行った。
シープも非実体モードになる。
部屋の入口はひたすらに黒い。光が全く反射しないので平面に見える。
委員長がゆっくりと注意しながら入口をくぐると、部屋の中も真っ暗だ。
委員長が思わず振り向くとバランスを崩して倒れた。
体が水に沈み込んでいくような感覚がする。
委員長の輪郭が光の残像となって目の前の空間に残る。
残像を掴もうとしたがすり抜ける。
掴もうとした手の残像は色が違う。
体を動かすスピードによって光の残像の色が変わるようだ。
沈み込んでいく感覚が消えていくと残像も収まる。
委員長は前に歩き出す。
振り向くと自分の残像が一定間隔で並んでいる。
まっすぐ歩いていたようだが曲がっている。
今度は曲がらないように歩いて振り向くと縦に曲がっていた。
九十度近く曲がって本来なら壁の場所をそのまま歩いている。
意識して歩くと残像を頭の上にして天井を歩くような事も出来る。
空間は委員長の残像で一杯になった。
途中走ったり、そっと動いたりしたので色も多彩だ。
はっきり輪郭がわかる場所もあれば重なりあってわからない場所もある。
「まずまずの出来ね。最初からわかっていたらもう少し・・・。シープはどう思う?」
委員長は少し頬が赤くなって息があがっている。
『芸術はあまりわかりません。綺麗だと思います』
委員長が出たいと思うと受付の前にいた。
「最後の作品はどうだったピョン」
「自分で作品を作るんですね、面白かったです」
「一人で何回もくる人もいれば、仲間を連れてくる人もいるピョン。気に入ったらまた来てほしいピョン」
「ぜひまた来ます」
委員長の息がまだ収まらない。
「疲れたなら庭のベンチで休むといいピョン」
入り口前の庭の少し離れた場所にベンチが見える。
「ありがとうございます」
受付の女性にお礼を言って委員長はベンチにすわる。
夏草のような心が落ち着くにおいがする。
短い草の間に、見たことのない花が塊でポツポツと咲いている。
「シープ、聞きたいことがあるのだけれど」
『はい』
「私、アート作品を作る人になりたいの。デジタルアート?コンピュータで表示するような」
『はい』
「でも、フぃみョンで見たものを作れば贋作と一緒よね?」
『元々発夢を利用しているので、しっかり覚えておきたいと思わないと、起きたあとはっきり思い出せません。フぃみョンにくれば思いだしますが。心配なら、記憶にブロックを設定できます。起きたあと美しい物を見た、感動したという感想のみ思い出すモードです』
『あとフぃみョンを使用している人は、同じような作品を作る事をあまり気にしません。作れる形がほとんど出尽くしていたり、どこかに自然に存在していたりして、似ていないものを作るのがほぼ不可能なのです』
「そうなの」
委員長は考え込む。
「起きている時に作って、フぃみョンにきたら、見た事があったらガッカリよね」
『記憶のブロックは完璧なので、起きたあとに思いついた物で間違いありません。貴女のオリジナルです』
「そうなのね」
委員長はそのまま考え込む。
『そろそろ、戻りましよう。約束の時間が近づいています』
「わかったわ」
委員長は受付の女性にあいさつして、待ち合わせの場所に向かって歩き出した。
明日は令和最初の投稿を予約してみようと思います。
うまく出来るといいのですが。
上手くいけば9時に投稿されます。




