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振られた俺、異世界で嫁探し始めます  作者: 小鳥遊
1章 幼少期編①
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第9話 魔力測定

 通されたのは、簡素な机と椅子が置かれただけの小さな部屋だった。

 壁際にはいくつかの棚が並び、見慣れない道具や書類が整然と収められている。


「ここでは魔力や魔法適性の検査のほか、冒険者登録なども行っています」


「へぇ……」


「確か……こっちの棚にあったはず」


 そう言いながら、リシェルが棚から透明な石と、小さな宝石があしらわれた羽ペンを取り出した。

 透明な石は両手で包めるほどの大きさで、見た目だけなら少し大きな水晶玉にも見える。羽ペンに埋め込まれた宝石も、それとよく似た透明な輝きを帯びていた。


「これで魔力を測るんですか?」


「ええ」


 リシェルは水晶を机の中央へ置き、隣に羊皮紙と羽ペンを置く。


「その水晶に手を触れてもらえれば、それだけで大丈夫ですよ」


「魔力を流すみたいなのは必要じゃないですか? 全然そういうの分かんなくて——」

 

「必要ありません。魔力があれば反応します。あとは勝手に情報が隣の羊皮紙に記されますので」


 リシェルさんにそう言い切られ、とうとう逃げ道がなくなった。

 ちらりと横を見る。アイリは見るからにわくわくしている。ユラは相変わらず無表情ではあるが、その視線は真っすぐこちらへ向けられていた。


「ほら、早く」


「分かったって」


 急かされながら、ユウマは恐る恐る水晶へ手を伸ばす。指先が、冷たい表面に触れた。


「…………」


「…………」


 何も起こらない。


「…………?」


 アイリが首を傾げた。ユウマとしては予想通りだ。しかし、リシェルは違った。


「……あら?」


 先ほどまで浮かべていた柔らかな笑みが、わずかに曇る。


「どうしたの?」


「少し待ってくださいね」


 リシェルは水晶を持ち上げると、今度は自分の手を触れさせた。宝石が淡い光を灯すと同時に、羽ペンがひとりでに動き出し、羊皮紙の上をさらさらと走る。


「おお……」


「問題はなさそうですね」


 水晶を再び机へ置くと、文字の記された羊皮紙を一枚取り上げ、ユウマを見る。


「もう一度、触れてもらえますか?」


 言われた通り、もう一度手を置く。やはり何も起こらない……かと思ったが、不意に羽ペンが羊皮紙の上を走り始める。


「……おかしいですね。記録は始まっているのに、水晶が反応していません」


 リシェルは腑に落ちない様子で首を傾げる。

 対してユウマは、その言葉の中にあった「記録は始まっている」という部分にひとまず胸をなでおろした。

 ユミルは魔力がないと言っていたが、こうして測定できているのなら、勘違いだったのかもしれない。


「終わった?」


「ええ。少し待ってくださいね」


 リシェルが羊皮紙を手に取ると、待ちきれないとばかりに、アイリはその手元を覗き込もうと身を乗り出し、隣のユラまで珍しく首を伸ばしている。

 しかし、二人の位置からでは羊皮紙の内容までは見えないらしい。

 ユウマも横から覗き込もうとしたが、二人が前を占領していてうまく見えなかった。

 

「どう? どう?」


「アイリちゃん、少し近いです」


 そう言ったリシェルが苦笑しながら羊皮紙へ目を落とす。

 そして、その表情が止まった。


「…………え?」


 小さく漏れた声を聞き、ユウマの胸に嫌な予感が戻ってくる。


「どうしたの?」


「いえ……十歳前後なら、まだ魔力量が大きく伸びる時期の前ですから、かなり低い評価が出ること自体は珍しくないんですが……」

 

「リシェルさん。私たちにも見せて」

 

 リシェルの歯切れの悪い言葉に、アイリも気になったのか、そう言ってリシェルの服を掴む。

 するとリシェルは、今度はアイリとユラにも見えるよう、羊皮紙を低い位置まで下げた。さすがに気になったユウマも、アイリとユラの後ろから羊皮紙を覗き込む。


 最上部には【ユウマ】という名前が記されている。

 その下には、左側に【魔力量】、【属性適性】、【系統適性】、【固有魔法】の項目が縦に並び、右側にはそれぞれの測定結果が記されている。

 

「空白……?」

 

 ユウマの魔力量の欄には【 】だけが記され、中には何の文字も記されていなかった。

 【属性適性】と【系統適性】の欄も同じだった。ただ一つ、【固有魔法】の欄だけには文字が記されていた。


 【 無 】


 ただ、それだけだった。


 リシェル、アイリ、ユラの三人がゆっくりと顔を上げ、その視線が一斉にユウマへ注がれる。

 

「ええーと……?」


 ユウマは何度か目を瞬かせ、所在なさげに頬を掻いた。

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