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GHOST Tracking  作者: Anzsake
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5/19

感覚


「トゥエルブさん」


レイが入ってくる。水を飲み干して、タオルで汗を拭う。時計は約束の時間になっている。


「OK。今行くよ」


「俺も筋トレとかした方がいいですか?」


「やるに越した事は無いんじゃない?」


手をグーとパーを交互に行う。太くなりたいけれど、ただ肥えるだけも嫌だし、でも食べないから太くはならない。身体の動かし方だけが洗練されていくような気がする。


昼に受け取ったデータメモリを手に取る。


「行こっか」


「はい」


宿舎を出る。轟音を鳴らしながら、空を黒い物が通り過ぎる。GHOSTだ。


「あれはなんの任務ですかね」


「山の方のオートノミアの捜索だって言ってた」


「俺の正式配属、早く決まらないかなぁ」


レイからワクワクという擬音が漏れる。アルトさんの顔がチラつく。何も無いのにこんな大層な物は貰えない。

近々何かある。そうじゃなきゃテストの意味もない。


「まぁ、すぐだと思うよ。多分」


「トゥエルブさんと同じ配属ですかね?」


「さぁ」


Cz区画では半年に1度位で、全部隊の再編成が行われる。人が死ぬから、数を鳴らすのだ。

316番のレイが最後尾。残存するGHOSTは58体。


本部のGRAVEの部屋に入る。操縦席をそのまま移植したような筐体が並んでいる。そのうちの1つにレイが座る。スマホを取りだしてコードを繋げると、正面の画面が反応する。


GRAVEはGHOST用の訓練シミュレーションだ。1年前から導入された。それより前は全員がぶっつけ本番だったせいか、GRAVEの導入から死亡率は少し下がった。


「今日はトゥエルブさんはやらないんですか?」


「……いや、やる」


「お、やった。トゥエルブさん居るとスコア上がるんで楽しいんですよね」


自律兵器であるオートノミアを倒す為の訓練なので、対戦等はない。味方との連携を確認する為の協力モードがある。

スコアが高いから何か優遇される事は無い。


「ところで、なんでGHOSTの操縦桿って、こんなにも使わないボタンがあるんですか?」


固定式のレバー2本に、スティックが2つ。ボタンは片方が8つで全部で16つある。そのうち使っているのは半分だ。


「そのうち使うんじゃない?」


この2年間、使ったこと無いけど。


隣の筐体に入り、自分のスマホをセットする。外付けのメモリーを筐体にセットして、中身のデータを読み込ませる。

表示された新しい武装が、自動でGHOSTに装備された。と文字だけで示される。


ストローでドリンクをチビりと飲み、ゴーグルを頭に付ける。映し出される綺麗な廃墟の街の景色は、綺麗すぎて逆にリアリティが無い。


HUDの隅に316のナンバーが出る。


「よろしくお願いしまーす」


「よろしく」


STARTの文字が画面に映る。ブーストを吹かして進む。実際に揺れないのが、どうしようもなく違和感だ。

武装している武器がよく見えないが、右手で持って左手で支えているらしい。胸のコックピットを部分を守るように構えている。


ビルの影からわらわらと出てくる、真っ白なオートノミア。空を飛んでるやつの銃口がこちらに向く。後ろからの弾丸が、僕のGHOSTのギリギリを通り過ぎ、目の前のオートノミアを撃ち抜いて行く。


残った一機に距離を詰める。恐らく間合いに入った。格闘を仕掛けるボタンを入力する。


視界が一気に加速して、GHOSTは右手の剣をオートノミアに向けて突進する。破壊エフェクトと共にスコアが増える。


GHOSTはそれを気にせず突き進む。少しして動きが止まった。


なんだこれ。いや、なんとなくは分かる。間合いを詰める為の突進だ。一時的に100km/hは出た。GHOSTはこんな動きが出来るのか。


でも、これなら銃剣である必要は無いし、射撃はどのボタンだろう。横に次のオートノミアを見つける。本来の射撃の入力をするが反応しない。


一瞬の隙を潰すように、また射撃が入る。レイのスコアが増えていく。不味い。早く操作を見つけないと。


HUDには残弾数もある。照準は確かに画面に出ている。撃てる準備は出来てるはずだ。乱雑に、使っていないボタンを適当に押してみる。


GHOSTが銃剣を前に向けて、弾丸を発射した。散弾がオートノミアに命中して破壊エフェクトが出る。


もしかして突進のような姿勢は、そのまま銃を撃つためか。ただそれだけじゃない気がする。次のオートノミアが湧いてくる。


まだ距離がある。格闘を入力する。一瞬でオートノミアの近くまでかっ飛んだ。スティックを横に倒しながら、もう一度格闘を入力する。


ブーストの勢いをそのままに、銃剣を左に構える。大きく右に振りかぶって、オートノミアを薙ぎ倒す。

そのまま数歩前に出ながら、GHOSTが体勢を立て直す。射線から逃げるように移動する。


1操作しか無い斧に慣れきっていたから、まだ上手く扱えてる気はしない。それでもこの武装の動きは、明らかにこれまでのGHOSTの動きじゃない。視界は揺れるし、身体の使い方も大胆だ。久しぶりに酔いそうになる。


それでもこの武装の面白さが、GHOSTの可能性が、確かに感じられた。レイと大きく離されていたスコアが、少しずつ縮まっていく。


ニュートラル格闘で突進。突進中にスティックを倒しながら再度格闘を入力することで、5種類のモーションに派生する。

楽しい。どうして今まで無かったんだろう。これを作った人はどんな人なんだろう。


頭が痛くなるのに、思考は冴え始めていた。

■GRAVE


GRAVEシミュレーションには、取り込んだ武装データをそのままの形で反映させる機能がある。

これにより、現在正式に配備されていない武装でも、事前にGRAVE内で使用する事が可能になっている。

GRAVE導入以前には、突発的な武装の使用によるトラブルでの戦死者も多かった。

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