十二 攻戦
木々の生い茂る陸路をで進んでいく。同行しているのは、144番のリオ。270番のイリア。316番のレイ。
[隊長。あんたの姿が見えた]
156番。イーレからの通信が入る。木々の隙間から覗く空には、GHOSTのブーストの光が見える。その光に向かって、地上からの機銃が乱射される。
暗闇の中、弾丸の軌道は見えない。光は左右乱雑に動く。地上からの遊撃部隊である僕らに当たるから、空の本隊の射撃は禁止されている。今、ひとつ落ちた。
「012番。交戦範囲に入る」
遠くから射撃音。イーレの狙撃だ。機銃掃射のバレットファイアに近づいていく。灯りに群がる虫みたいに。
視界に捉えた光の中の白い躯体。それに向かって突っ込む。銃剣を突き立てる体勢でブーストを吹かす。4脚の砲台がこちらを向くより早く、振り下ろした鉄の塊が白を潰す。
一瞬、付近の機銃掃射が止んだ。
[探してるんですかね?]
レイのGHOSTが横に来る。
[どうかな。早くやってしまおう]
リオが冷静に言い、次のオートノミアを探しに進む。
「本隊の通過までの2分で全滅させる。通り過ぎたあとはフレアを炊いていいよ」
[は〜い]
再び上空への掃射が始まった。別の射撃音。オートノミアのひとつが爆発する。小さく燃えた木々の燈が、闇をより深く見せる。
全高15mを超える針葉樹林地帯は、防衛用の4脚の対空砲台が各地に配備されている。
その地帯を上から抜ける本隊とは別に、実験を兼ねた攻撃部隊が僕らだ。
既にオートノミアが作った、木々の隙間の道のりを進んでいく。次の目標を捉える。向こうが先に、僕を照準に捉えた。
足を付いて溜める。飛び上がって顔を出した僕を狙った4脚が撃ち抜かれる。
後ろを付いてきたレイだ。地上に降りる時、頭上スレスレを、別の砲撃が通過する。次の目標を探す手間が省けた。
[こんなにバレないものなんですね]
レイの元気な声に、適当に相槌をする。今回僕ら攻撃部隊に先行配備されたステルス機構。オートノミアのレーダーに映らなくなるらしい。
更にこの暗闇。派手な動きをしないレイの機体は、奴らの目には映らないようだ。
上から光。またひとつ落ちる。僕らが早く潰せるかどうかが、上の生死に関わる。また落ちる。変だ。
また木々の隙間の何処かで爆発。イーレの狙撃だ。
[トゥエルブ。不潔だ]
「確定?」
[上の連中が騒いでる。かもしれない操縦で良いだろう]
次の4脚を潰しながら空を見上げる。本隊と反対方向に駆け抜けた桃色の閃光。オートノミアなのは間違いない。
「アルトさんは?」
上空の本隊の中に、アルトさんは居るはずだ。
[さぁな。お前に任せてるんだろ]
「……レイは僕と不潔の対応に行く。他のみんなは通常通りにやってて」
[了解]
レイの方を見る、ぼんやりとした輪郭の中、3つの赤いセンサーの顔がこちらを真っ直ぐ見ている。
[本隊。抜けるぞ]
2分が経った。機銃掃射は、最初の頃より明らかに減っている。ざっくりとした計算だが、落ちた味方は全体の2割。
この前のリベンジだ。大きく上に飛ぶ。機銃が足の下を通り過ぎる。僕が狙われれば相手の位置が分かる。仲間がそれを落とす。
不潔がこちらを見た。謎の電子音を鳴らしながら、こちらに突っ込んできた。
直前で左に回避。機銃を想定して再度右に吹かす。左を弾丸が抜けていく。旋回して正面を捉える。落下しながら不潔を睨み付ける。
[全ての目標の破壊を確認した。あとはそいつだけだ。トゥエルブ]
[どうするんだ?隊長]
「合流命令が来るまでやる」
[あいよ]
地面に降りる。木々の上を不潔が高速で通り抜ける。誰も撃たない。こいつに有効打を与えられる為には、6体の掃射攻撃じゃダメだ。明確な隙と、そこへ至る道筋がいる。
「レイ。一緒に飛んで。GRAVEの時みたいにやっていいから」
[は、はい!]
1歩遅れてレイが飛ぶ。不潔がレイを狙うが、レイの迎撃を躱して距離を取った後、僕の方に突っ込んでくる。背中を向けるように旋回した後、横に小さくブースト。ギリギリで回避した後、銃剣を構えて前に突っ込む。
前に突っ込む攻撃用のモーションが、今のこいつの動きの中で1番加速出来る。不潔の背後、間合いに入る。不潔は上に軸をズラして来た。すぐに動きをキャンセルし、再度軸を合わせる。
機銃がこちらを向いた。スティックを操作して、再度格闘を入力する。目標に向かって弧を描く用に突っ込むGHOSTの軌道は、機銃の発砲を躱す。攻撃を叩き込む直前、僕の背後ギリギリから射撃が入る。レイだ。
レイの不潔の上を狙った一撃は、不潔が下に回避させる。そこを狙った一撃が、遥か遠方から飛んできた。イーレの狙撃だ。
直撃して大きくバランスを崩した不潔が、体勢を建て直そうと離れようとする。それでもレイの射撃をヒラリと躱した。
[合流命令、入った]
再度不潔に突っ込む。機銃が動いた。間合いまであと数歩分。銃剣を前に構えて射撃する。散弾が不潔の尻に命中し、煙を吹きながら不潔が落ちていく。




