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GHOST Tracking  作者: Anzsake
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12/19

十二 説明


本部内の会議室。150人程が座れる広い部屋の椅子は、半分以上が空席だ。全員が疎らに座るので、何処が仲が良いかすぐに分かる。


中間より少し前側、左中央部分に、リオとイリアと3人で座る。後から他の人と入ってきたレイが、僕の方に手を振って、違う席に座った。


アルトさんはいつも、最後列の真ん中に座る。横には人が居たり居なかったり。今日は居ない。


「これより、大規模作戦の説明会を始める」


スピーカー越しに大きな声がして、全員が黙る。ハンドラー・ヌルが前に立ち、拡声器を持って会議室を見回す。


「……大規模作戦って何?」


そういう囁きが各方面で聞こえる。大きなモニターに、周辺のマップが映し出された。


「今回我々は、Cz北東部に位置するオートノミアの兵站工場、及び基地の破壊を行う事が決定した」


ハンドラーの言葉に全員がザワつく。リオもイリアも。


「ずっと防衛だったじゃねぇか。破壊しない方が戦争経済が回せるって話だったろ?」


「なんでだろうね〜」


「静かにしろ」


ハンドラーが拡声器を上げる。それに皆黙る。


「GHOSTによる防衛作戦は、この2年間で甚大な被害を起こさず、横這いの戦果を上げてきた。だが最近のオートノミアの性能向上。市民による懐疑的な声等から、技術的な進歩の為の実験作戦の先駆けとして、ここCzが選出された」


また小さくざわめきが起きるが、すぐにみんな黙る。専属のプログラマーというのはこれの為だったのか。


Cz区画は僻地だ。他の都市部に近い場所よりも、実験作戦は行いやすいという事か。


「通常業務としての防衛隊を1/3程残し、北東へ進軍する。先行調査の結果、オートノミアの兵站基地までに2つの中間拠点が存在している。実験作戦の為迂回はせず、順番に交戦をしかけていく」


1人が立ち上がった。何番の誰だっただろうか。


「それじゃあ本当に、戦争じゃないですか!?」


「部隊の選考はこちらで行うが、012番の所属する部隊は、既に本作戦への参加が決定している」


突然名指しで呼ばれる。ギロリと視線が集まったのを肌で感じた。


「今後も他の先行実験配備に合わせ、参加部隊は選出される。作戦開始は5日後。参加部隊には後日追加でブリーフィングを行う。以上、説明会を終了する」


ハンドラーが席を外すと、途端に周りで声が爆発のように膨れ上がる。


「こんな話、メールで流せばいいのにね〜」


「まぁ、体裁を保つというか、そんな感じだろ」


リオもイリアも平然としている。僕が2人を見ていると目線が合う。なにか言おうと口を開けた時、近づいてきた1人が机を叩く。


「どういう事だよ」


156番。イーレだ。


「一昨日、僕に専属のメカモーションプログラマーが着くと上には言われてた。この作戦を聞いたのは、僕も今が初めてで」


イーレは眉を顰めながら僕の顔を睨む。


「……てっきり懲罰にでもなったのかと思ったが。違うのか」


「うん」


イーレが頭を抱える仕草をする。視線の先は289のヨシア。イーレのお気に入りの後輩だ。


周りを見渡すと、ヒソヒソとこちらを見ながら話している人達と目が合う。その度に視線を外される。


トゥエルブに巻き込まれて可哀想。きっとそう言われている。僕じゃなくて、僕の隊のみんなが。


「別に参加が確定したからって、俺らはお前を恨むことなんかしないよ」


リオが謎のフォローを入れてくれる。


「え、ありがとう」


「俺らにもなんか新装備とか、何かあるんだろうな?」


頭を掻きながらイーレが言う。


「それは、分からない」


「そりゃそうか」


重そうに頭を上げながら、イーレは遠くでこちらを見ているヨシアの所に向かった。


「……でも、ハンドラーが他の先行実験配備をするって言ってたし、みんなにも何かあるのかも?」


イーレが立ち去った後、リオ達に言う。


「でもまぁ、俺は別に今の装備に不満は無いしなぁ」


会議室からどんどんと人が出ていく。僕らも出ようと立ち上がった時、レイが一人で来た。


「トゥエルブさん!あれですね!?」


「多分そう」


「かっこいいなぁ。先行実験部隊。いい響きですね」


「そう?レイの部隊は決まったの?」


「まだです。明日話し合いがあって、そこで決まります」


多分、大規模作戦に合わせてくる。横のリオが首を突っ込む。


「うちらの部隊に来たら災難かもな」


どんな顔をして聞けばいいんだ。


「確かに、トゥエルブさんと同じ装備は大変そうですね。急に操作が変わったら、上手く使えないかも」


レイの言葉にドキリとする。レイはよく、妙に痛い所を刺してくる。

レイも実戦はまだだけど、それでもGRAVEで散々シミュレーションはしている。


「明日、トゥエルブさんと同じ部隊になれないか、聞いてみますね」


勧めていいんだろうか。拒否するのも違う気がする。


「そう。通るといいね」


「はい。では」


レイが深くお辞儀をして、そのまま会議室を出ていく。まだ数組が団欒と話しているが、僕らも会議室を出る。


「あの、新人。黒白無常に取り憑かれてる」


そう、誰かが言った言葉が聞こえてきた。リオがバッと振り返る。その腕を掴む。


「別にいいから」


生き残りの古い番号も、結局は尊敬の証にはならない。黎明期の頃みたいなヒリついた空気感は、今はもう無い。


これから来るんだろうか。大規模作戦で。嫌だな。


アルトさんはまだ座っている。真顔で僕をじっと見ていたかと思うと、いつものように笑った。

■GHOSTナンバー


各GHOSTには、個体を識別する為の番号が割り振られている。機体ロスト、又は操縦者の戦闘不能で欠番が出た際に番号の繰り上げは行わない。

Cz区画防衛基地では、現在316番まで配備されており、現存している番号は57体。

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