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第19話 コラボ配信 前編

 雫猫ダンジョン地下三階にて。


「庶民リスナーの皆様、こんにちは。ななこですわ」

「……ねこだよ」


 皇菜奈子と羽生音子が、ダンホに向けてそう挨拶する。


〈こんなこねこ!〉

〈こんなこねこー〉

〈こんなこねこ〜〉


(リスナーのこと庶民リスナーって呼んでんのやばすぎんな……あとこいつら本名で活動してんのか、ネットリテラシーねえな……)


 ジト目のわたしの隣で、遠川詩はそわそわとしている。表情を見る感じ、緊張と嬉しさが半々といった感じだ。


「さて、本日は事前にお知らせした通り、コラボ配信を行いますの」


〈なこねこがコラボ配信するの珍しくない?〉

〈誰なんだろ〉

〈なこねこ大手だし大手配信者なんじゃね?〉

〈それか同系統のカップル配信者とか……?〉

〈わくわく〉


「それでは、出てきてくださいまし――『らぶらぶ♡ サヤトワカップル♡』のお二人ですわ」


 皇菜奈子がわたしたちを手で示すと同時に、ダンホもわたしたちのことを映し出してくれる。


「あ、どうも……サヤです」

「ト、トトトトト、トワだ!」


 わたしたちが挨拶すると、どっとチャット欄が盛り上がった。


〈サヤトワキターーーーー!!!〉

〈なこねこ、サヤトワのこと敵視してたのにwww〉

〈敵視してるからこそ呼んだんじゃね?〉

〈宣戦布告ってことか……〉

〈サヤトワってめぐめぐだっけ?〉

〈サヤさんがめぐめぐ〉

〈いやそれ本人否定してるからな〉

〈なこねこもサヤトワも好きな俺、大歓喜〉

〈てえてえ渋滞配信と見た〉


(こっちのリスナーの殆どから認知されてないんじゃないかと思ってたけど、案外そうでもなさそうだな……)


 心の中で頷いたわたしの横で、皇菜奈子がにこやかに笑う。


「さて、今回のコラボ配信の内容ですが」


 そういえばコラボ配信の内容聞いてなかったな。

 ……あ、もしかしてわたし、ミスった?


「ずばり――『最強の百合カップルがどちらかを決定する』ですわ」


 皇菜奈子はそう告げながら、ふわあと欠伸している羽生音子の髪をさらりと撫でた。


〈え、最強決定すんのwww〉

〈百合カップル配信者他にもいるのにwww〉

〈でも面白そうではある〉

〈やっぱり敵視してた……〉

〈ななこ競争心に溢れてて草〉

〈ねこがどうでもよさそうなのがまたいい〉


「ふ……勿論、受けてたとうじゃないか」


 遠川詩がダンホに向けてパチンとウインクする。


〈トワさんかっこいい〉

〈さっきまでド緊張してたけどな〉

〈俺はサヤトワを推すぞ!〉

〈( ´・ω・)⊃(金メダルの絵文字) スッ〉

〈メダル授与はまだ早いだろwww〉


 わたしはチャット欄を眺めてから、皇菜奈子へ質問を口にした。


「……で、最強を決定って、具体的にはどうやってですか?」

「いい質問ですわね。それでは早速、ルールを説明いたしますわ。お互いの持ち時間は五分。その間に、この雫猫地下三階を舞台にして、『尊さに溢れた配信』を行いますの。そうして、庶民リスナーからの支持をより集めた方が勝利となりますわ」


 わたしは取り敢えず、頷きを返す。

 ……というかここのリスナー(通称庶民リスナー)って、元々こいつらのファンだよな? だとしたらそもそも、サヤトワ推しよりなこねこ推しが多いんじゃないのか? おいおい公平かこの勝負?


「――そして、勝負に勝ったカップルは、負けたカップルに何かしらの要求をすることができますわ」


 おいそういうことは先に言えぇッッッッッッッッッ!


「ふ、承知した。ボクとサヤの愛があれば、勝利なんて容易さ」


 てめえもてめえですぐ承知すんなッッッッッッッッッ!


 わたしは頭が痛くなりながら、すっと右手を挙げる。


「あのーすみません……何かしらの要求って、具体的にはどんなことを要求するつもりなんですか?」

「わたくしとねこに忠誠を誓っていただきますわ」


 抽象的なのが余計怖ぇよ……


〈忠誠を誓う……!?〉

〈ななこ、サヤトワのこと潰しに来てそうで草〉

〈やっぱこのお嬢様こええわ〉

〈ねこ、どうにかして!〉

〈ねこ、髪の毛いじってないで!〉

〈ねこ、枝毛見つけてびっくりしてる場合じゃないよ!〉


 わたしは溜め息をついて、適当な理由を付けて条件を緩和してもらおうかと考える。


 でも――よく考えてみると、勝てば、こいつらに何か要求できるのか……


 わたしがダンジョン配信をよく見ていた頃にはいなかった配信者だけれど、今は大手ということは、ダンジョンについての諸々に詳しいのかもしれない。もしかしたら、「蜜」に関する何らかの情報を持っているんじゃないか……? というか弓晴ユミカにも聞いとけばよかったな、ヤバさに圧倒されて脳から吹っ飛んでたわ……


 わたしは決意を固めて、皇菜奈子と目を合わせた。


「いいですよ。その勝負、受けてやります」

「え? 元々拒否権は貴女にないですわよ?」


 そんなことを易々と言ってのけるクソ令嬢を軽く睨んで、わたしは遠川詩に腕を回すと、そっと唇に手を触れた。



「せいぜい、見てなさいよ。わたしとトワの――百合をね」

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