第20話 コラボ配信 中編
『尊さに溢れた配信』を行う順番は、皇菜奈子たちからということになった。ちなみに、最初はきらっきらの金色のクジを持ち出してきて順番決めを提案されたのだが、怪しすぎるのでダンホにある抽選機能を使わせていただいた。皇菜奈子は舌打ちしていたので、恐らく後攻希望だったのだろう。まあ確かに、後攻の方が印象に残りやすそうだもんな……
皇菜奈子と羽生音子に連れられて、わたしたちは雫猫三階層の水辺にやってくる。ちなみに、道中の魔物は皇菜奈子が一掃してくれた。カップルダンジョン配信者と言えど、戦闘力はしっかりと持ち合わせているようだ。
「さて、庶民リスナーの皆様。お待たせいたしましたわ」
「……おまたせ」
〈ここが尊さ配信の舞台?〉
〈雫猫って水辺とかあるんだ〉
〈雫猫地下三階は結構景色がバラエティ豊かでおもろいぞ〉
〈行ってみてえ〜〉
〈魔法適性ゼロ判定食らい済みの俺、悔し涙〉
〈ゼロだとそもそもダンジョン・リング貰えないもんな……どんまい〉
「それでは早速、ダンホのストップウォッチ機能を使用して、五分間を計らせていただきますわ。では――スタートでしてよ」
皇菜奈子の言葉と共に、画面に「5:00」という数字が表示される。
その瞬間――皇菜奈子と羽生音子が、バッと衣服を脱ぎ捨てた!
「え、は、はぁっ!?」
わたしは思わず驚きの声を漏らす。
皇菜奈子の真っ赤なイブニングドレスと、羽生音子のパーカーワンピースの中に隠されていたのは――水着だった。
皇菜奈子が着ているのは、派手な赤色とは打って変わって、大人っぽい純白のパレオ付きビキニ。豊満な胸が強調されるデザインだ。
羽生音子が着ているのは、ねずみ柄のワンピースタイプの水着。恐らく「ねこ」という名前を意識したのだろう、小柄な彼女に似合っていて可愛らしい。
(こ、こいつら……いきなり水着になるなんて、マジで勝ちに来てるな!?)
わたしの考えに合致するかのように、チャット欄が爆速で流れている。
〈ええええええええ!?〉
〈なこねこ水着!?〉
〈初では!?〉
〈ななこスタイルよすぎだろ〉
〈女の私、大嫉妬〉
〈ねこの水着ねずみ柄で草〉
〈確かに前好きな動物ねずみって言ってたな〉
〈ねずみ柄の水着とか売ってるんだ……〉
「そ、そんな……ダンジョン内で水着になるなんて、危なくないのか……!?」
わたしの隣で遠川詩が顔を両手で覆っている。が、手の隙間からバッチリ見てんなこいつ。流石のエロ王子。
皇菜奈子は右手を腰に当てて、ダンジョン・リングの嵌められた左手をすっと前に出す。
「取り敢えず、水中の魔物は邪魔ですので……〈優雅なる浮遊〉」
皇菜奈子の紡いだ魔法に合わせるように、水中にいた魔物が一気に浮かび上がる。その数――五十、いや六十くらいか……!?
皇菜奈子の隣にいる羽生音子も、欠伸しながらダンジョン・リングに手を添えた。
「ふわあああ……〈眠るような死〉」
浮かび上がった魔物が、すぐに光の粒となって消えていく。
(うわあ、死属性の魔法だ……MP消費激しいからわたしはあんま覚えてないんだよな……雑魚魔物にしか効かないし。多分、羽生音子の総MPはかなり多いんだろうな)
考察するわたしの隣で、遠川詩は「す、すごい……何だ今のは……!? ボクも覚えたい!」とぴょんぴょん飛び跳ねている。こいついつも楽しそうでいいな。
〈なこねこ流石のコンビプレー〉
〈ねこが使った魔法ってどんくらいMP使うんだっけ〉
〈一気に1,000とか持ってかれる〉
〈ヤバすぎて草〉
〈俺の総MP40なんだが……〉
〈さっきの魔法適性ゼロニキよりはましだろ〉
「さて、お待たせしましたわ。それでは、ねこ……おいで?」
「うん……」
皇菜奈子と羽生音子が、手を取り合って水の中に入っていく。
〈手繋ぎてえてえ〜〉
〈なこねこ仲良しで助かる〉
〈二人とも手すべすべしてそう〉
「きゃっ……ななこ、水、つめたい」
「あら、大丈夫? わたくしが温めてあげますわ」
そう言って、皇菜奈子は羽生音子を優しく抱きしめる。
〈ハグてえてえ〜〉
〈俺も誰かに抱きしめられたいから部屋の冷房付けてくる〉
〈この季節に冷房は草〉
「ねえ、ななこ……えーいっ。お水、かけちゃう」
「きゃあっ! やりましたわね……わたくしからも、えいっ」
やがて、皇菜奈子と羽生音子の水の掛け合いが始まる。
〈水の掛け合いてえてえ〜〉
〈というかこの季節に寒くないのか……?〉
〈温度調節魔法を使ってると見た〉
そうして、残り三十秒を切ったところで――皇菜奈子が、羽生音子を優しく見つめた。
「ねえ、ねこ……キスしても、いいかしら?」
「えっ……は、恥ずかしいよ」
「ちょっとだけだから。ね、どう?」
「…………こんなこと許すのは、ななこだけだからね」
頬を赤らめる羽生音子の唇に、皇菜奈子はそっとキスを落とす。
〈うおおおおおおおおお〉
〈キスてえてえ〜!!!!!〉
〈なこねこ最高!〉
〈お前らが最強の百合カップルだよ……〉
〈ごちそうさまでした〉
〈なこねこ!〉
〈なこねこ!〉
〈なこねこ!〉
〈なこねこ!〉
五分間終了のアラームを聞きながら、わたしは腕を組んだ。
(…………うん。これなら、勝てる)
わたしに向けて微笑む皇菜奈子に、わたしは好戦的な笑顔を返した。




