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人類誕生時代に来たので、人類の支配者になる  作者: 浅霧 瀬智
第二章

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58.天使治安部隊の動き

―― 空中都市 中央城 ――


~ ハンティ視点 ~


神の主様から命を受け、天使たちと共に地上で秩序を守る役目を担っている。空中都市から地上を見下ろすと、古代文明の末裔である人間たちが、騒乱や愚行にまみれて生きている姿が目に入る。時代は中世。飢えと争いが日常で、人の命は軽んじられている。私たち天使治安部隊の出番は、こうした狂った権力者たちが現れる時だ。


今日の対象は、オーブマの血を引く、愚かで享楽的な王族だ。表向きは国の象徴であり、貴族たちは忠誠を誓うが、実態は豪奢な宴と浪費、民衆への横暴で国を乱している。幼い頃から甘やかされ、何も考えずに権力を振りかざすだけの愚か者だ。


私たちは、まず情報収集から入る。天使たちが静かに民衆や官吏の心を読み取りと対象の体に中にあるナノマシンから送られた映像を見る。人生の悪行をすべて映像にして視聴する。対象の場合、土地の徴税を誇張して民を餓死させる一方で、自分の城では毎晩酒宴と女の遊興に耽っていた。兵士に命令して隣国の小さな村を略奪させ、食糧を自分の庭園で消費することもあった。


「ハンティ様、この王族は……民衆の不満は限界に達しています。早急に処置を」

「では、公の場で裁きを執行する。大衆の目の前で、神の重みを思い知らせろ」


処刑場は王族の城下に天使達によって設ける。広場には、好奇心と恐怖に混じった民衆が詰めかける。

対象の家族も駆けつけ、必死に止めようとする。


「お待ちください! ハンティ様、どうか……息子を見逃してください!」

「ここは、あなたの息子の横暴を正す場です。天使と女神の意志に抗うことはできません」


私は厳しい口調で告げる。大衆は息を飲む。王族の家族の顔には、恐怖と諦めの色が交錯する。対象は自分の立場を理解していない愚か者のままだった。


「なんだ、この大勢……何をするというのだ……?」


彼の目は、まだ宴の感覚でしか物事を理解できていない。処刑の理由を読み上げる。


「王子は、民衆を飢えさせ、領地を無駄に浪費し、隣国の村を略奪した罪により、ここに死刑を宣告する」


民衆からはざわめきが起こる。


「やっと正義が!」

「この愚王め、民を苦しめすぎた!」


対象の王子は顔を真っ赤にして怒鳴り返す。


「馬鹿な……俺は国のために贅沢をしていただけだ!」

「それはあなたの自己満足に過ぎない」


天使たちがその場を取り囲み、魔術ので逃走や抵抗の余地を完全に封じる。愚か者は大人しくなす術もない。


「準備はいいか?」


私は部下の天使たちに声をかける。全員が頷く処刑は大衆の目の前で行われる。天使の魔術で王族を拘束する。彼があまりに愚かなので、肉体を傷つけずとも魔術で十分に制御可能だ。王子は必死に逃れようとするが、天使たちの羽音と光の壁に阻まれ、もがくだけ。彼の家族は泣き叫びながら土下座をするが、私達は揺るがない。


「やめてください! 彼はまだ若いのに!」

「愚かさは年齢に比例しません。愚行は裁かれるべきです」


天使が大衆の前で、王子の罪状と処刑が明確に示される。


「徴税を誇張し、民を餓死させた。隣国の村を略奪した。宴と享楽に耽り、国を乱した」


民衆は怒声を上げ、歓声にも似た拍手が湧き起こる。王子は必死に抵抗を試みるが、魔術は完璧で、身動きは取れない。彼の顔には恐怖が走り、これまでの横暴を悔いる瞬間が刻まれる。


私は歩みを進め、剣を王子の前に置いた。目を閉じ、心を整える。神の意志を背負う者として、迷いは許されない。冷たい刃の感触が、私の決意を映す。


挿絵(By みてみん)


「王子、これがあなたの最後の時だ」


空気が張り詰め、民衆の息遣いが聞こえる。天使たちは周囲を囲み、光を絶やさず王子を拘束している。私は王子の首元に視線を定め、剣を振り上げる。


刃が空気を切る音、王子の恐怖に満ちた声。すべてが一瞬にして終わる。剣が振り下ろされ、王子の首は静かに落ちた。天使たちは光を消し、拘束魔術も解かれる。部屋には静寂が戻り、民衆の前には裁かれた王子の姿だけが残った。


「……これで、この街はまた少しだけ平和になる」


私は深く息を吐く。民衆の群れに目を走らせる。子供たちの泣き声と、泣きながら喜ぶ母親の顔。愚か者は消え、秩序は守られた。だが、仕事は終わらない。


中央城の白銀の回廊に、私は疲れを隠せぬまま足を踏み入れた。剣を手に、天使治安部隊とともに王子を裁いた任務を終えたばかりの私にとって、この静寂は不思議な安堵をもたらす。


「ハンティ、戻ったのね」


振り向くと、柔らかな光を纏った女神、セリアが微笑んで立っていた。彼女の視線にはいつも、好奇心と少しの皮肉が混じる。


「……はい、戻りました」


私が返事をすると、セリアは眉を上げ、口元に微笑を浮かべる。


「で、今回も直接出向いて処刑したのかしら?」


その質問に、私は一瞬言葉を詰まらせる。天使治安部隊を指揮し、王子を裁いたのは事実だ。しかし、今回が初めての任務であり、単なる処刑ではなく、部隊の動きや魔術の運用を確認する意味もあったのだ。


「今回が初めての任務で、天使治安部隊の動きも確認する意味がありました。次回からは、空中都市から指示を出すだけで十分です」

「あら、そうなの。次回から個人情報をナノマシンから引き出す時は、記録と情報担当の私に報告してね」

「はい。わかりました。」


私は軽く笑う。戦いでも、秩序でも、私の使命は常に変わらない。神の力と私たち女神、そして天使たちの力で、愚か者を裁き、民を守る。中世の地上は過酷だが、私たちの存在はその残酷な世界に光をもたらす。


「次の対象も、すでに確認済みです」


副官の天使が報告する。冷たい目を地上に向ける。

秩序のため、神の意志のため――愚か者を裁く仕事は、今日も、これからも続くのだ。

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