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人類誕生時代に来たので、人類の支配者になる  作者: 浅霧 瀬智
第二章

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57.城のメイド (イラストなし)

―― 空中都市 中央城 ――


~ リフコ視点 ~


中央城の天井高く広がる大広間から見下ろす都市は、いつだって静かに輝いていた。私は、ツバイ様の直属の部下であり、女神の一人として、ここから城とその周辺を監視している。私の任務は多岐にわたるが、今日は特に「中央城のメイド制度」について考えていた。


城に仕えるメイドたちは、人間でありながら、中央城の魔術によって老いを知らない。何百年も変わらぬ若さと健康を保ち、城の最も高い場所で神様に仕える。最初はほんの数人だった彼女たちは、今では百人を超え、中央城での生活は、地上の女性たちにとって夢のような存在となっている。


私は高い窓から、訓練を受けるメイドたちを見下ろす。彼女たちは皆、神様の存在を直に感じながら働き、教育を受け、礼儀作法から魔術的な監視技術まで学んでいる。そして、地上では到底味わえない待遇と権威を持っているのだ。


数百年前、最初のメイドたちは、地上の家族に手紙を送ったという。その内容は、驚くほど率直だった。


――「私は歳を取らなくなった。永遠に若く、美しく、健康でいられる」

――「神様の傍で仕えることになり、妾となり、保護されている」

――「ここでの生活は、地上で想像する幸福をはるかに超えている」


ツバイ様の妾になるということは、単なる性的な意味ではなく、神の傍で生涯を過ごす。つまり、精神的にも社会的にも至高の地位を約束されることを意味していた。


その手紙は、地上の人々にとって衝撃だった。家族への誇らしい報告であり、同時に憧れの情報でもある。中央城のメイドになることは、単なる職業ではない。幸福を約束された人生。それが、ここにあるのだ。


地上を見渡せば、今日も世界は静かに、そして無慈悲に回っている。古代の文明しか持たぬ人類の世界は、豊穣と飢餓が隣り合わせだ。干ばつが続けば村は滅び、戦が起これば女子供から死んでいく。餓死、疫病、略奪などの死は日常であり、誰もが明日を保証されていない。


その手紙が流布した影響は、やがて世界中に及んだ。地上の諸国の王族や貴族たちは、中央城のメイドたちを「至高の存在」として認めるようになり、特に優秀な女性を神様に仕えさせるために、自国の最高の女性を貢物として送り込むようになったのだ。


教会の天使たちも、この流れを否定しなかった。むしろ、中央城で人間が幸福に生きる姿を見守り、神様の威光を讃えることは、教会の教義とも合致していた。神の側近としての私の目から見ても、この制度は地上の秩序と調和しつつ、城の影響力を高める絶妙な仕組みである。


そして今、世界のあらゆる国々で、若く有能な女性たちが中央城のメイドになるため奔走している。彼女たちは学問や戦闘技能、礼儀作法を身につけ、城の魔術に順応するための試験を受ける。家族もまた、この機会を喜び、特別な扱いを受けることを知っている。


私はその動向を高みから見守りながら、思わず微笑んでしまう。地上の価値観では、結婚や富や地位が最高の幸福とされる。しかし、ここではそれ以上の価値として神様に仕え、永遠の若さと名誉を得る事が存在する。


城のメイド制度は、単なる身分や職業のシンボルではない。地上に散らばる家族や国々に影響を与え、人々の意識を変えるほどの力を持っているのだ。メイドとして中央城に仕えることは、幸福と誇りを約束された人生であり、同時に神様の力の象徴である。


「リフコ様」


私の肩に触れたのは、ハンティだった。副女神として、軍事や警備に長ける彼女も、中央城の人間制度には興味を持っている。


「最近の新人メイドの動向、見ましたか? 国々の争奪戦のようになってきています」


私は頷く。そう、地上の女性たちは、この城の門をくぐるために学び、努力し、家族と共に夢を追うのだ。


「ええ。城の幸福は、もはや世界中に浸透しています。教会も否定していませんし、神様の威光はさらに強まっています」


ハンティは微笑む。確かに、この光景は私たち女神にとっても誇らしいものだ。


「それにしても、何百年経っても人間がここで変わらず働き続けている姿を見ると、感慨深いですね」

「そうね……私たちが何百年も、いや千年近くを見守り、管理してきた結果が、この城と制度に現れているのだと思います」


私は窓の外に目をやる。城下町は静かだが、地上の各国で起こる争奪戦のような動きも、目には見えない形で確実に存在している。中央城のメイドになることは、単なる職業以上の意味を持つのだ。


そして、私の胸の中に確かな誇りが湧き上がる。この空中都市と中央城のメイド制度。それは、神様の意思を地上に伝える象徴であり、永遠に続く幸福を約束する場所。私たち女神もまた、この奇跡を守り、支え、次代へと受け渡す役目を担っているのだ。


遠くで風が城壁に当たり、窓を揺らす。その音に合わせ、私は静かに微笑んだ。幸福を求める女性たちは、これからも中央城の門を叩き続けるだろう。そして私は、女神として、その秩序と栄誉を永遠に守り続ける。


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