85.手合わせ
「騒がしいですね……どうかしましたか?」
「ぎ、ギルマス!それが……」
野次馬たちがわいわいと騒いでいると、どこからかギルマスがやってきた。
受付の人がギルマスに事情を説明すると、ギルマスは少し考えた後、
「機械の故障の可能性はありませんか?」
と受付の人に尋ねる。
受付の人は煙を出して沈黙した機械を持ってきて、ギルマスに渡す。
「どれどれ……」
ギルマスは目を瞑り、何かを探るように手をかざす。
不思議なことに、ギルマスが来た途端に野次馬たちは急に静かになって、事の行方を見守っている。
きっとそれだけ慕われているってことだろう。
「……どうやら経年劣化による故障のようですね。10年程前のものですし、ついに限界が来たようです。新しいものを発注しておきますね」
ギルマスはそう言い、私たちの方に近づいてくる。
「仕方がないので、この子は私が訓練場である程度の強さを確認するので、ついてきてください。あ、もちろんナツさんともうひと方もです」
ギルマスはそういうと、訓練場の方へ歩き出す。
「え、あ、はい」
私たちは言われるがまま、ギルマスの後を追った。
「……さてと。全くあなたは何回トラブルに巻き込まれるつもりですか?」
訓練場に着くと、なぜかギルマスに問い詰められる私。
「いや、好きで巻き込まれてるわけじゃ……」
「そうかもしれませんけど、私があなたを見かけるときは大抵何かしら騒ぎが起こっている時なので」
そんなトラブルメーカーみたいに言われましても……
うーん……私の体質なのか……?
いやいやこういうのはこっちに来てからだし、そういう問題じゃない気は……
「まぁこういった話は追々するとして、テストを始めましょうか」
あ、そういや能力見てもらうためにここに来たんだったね。
「私たちは少し離れたところで見ていた方がいいですよね?」
「ええ、そうしていただけると」
「わかりました。アッシュ君、頑張ってね!」
アッシュ君がこくりと頷いたことを確認してから、私はドロテアちゃんを連れて少し離れたところで待機する。
何するのか知らないけど、邪魔になるのは御免だからね。
「よ、よろしくお願いします」
私たちが離れたのを確認して、アッシュ君はギルマスに声をかける。
「そこまでかしこまらなくても大丈夫ですよ。私は単にあなたの実力が知りたいだけですので」
そういうと、ギルマスは背中に括り付けていた杖を手に持ち、構える。
アッシュ君も、いつ攻撃が来てもいいように身構えている。
……え、なんで戦う雰囲気なの?
てっきり私の時みたいな感じだと思ったんだけど。
思いっきりツッコもうとしたけど、今更口を挟める雰囲気じゃない。
とりあえずドロテアちゃんに聞いてみる。
「ドロテアちゃん……このまま戦いが始まったりしないよね……?」
「え?手合わせして力を見極めるんじゃないんですか?」
当たり前のことに答えるように、キョトンとした表情でそう言うドロテアちゃん。
うん、当たり前じゃない……当たり前じゃないはず……
私がおかしいはずはない……よね?
「手合わせって言っても……こんなとこで全力でやりあっていいの?」
「大丈夫だと思いますよ。さっきの行動からして、ギルドマスター?は多分なんの打算もなしに動くような人じゃないと思うので、何かしらの対策を取っているはずです」
うーん……そう言われるとそんな気もしてきたな……
確かに、あのギルマスはかなり機転が利く人だし、何かしらの対策を講じてるはず……だよね?
講じてなかったとしても、今から止めには入れないし……
ここはおとなしく、2人の手合わせを見届けるしかないよね……
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