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ゲームクリエイター ~とある少女の冒険譚~  作者: メープル
王都躍動編
79/94

78.ナツ争奪戦 終幕

7月です。

夏です。

暑いです。

体調管理の大切さが身に染みる今日この頃です。


ここのところ投稿が不定期になってしまい申し訳ありません……

その分今回はいつもの約2.5倍!およそ4,000文字の大ボリュームです!

体調が優れない中でもちまちま書き進めればこんなに書けるものなんですね……我ながら驚きです。

内容も少し濃いめなので、どうぞゆっくりお楽しみください!

ドロテアちゃんの行動に違和感を憶えつつ、ずっと洗面所にいるわけにもいかないため、バクバクと鳴る心臓をどうにか抑えながら部屋に戻る。

ソファーに座って目をつぶり、何とか心臓を宥める。

さっきの奇怪な光景が脳裏をちらつくが、それを無視して気になっていることに意識を向ける。


さっきのドロテアちゃんの行動がどうも引っかかる。

なぜ急に髪の毛を梳かそうとしてきたんだろう?

鏡を見た限りそんなにぼさぼさってわけでもなかったし、むしろ櫛なんていらないくらいにはサラサラのはず。

なのになぜこのタイミングで梳かそうとしてきたんだろう?


それにアッシュ君が話しかけたとたんに逃げ出したし、よくわからない行動が多い。

いったい何が……


コンコンコン


突然、私の思考を邪魔するかのように部屋のドアがノックされる。

ドアを開けると、宿の従業員の人が立っていた。

どうやら昼食を持ってきてくれたらしい。

私はお礼を言って昼食を受け取った後、机の上にご飯を置く。


「2人ともー!お昼ご飯だよー!」


どこにいるのかわからなかったので、大きめの声で2人を呼ぶ。

すると、2人はベランダからひょっこり顔を出し、机の上の食事を見るや否や、目を輝かせながらこちらに走ってきた。

私は2人がベランダで何をしていたのかなど気にも留めず、2人に手を洗ってくるように指示を出す。

2人はよほどお腹が空いていたのか、我先にと洗面所に向かっていった。


少しして、2人が洗面所から戻ってきた。

ちゃんと手を洗ってきたらしく、2人の手から水が滴っているのが見えた。


……あれ?確か水道なかったはずなんだけど……何で洗ったのかな……?

……アッシュ君の魔法ということにしておこう……そうだそうに違いない。というかそれしかない。


とりあえず2人にタオルを渡し、私は席に着く。

全員が席に座ったところで、皆一斉にご飯を食べ始めた。

この世界に『いただきます』の文化はない。

村やグレイシアでついいつもの癖で『いただきます』と言ってしまった時、周りの人に怪訝な顔をされてしまったので、おそらく食べ物に感謝するという文化がないのだろう。

ちなみにかなり恥ずかしかった。


白米や卵はあるのに『いただきます』の文化がなかったり、どこか元の世界(日本)のようで元の世界(日本)と違う……


異世界なんだなぁ……ここって。


ん?なふたべなひの?(ん?ナツ食べないの?)


私がぼーっとしていると、必死にご飯をもぐもぐしているアッシュ君に心配される。

一方ドロテアちゃんは淡々と少しずつご飯を頬張っている。

あまりにも対照的な姿に、くすりと笑う。


「「……?」」


2人とも怪訝そうな顔をしているが、決してご飯を食べる手を止めようとしない。

その姿があまりにもかわいらしくてにやにやしながら眺めていると、「お腹空いた!」と主張するように私のお腹がぐう、と鳴る。

思ったより大きな音が鳴ってしまい、恥ずかしさを隠すようにご飯にがっつき、案の定気管にご飯が入り込んでしまい盛大にむせる。


「……………………」


ドロテアちゃんが無言でコップに入った水を差しだす。

私はそれを一気にグイっと飲み干し、「ふぅ……」と一息つく。

まるで熟練の技のように完璧なタイミングに少し驚きつつ、ドロテアちゃんにお礼を言う。

ドロテアちゃんはどこか誇らしげで、鼻高々といった様子だった。

それを見て軽く頬を膨らませるアッシュ君。


その瞬間、冷水で冷やされた脳が一つの展開を想像する。

右手を引っ張るアッシュ君。それに対抗するように左手を必死に引っ張るドロテアちゃん。

2人は綱引きのように私を引っ張る。


まるで()()()のように。


…………まぁさすがに考えすぎかな。

2人とも仲良さそうだし、私を取り合うことで何か起こるわけでもないしね。

でもどうしても気になってしまい、さりげなく探りを入れてみることにした。


「2人とも仲いいね~」

「「…………?」」


2人ともキョトンとした顔でこちらを見る。


「だってさ、会ってまだ1日も経ってないでしょ?それなのにこんなに仲良くなれてえらいな~って」


私は思っていたことありのままを2人に伝える。

2人が出会ったのは昨日の夜。今は昼だから、まだ3/4日ほどしか経ってない。

それなのにまるで幼馴染のように仲良く会話ができてるのは普通にすごいと思う。

高校生なんかすぐ人見知りして友達なんて同じ中学校の子くらいしか最初いないよ?

まだ幼いってこともあるだろうけどね。


2人はお互いに顔を見合わせると、少し照れくさそうに笑った。


「だからね?もしこれからお互いの意見が合わなかったりすることがあっても、ずっとそのまま仲良しでいてほしいなって思うんだ」


私としては、2人にずっと笑っていてほしい。

そのためには、2人が仲良しであることが最低条件だと思うの。

今後のことを考えて、今よりもっと仲良しになってくれたらうれしい。


「「仲良く……」」


2人はもう一度顔を見合わせると、こくりと頷いた。


「「………………」」


そして、2人とも黙ってしまった。



コンコンコン


「ナツ殿、少しお時間いいだろうか」


沈黙を切り裂くようにノック音が鳴り、アリシアさんの声が響く。


「あ、は~い今行きます!」


私は急いでドアの方に向かい、外に出る。



「突然すまない。が、至急伝えておかなければならない事案が発生した」

「事案……?何かあったんですか?」

「あぁ……ナツ殿は、何のために王都にやってきたか覚えているだろうか?」


王都にやってきた理由?

確か……


「勇者と合流するため、でしたっけ」

「そうだ、今回の事案はその勇者と関係がある」


勇者と関係する事案て……面倒ごとの予感しかしないんですけど……


「簡潔に言うと、勇者曰く『賢者など不要!』とのことだ」


…………は?

いやいやいやいや、なんでそうなったし。

会ってもいないのに不要!とはならんやろがい。


「…………ちなみに理由は?」

「『若すぎる』からだそうだ」

「えぇ…………」


これはあれですか、新手の追放系ですか。

若いからって無能とは限らないでしょうが!!

アッシュ君めちゃくちゃ強いよ!?1人で魔王軍の自称幹部と渡り合えるくらい強いよ!!?


「それで……これからどうなるんですか?」

「…………不要と言われてしまった以上、ここにいる理由はない。元居たところに帰るなり、旅に出るなり、好きにしてもらって構わない」


なるほどねぇ……

まぁこの辺りは2人と相談して決めた方がいいだろうな。

私の一存で決めちゃうなんてかわいそうなことできないし……


「………わかりました。2人と話し合って決めます。わざわざありがとうございます」

「いや、こちらの力不足で迷惑をかけてしまっているんだ。ナツ殿が謝る必要はない」


まぁたそれですか……

まぁいいんだけども……


――――――


ナツがアリシアと話しに外に出た後……


「…………仲良く、だってさ」


アッシュがそう呟く。


「…………そう……ですね」


ドロテアが少ししょんぼりしたようにそう返す。


「「…………」」


そして、また2人とも黙ってしまう。



「…………やっぱり、ナツってすごいね。優しくて、強くて、かっこいい」


先に沈黙を破ったのはアッシュの方だった。


「…………」

「……でもさ、そんなナツでも、辛いこと、苦しいこと、苦手なことがあると思うんだ」

「…………と、言いますと?」


ようやくドロテアが口を開く。

アッシュは今までの旅で見てきたナツのことを簡単にドロテアに話す。


1人でドラゴンと互角の戦いを繰り広げたこと。


その時の重症を乗り越えたこと。


そして、ここに来るまでの馬車でのこと。


「…………」


ドロテアはそれをずっと口を閉じたまま聞いていた。


「……やっぱりさ、ナツが異邦人だとしても、僕たちと同じ『人』であることに変わりはないと思うんだ。だから、怪我したり、悩んだり、辛いことを乗り越えたりできるんだと思う」


ドロテアは無言で頷く。


「だから……その………」

「その………なんですか?」


アッシュがそこで口ごもったのを見て、ドロテアはその先を催促する。


「えっと…………僕たちで、ナツのことを精一杯サポートしたいな………って思って……」


ドロテアはアッシュのその言葉を聞いて、くすりと笑みを浮かべる。


「えぇ?!なんで笑うの?!」

「いや……あなたらしいな、と思ったまでですよ」


そう言って、右手を伸ばすドロテア。


「…………?」

「ほら、これから協力関係ということなら、この争いに終止符を打たないとですよね?」


アッシュはハッとしたようにその手を握る。


「これからは2人で、ナツ様を支えていきましょう」

「…………うん!」


ちょうどそのタイミングで、ガチャッとドアが開き、ナツが中に入ってくる。

2人は慌てたように手を放し何事もなかったように装う。


「2人ともどうかしたの?なんか顔赤いけど……」

「「な、何でもない(ですよ)!!」」

「え、あ、うん……」


食い気味にそう返す2人に少し驚きながら、ナツは今話してきたことを2人に共有する。


「なるほど……」

「僕が不要?!まだ会ったこともないのにひどい!!」


ドロテアはいたって冷静だが、アッシュはかなり怒っている。

会ったこともないのに不要と言われたのだから無理もないだろう。


「それでさ、もうここにいる理由もなくなったみたいだから、もう好きに動いてもいいんだって。2人と相談しようと思ってたんだけど……これからどうする?」

「う~ん……僕としては僕のことを不要って言った勇者?をぎゃふんと言わせたいけど……」

「そうですね、私もその意見に賛成です」

「ぎゃふんとねぇ……う~ん……」


少しの沈黙の後、アッシュが口を開く。


「そういえばさ、ナツって冒険者なんだっけ?」

「え?……あぁうん、一応登録はしてるけど……」

「ならさ、皆で冒険者になって冒険しようよ!有名になったりしたら勇者が悔しがると思うんだ!」

「なるほど……確かに筋は通っていますね」

「それじゃ、一回グレイシアに戻って冒険者登録してから冒険する……って感じでどう?」

「賛成!」

「異論はありません」


方針は決まったようだ。


「とりあえず、明日グレイシアまで向かう馬車か何か探して、のんびり帰ろうか」

「そうですね、今から探しても見つからないでしょうし」


ドロテアは窓の外を指さす。

外からは西日が差し込んでいた。

今から出発するのはどう考えても悪手であることは誰の目にも明らかだった。


「それじゃ、今日のところはゆっくり休んで、明日に備えよっか!」


2人はこくりと頷いた。

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