76.ナツ争奪戦
結局あの後特におかしなこともなく、おなかが空いていたこともあって、私たちは王宮側が用意してくれた宿で一夜を過ごすことにした。
夕飯は3人で食べた。王宮側が用意してくれた宿というだけあって、どの食事もかなり美味しかった。
ドロテアちゃんとアッシュ君が目を輝かせながら必死にもぐもぐしていてまた脳の処理が追い付かなくなりそうだったけど、ギリギリ何とかなった。なんでこの子たちはこんなにかわいいのかな?
部屋にはベッドが2つしかなかったので、私が一人で寝ようとすると2人とも「一緒に寝たい」といって譲らなかったのでしょうがなく1つのベッドで3人で寝ることになった。
もちろん私が真ん中。ちょっと狭いような気もするけど、とてもあったかいので気にしないことにした。
何この子たち可愛すぎるんですけど。
私が2人の可愛さに悶々としている中、すやすやと寝息を立てる2人。
その寝息を聞いているうちにうとうとしてきて、そのまま私も眠りについた。
翌朝。
今日も朝からかわいいの連続。
まずアッシュ君。目が覚めると同時に寝ぼけまなこのまま私に抱きついてきた。
おそらく寝ぼけていたんだろう。少しすると目を見開いてそそくさと逃げてしまった。
顔を真っ赤にしていたのがちらっと見えて朝から心臓が止まるかと思った。
それを見て少し怒ったような表情を浮かべるドロテアちゃん。
疑問に思った次の瞬間、ドロテアちゃんもアッシュ君と同じように私に抱きつき、アッシュ君と同じように顔を赤らめながらそそくさと逃げていった。
…………嫉妬?嫉妬か?嫉妬なのか?!それとも2人で私の争奪戦でもしてるのか?!
いくら何でも可愛すぎやしませんかねぇお二方ぁ?!!
朝の支度が粗方終わったタイミングで、部屋にアリシアさんが訪ねてきた。
何でも、明日までここを動かないでほしいらしい。
まぁ昨日の一件があったばっかりだしね。慎重になるのも仕方ないかな。
そのことをアッシュ君とドロテアちゃんに伝えると、二人とも最初はしょんぼりしていたけど、何かに気付いたようで二つ返事で了承した。
いったい何をしようとしているのか…………
数分後。
私はベッドの上に寝ころんでいた。
もちろんアッシュ君とドロテアちゃんも一緒だ。
2人が腕枕をしてほしいと言って聞かなかったので、右腕をアッシュ君に、左腕をドロテアちゃんに貸している。
いや、かわいいよ?ものすっごくかわいいんだけど…………
重い。
すっごい重い。
アニメとかでよく見るシチュエーションだけどさぁ………2人は無理だって!腕折れちゃうって!!
誰か助けてぇぇぇぇぇえ!!!
とか思いつつも、なぜかうとうとしてきてそのまま寝ちゃいましたとさ。
ナツが寝てから数分後。
2人がそっと起き上がり、ナツを起こさないように気を付けながらそっと外に出る。
「……あのさ」
「えぇわかっています。ナツ様のことですよね?」
そしてそのまま会話を始めた。
「うん、ちょっと思うんだけどさ、少しナツにくっつきすぎじゃない?君」
「あら、そういうあなただって朝からナツ様に抱きついていたじゃないですか」
「あ、あれは寝ぼけてただけだし!別にわざとじゃないもん!それに君だってナツに抱きついてたじゃん!!」
「なっ!?そ、そんなことしてません!」
「嘘だ!だって見てたもん!僕が逃げた後ナツに抱きついてたじゃん!」
「だ、だったらなんなんですか!主人に抱きついちゃいけないなんてルールないじゃないですか!!」
2人は少しにらみ合い一触即発の空気が漂い始める。
「…………はぁ、このままでは埒が飽きませんね。なら勝負しましょう」
「勝負?何で戦うつもり?」
そういって目の前に小さめの氷を作り出すアッシュ。
「物理的に戦うわけないじゃないですか」
冷静にそう返すドロテア。
「単純に、どちらの方がナツ様と親しいかを勝負するだけですよ。これならあなたも文句ありませんよね?」
「…………いいよ。その代わり君が負けたらナツの傍は僕がもらうからね!」
「なっ!?………わかりました。ならあなたが負けた場合、ナツ様の傍は私がいただくということでよろしいですね?」
「………よし、それでいこう。あと、このことはナツには内緒だからね。バレたら意味なくなっちゃうし」
「無論です。私がナツ様の傍を勝ち取るのを指を咥えて見てるんですね」
2人の視線が交差し、バチバチと火花が散っているようにも見える。
どうやらナツの知らないところで、もうひと悶着ありそうだ。
そんなことはつゆ知らず、ナツは静かに寝息を立てるのだった。




