73.アヤメvsアッシュ君
短めです。
もっと執筆時間をくれ…
魔法での戦闘は一進一退の攻防が続いていた。
アッシュ君の猛攻は少し無茶だったらしく、先ほどの弾幕よりもかなり威力が落ちてきているように見える。
それなのに、なぜかアッシュ君は楽しそうに笑っていた。
魔法での全力のぶつかり合いが楽しいのだろう。
それを見ていることしかできない、私。
今できることは、アッシュ君を応援することくらいだ。
…………悔しいけど、それしかできることがないから。
ーアッシュ君視点ー
許せなかった。
あいつがナツの体を汚しているのが、我慢できなかった。
しかもあろうことか、泥で口を無理やり塞ぎ、泥の付いた手でナツの頭を撫でた。
ナツの、綺麗な髪を、ナツの顔を、あいつは汚した。
僕は無意識に氷魔法を生成して、魔族の女の子に向けて連射していた。
さすがの反応速度で大半が泥によって阻まれたけど、何発かは魔族の子に当たったし、この部屋に入った時から見えていた壁に拘束された女の子の枷を破壊することができた。
ナツはあの子に任せておけば大丈夫だろう。
一応声もかけておく。
「そこの人、ナツをお願いします。僕はこいつを相手します」
拘束されていた子がナツを引き上げ始めたと同時に、魔族の子と向き合う。
相当不快な顔をしているのが分かった。
例えるなら、玩具を親に取り上げられた子供のするような顔だ。
だけど…
ナツは…お人形さんなんかじゃない。
少しの間睨み合いが続いたが、先にしびれを切らしたのは魔族の子の方だった。
かなりの速度の泥を次々と飛ばしてくる。
氷の障壁で防御しつつ、氷の槍で反撃する。
さっきの連射でかなり……いや、半分も使ってないか。でも、少し節約していかないとジリ貧になる。
何といっても相手は魔法のエキスパートだ。必要最低限の防御と攻撃で済ませないと魔力の総量で負ける。
油断はしない。
そうした一進一退の攻防が数分続いた。
一歩間違えば死に直結するこの状況で、この状況を楽しんでしまっている自分に気がつき、思わず苦笑を浮かべる。
相手の魔法は未だに威力が変わらない。さすが魔族といったところかな。
だけど、僕だって負けるつもりはない。
幸い魔力もまだ残り半分以上は残っている。
こうなれば持久戦だ。
…そう思っていたが、魔族の子は何を考えてか魔法の威力を急激に上げる。
今までとは比べものにならないほど威力が上がった魔法を耐えしのぐべく、攻撃を一旦中断し防御に専念する。
少し耐えていると、また魔法の威力がぐんと上がる。
それに伴い、防御に割く魔力もぐんと上げる。
このままのペースで行くと…長くは保たないかもしれない。
どんどん魔力を削られ、魔力が切れる寸前で、突然弾幕が止んだ。
魔族の子の方を見ると明らかに疲労の色が見えた。
魔力切れ…そう思い攻撃を仕掛けようとするが、こちらの魔力も底をついている。
そして、魔族の子は一言、
「次はちゃんと玩具にしてあげるから」
と呟き、その場から姿を消した。
どうやら逃げ出したらしい。
とりあえず、ナツのところまで走る。
足元がぬかるんでいて走りにくいけど、そんなことを気にしている暇はない。
「ナツ!大丈夫!?」
ナツは口に入った泥を取り除きながら、親指を上に向けて「何とかね……」と口にする。
どうやらけがはないようだ。




