72.救世主降臨
少し短めです。
願わくばもっと執筆に費やせる時間が欲しい……
扉が開く音に、中にいる全員の視線が集中する。
「あ、ナツ発見!」
聞こえてきたのは、少し高い声。
というかこの声……この口調……もしかして!
「あ、アッシュ君!」
扉を開け中に入ってきたのはアッシュ君だった。
なぜここがわかったのかはわからないけど、とにかく助けに来てくれたらしい。
「アッシュ君!!助け……むぐっ?!」
私はアッシュ君に声をかけようとしたが、アヤメはそれが気に食わなかったらしく泥で私の口を塞ぐ。
「もう、お人形さんが喋っちゃダメでしょ~?」
ニマニマ笑いながらそういうアヤメ。
「……ナツに手を出すな」
次の瞬間、アッシュ君の雰囲気が変わった。
私に手を出されたからなのかわからないけど、明らかに不機嫌そう。
「ほ~ん?ボク、そんなにこの子のこと気にしてるんだね~♪ますます改造りたくなっちゃうなぁ♪」
そういって私の頭を撫でるアヤメ。
それがアッシュ君の逆鱗に触れたらしい。
アッシュ君は両手を広げて前に突き出した。
するとアッシュ君の周囲に氷の槍のようなものがいくつも生成される。
「………………」
そして、無言でその槍をマシンガンのように連射する。
アヤメは咄嗟に泥を巧みに操って防御壁を生成するが、何発か貫通しアヤメの体に当たる。
そして何発かの槍がドロテアちゃんの枷を破壊し、ドロテアちゃんが動けるようになった。
「そこの人、ナツをお願いします。僕はこいつを相手します」
そういってアヤメに向き直るアッシュ君。
アヤメはアッシュ君のその態度が気に食わなかったのか、明らかに不機嫌そうな顔をする。
私はなんとかドロテアちゃんに引き上げてもらい、まともに動けるようになった。
全身アヤメのせいで泥まみれだけどね……口の中にも泥入って気持ち悪い……
「ナツ、大丈夫ですか?」
「な、なんとかね……それよりアッシュ君は……」
そういいながら、私はアッシュ君の方を見る。
そこでは想像を絶するような魔法戦が繰り広げられていた。
アッシュ君は氷を、アヤメは泥を使ってそれぞれ銃撃戦のように撃ち合っている。
壁を作って防御しつつ、合間合間に相手に攻撃を仕掛けている。
今のところアッシュ君の方が優勢に見える。
泥は言わば土と水の合成物。
水が凍ってしまえば泥もまともに使えなくなる。
アッシュ君はそれを理解しているからこそ氷魔法を選んだのだろう。
しかも、どちらも全く隙が無い。
下手に攻撃しようものならアッシュ君の邪魔になってしまうだろう。
結局、私は見ていることしかできない。
……あまりの不甲斐なさに腹が立つ。
何がアッシュ君と旅をするだ。
何がアッシュ君を守るだ。
アッシュ君は、私よりもずっと強い。
それこそ天と地ほど実力がかけ離れている。
……悔しいな。




