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第3話 ステータス確認

 「……」


 気付くと、ニーナはベッドの上にいた。

 ベッド、と言っても藁の上にシーツを敷いただけの簡易的なものだが。


 「ほう、丁度起きたようだな。N-2344」


 ニーナが顔を上げると、そこにはいかにも『貴族』という感じの男性が立っていた。

 少し髭がダンディーな感じがする。


 「……Nなんちゃらって、呼びにくくないですか?」


 ニーナは自分の耳につけられたタグに無意識で触れながら言った。

 奴隷であるニーナには識別番号が与えられており、 N-2344が法律上はニーナの本名である。


 が、書類上はその方が管理しやすいのかもしれないし、人間以下の奴隷から人間だった頃の名前を奪うというのは帝国の奴隷制度の趣旨に合致しているのも確かなのだが……


 ぶっちゃけ、呼びにくい。

 というか覚えられない。


 そのため多くの者はニーナのことを、そのまま『ニーナ』と呼ぶ。


 ステータスに表示されている本名は基本的に本人の自覚と、周知によって決まるため、その欄も『ニーナ』のままだ。


 「それを君が憂う必要はない」

 「そうですね」

 

 奴隷が心配することではなかった。


 「それと、奴隷であり君が貴族である私に許しを得ずに質問をするというのは、許されないことだ。今後、気を付け給え」

 「……」

 「不服、と言いたげな表情だが、それを口に出さなかっただけ成長したと判断しよう」


 こいつ、嫌いなタイプだわぁー

 とニーナは内心で思った。


 「さて、手短に伝えよう。前回の試合は君の勝利だ。おめでとう」 

 「……ありがとうございます」

 

 途中で気絶してしまったが、その前に相手が息絶えたことでギリギリニーナの勝ちになったようだ。

 一先ず、貞操と死を免れたことにニーナはホッとする。


 「おっと、名乗り遅れていたな。私はこの闘技場を任されている者だ。まあ、オーナーとでも呼んでくれ」

 「はい、オーナー」


 ちなみにニーナは公共奴隷なので、ニーナのご主人様は国そのものになる。

 つまりオーナーとご主人様は違う。


 「しかし驚いたよ。まさかレベルに二つも差があるのにも関わらず、勝ってしまうとはね。何か、技能(スキル)でも持ってたのかな?」

 「今は確認していませんから分かりませんが、当時は持っていませんでした」

 「へぇ、そうかい」


 ステータスを調べる道具は存在するが、それで確認することができるのは変数値と固定値だけだ。

 技能(スキル)を確認することはできない。


 「あと二戦し、連続で勝利すれば君は身分を一つ、上げることができる。人間に近づくわけだ。まあ、頑張りたまえ」

 「……はい」


 連続で三回勝利すれば、五等奴隷(家畜以下)から四等奴隷(家畜並み)に身分を昇格させることができるということは、事前に聞いていた。


 もっとも、初戦で勝利するまでは生き残ることだけを考えていたので、そんなことを意識したことはなかったが。


 「それと、もう一つ。新しいステータスを確認させて貰う」


 そう言ってオーナーは羊皮紙と短剣を取り出した。

 ニーナはその羊皮紙に血液を垂らす。

 すると羊皮紙に文字が浮かび上がった。


 「ふむ……では、次回、良い戦い(ファイト)を期待しているよ」


 そう言ってオーナーはその場から立ち去った。

 それからニーナは改めて自分のステータスを確認しようとして……


 ぐぅー


 お腹が鳴った。

 まずは食事だ。







 働かざるもの食うべからず。


 ニーナの前世の世界では、このような慣用句、ことわざが存在した。

 つまり、「飯が食いたかったら奴隷は働け」という意味である。


 この世の中で働いていないのにも関わらず、食べることが許されるのは自由民だけだ。


 さて、ニーナの仕事は基本的には闘技場で戦うことである。

 もうすでにニーナは一戦やった、つまり働いたので食事にありつくことができた。


 以前まではカチカチのパンと透明な野菜スープ(ほぼ水)のみだったが、一度戦ったからか、それとも勝利したおかげか、食事の質がアップグレードした。



 パンがカチカチなのは同じだが、二個になり……

 水のような味のしないスープから、チーズが溶けた濃厚な肉入りの肉入りの(大事なことなので二回言った)シチューに変わった。


 

 「肉なんて、食べたの一年ぶりだわ……」



 孤児院の財政状況は苦しかったため、基本毎日野菜&野菜&野菜だった。

 久しぶりに豪華な食事を食べることができた気がする。


 「このまま、勝ち進めばもっと豪華になるのかな?」


 将来は大きなステーキでも食べてみたいとニーナは思った。

 前世の自分は食べたことがあるようだが……

 ぶっちゃけ、ニーナにとって前世の自分なんてものは他人も同然である。


 ステーキの味を思い出そうにも思い出すことなどできない。

 むしろ、ステーキを食べている姿を前世の自分に見せつけられたような気分になるため、余計に嫌な気分になる。


 「さて……これからどうするか」


 一先ず、ニーナはステータスを確認してみることにした。



名前:ニーナ

性別:女

種族:人間/????

職業:剣闘士

身分:五等奴隷


レベル:2


生命力:6

旋律力:11

筋力:3

魔力:11

耐久力:3

耐魔力:11


魔力質:A-

魅力:A-

直感:A

理性:B

幸運:A


称号・加護・技能

・格上殺し……レベル差分と同数の数値がステータスに加算される


 「おお……」


 相変わらず耐久力は紙のようだが、それ以外はそこそこ上がっている。

 ニーナは少し感動した。


 一般的にレベルが十以下であるうちは、レベル×3程度が平均的と言われている。

 それを考えると、レベル2の段階でこの数値はかなり良い。

 今はまだ平均からさほど離れていないが、これからレベルが上がれば大きな差がつく可能性がある。


 生き残る希望が見えてきたような気がした。


 さて、ニーナは改めてステータスの考察をした。


 変数値とは別に、固定値というものが存在する。

 魔力質、魅力、直感、理性、幸運に当たるのがそれだ。


 魔力質は文字通り魔力の質。

 魅力は性的な、及び人間的な魅力。

 直感は第六感。

 理性はどれだけ本能や感情に支配されず動けるかであり、人間は最低でもCは持っている。

 幸運は運命を選び取る能力である。


 「……幸運Aって数値上は高いのになぁ」


 幸運は運命を『選び取る』能力である。

 まあ、つまり最初から奴隷になる運命だったのだろう、ニーナは。

 その中でもマシな部類を選ぶことができている、ということだ。


 「しかし魅力がA-か。……マイナスなのは性格のせい?」


 通常はA相当だが、マイナス補正が掛かってるから少し低い、ということが分かる。

 マイナスが何なのかは、今のニーナに確かめる手段はない。


 もう一つ、確認しなければならないのが『称号・加護・技能』である。

 これらは一くくりに技能(スキル)と呼ばれる。

 つまり技能(スキル)の中に技能があるわけだ、ややこしい。


 尚、大事なことではあるが『技能』と『技術』は全く異なるものだ。

 『技術』は体と頭で覚え、実行するものだが……『技能』は魂に刻みつけられているため発動しようと思えば簡単に発動できる。


 どちらが凄いのかは、時と場合による。


 まあ、一先ず効果が微妙とはいえ『格上殺し』という技能を得られたことを喜ぼう。


 「うーん……戦わないことには技能(スキル)は手に入らないし、レベルも上がらないし……やるべきことと言えば……『基礎値』かな?」


より詳しい説明


魔力質……『魔力』が魔力量を示すのに対し、こちらは質を示す。当然、質が高ければ高いほど強力な魔法を低燃費で使用できる。Cが一般人、Bがあれば優秀な魔術師になれる。


魅力……Cが普通。Bで容姿が良いとされる。Aとなれば、それは人間的な美しさを超えている……がニーナは『-』が入っているので、そこまでではない。(絶世の美少女ではあるが)


直感……文字通り、勘。五感の総合的能力でもある。


理性……Cが普通の人。Dが感情的だったり、欲望を制御できない人で、逆にBは冷静だが冷徹ともいえる。Eは野生動物か何かと同じレベルで、Aはロボットか何か。AやEの人間はまともな社会生活が送れない。なお、理性と知性は別。どんなに知性があっても感情的になる人間はいるし、さほど頭は良くなくても落ち着いている理性的な人間はいる。


幸運……『運命を選び取る能力』。まあ、つまりエロゲとかギャルゲとか乙女ゲーとかで出てくる選択肢のうち、最善を選び取れるか否かを示す度合い。

逆に言えば選択肢がない場合はどうしようもない。極端な話、どんなに良い選択肢を選んでも最後にバッドエンドしか存在しないなら、幸運がどれだけ高くとも、不幸になる。

ニーナの場合、『捨て子になる』『奴隷にされる』『闘技場に入れられる』『戦わさせられる』は決定事項だったので、幸運がたとえAでも避けられなかった。


ちなみにこの『決定事項』を示す数値は別で存在するが、それはまだニーナのレベルでは閲覧できない


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