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第18話 VSヘカトンケイル×3

 (まずは数を減らす!)


 第一にニーナが目標としたのはヘカ次郎という名前の、ニーナよりも旋律力が低く、加えて耐魔力が著しく低い職業が戦士の個体だ。


 両足に魔力を流し、一気に肉薄する。

 戦士ヘカトンケイルは六本の棍棒を振り回し、ニーナを攻撃するが……


 自分よりも旋律力の高い相手の攻撃すらも避けられるニーナが、自分よりも旋律力の低い相手の攻撃を避けられない道理がない。


 そのすべてを最小限の動きで避け、そして風を纏わせた槍で六本の腕を切り裂く。


 ニーナの槍は戦士ヘカトンケイルの腕を切り裂き、そしてニーナの風の魔力はその傷口を押し広げ、内部から戦士ヘカトンケイルの腕をズタズタにする。


 「■■■■■!!!」

 

 悲鳴を上げる戦士ヘカトンケイル。

 そんな戦士ヘカトンケイルを援護しようと、武闘家ヘカトンケイルがその剛腕でニーナを殴りつけようとする。

 さらに魔法使いヘカトンケイルが魔法を放つ。


 三対一の状態になり、追い込まれるニーナ。


 (ここで仕留めないと後が面倒だ!)


 意を決したニーナは、初手から大技を出すことを決めた。


 魔力を限界まで槍に流し込む。


 同時並行でニーナは右手だけで槍を振るい、ヘカトンケイルたちの動きを牽制しつつ、左手に投擲用の短剣を三本握った。


 それを続けざまに三方向……

 三体のヘカトンケイルに放った。


 ヘカトンケイルたちはあっさりとその投擲用の短剣を弾き飛ばしたが……

 一瞬だけ三体の意識がニーナではなく短剣に向いた。


 その一瞬の隙さえあれば、大技を出すことは容易だ。


 「死ね!!」


 紅蓮の炎が迸る槍を、ニーナは戦士ヘカトンケイルに対して投擲した。

 戦士ヘカトンケイルはその槍を掴むが……


 「■■■■■!!!」


 燃えている槍を掴めば、当然大火傷を負おう。

 悲鳴を上げ、混乱している戦士ヘカトンケイルにニーナは一瞬で肉薄した。


 そして腰のバスターソードを抜き放ち……


 「うりゃあああああ!!!」


 その股間に、風の魔力を纏わせた斬撃を放つ。

 

 ニーナのバスターソードが戦士ヘカトンケイルの睾丸と陰茎を縦に断ち切る。

 鮮血が噴き上がる。

 さらにダメ押しと言わんばかり、ニーナはそこを蹴り上げ、完全に破壊する。


 泡を吹いて倒れる戦士ヘカトンケイル。

 ニーナはそこからすぐさま離脱する。


 ヘカトンケイルが『起死回生』を持っていることはすでに分かっている。


 「次はお前だぁああああ!!」

 「「■■■■■■■■■!?」」


 ニーナのあまりの所業と気迫に恐怖を覚えたのか、二体のヘカトンケイルは後退りした。

 無論、そんなことをすればニーナに付け込まれるのは当然だ。


 「食らえ!!」


 ニーナは炎の魔力を宿した短剣を武闘家ヘカトンケイルに向かって投げつけた。

 武闘家ヘカトンケイルは上部の両腕でこれを掴む。

 しかし掴んでもなお、潤沢に魔力を注がれた短剣は炎を宿していた。


 ヘカトンケイルとて生物であり、そして生物が本能的に火を恐怖してしまうのは仕方がないことだ。

 反射的にヘカトンケイルは目を瞑ってしまった。

 そして……


 目を開けるとそこにはニーナがいた。


 不味い!


 そう思った武闘家ヘカトンケイルは両手で睾丸を守った。

 中部と下部の四本の腕を使った、全力の守りである。


 だがこれは大きなミスだ。

 守勢に一度回ってしまえば、あとは攻撃を受け続けるだけになってしまうのだから。


 ニーナは武闘家ヘカトンケイルのこの動きを既に読んでいた。

 そのためバスターソードは持ち替えており、刃を手に持ち、柄を先端にしていた。


 ニーナは大きく振りかぶり、武闘家ヘカトンケイルの右足の脛、弁慶の泣き所を強く強打した。

 武闘家ヘカトンケイルは右足を抱え上げる。

 ニーナはにやりと笑みを浮かべ、そんなヘカトンケイルの左足の脛を強打する。

 今度は左足を抱える武闘家ヘカトンケイル。


 痛みで混乱する武闘家ヘカトンケイルの股間はがら空きだった。


 「これで二体目!!」

 「■■■■■!!!」


 しまった、と言わんばかりに武闘家ヘカトンケイルは悲鳴を上げるが、もう遅い。

 ニーナのバスターソードは武闘家ヘカトンケイルの股間を捉えていた。


 悲鳴を上げて倒れる武闘家ヘカトンケイル。

 ニーナが武闘家ヘカトンケイルから離れると、すぐさま魔法がニーナに襲い掛かる。


 ニーナはこれを剣を引き抜いて弾き飛ばす。

 ニーナは耐魔力が大きい。

 魔法使いヘカトンケイルはさほど脅威とならないので、捨てて置いても良い。

 

 (さて……問題は『起死回生』か)


 すでに二体のヘカトンケイルは股間から血を垂れ流しながら、立ち上がっていた。

 ニーナはほくそ笑む。


 「かかって来いよ」

 「「■■■■■!!!」」


 ヘカトンケイル二体が吠えた。

 一直線にニーナに向かって飛び込んでくる。


 巧みにヘカトンケイルの攻撃を避けるニーナ。

 本能に任せた攻撃など、いくら筋力や旋律力が上がったところでニーナに当たらない……と言いたいところだが、武器による牽制が効かない上に、魔法使いヘカトンケイルの魔法にも一定の注意を払わなければならないとなると……


 「うぐっ……」


 ニーナの腹部に戦士ヘカトンケイルの蹴りがめり込んだ。

 ボールのように空へと跳ね上がるニーナの体。


 (痛い……だけど!)


 耐久力が上がったからか、それとも妙なスキルのおかげか、それとも購入した防具のおかげか……

 動けないほどではない。


 ニーナは痛みを堪えながら、左手で投擲用ナイフを二本、ニーナを見上げている武闘家ヘカトンケイルへと投げつけた。

 二本のナイフのうち二本が武闘家ヘカトンケイルの眼球に突き刺さる。 

 これで武闘家ヘカトンケイルの視力を潰せた。


 そしてニーナはそのままバスターソードを戦士ヘカトンケイルに向けながら落下する。

 戦士ヘカトンケイルもニーナを待ち構える。


 戦士ヘカトンケイルは下部の腕でバスターソードの刃を、中部の腕でニーナの両腕を、そして上部の腕でニーナを受け止めた。

  

 が、さすがに落下の衝撃を完全に殺すことは不可能だった。

 バスターソードはしっかりと、戦士ヘカトンケイルの口から喉奥へと突き刺さっていた。


 「っく、はぁああああ!!」

 「■■■■■!!!」


 ニーナと戦士ヘカトンケイルが叫ぶ。

 戦士ヘカトンケイルはニーナを絞め殺そうと上部の腕でニーナを強く締め上げ、一方ニーナはバスターソードから風の魔力を送り込み、戦士ヘカトンケイルの体内を破壊する。


 勝ったのは……

 ニーナだった。


 ゆっくりと崩れる戦士ヘカトンケイル。

 ニーナはその両腕から何とか逃れるが……

 そこへ魔法使いヘカトンケイルの魔法攻撃が襲い掛かった。


 これはさすがに避けられず、火の玉を直撃してしまう。

 が、耐魔力の強いニーナはこれを何とか耐えきった。


 しかし……


 「っく……肋骨が……」


 戦士ヘカトンケイルに締め上げられたためか、ニーナの肋骨が折れてしまったのだ。

 痛いものは痛い。

 だが……


 「はは……でも、あと一体です」


 戦士ヘカトンケイルも、武闘家ヘカトンケイルも共に力尽きていた。

 後は魔法使いヘカトンケイルを倒せばニーナの勝利だ。


 ニーナは初戦の時から愛用していた近接戦闘用の短剣を抜いた。

 そして最後の魔力を振り絞り、身体能力を底上げする。


 魔法のことごとくを避け、六本の腕を掻い潜り、ニーナは短剣で股間を切り裂いた。

 ヘカトンケイルの股間はニーナの目線より少し下の辺りあるので、割と狙いやすいのだ。


 さらにニーナは短剣をヘカトンケイルの腹部に突き刺す。

 魔法使いヘカトンケイルの耐久力は100で低めだが、それでも分厚い腹筋があるため、これは内臓にまで達しない。

 が、それでも問題はなかった。


 ニーナはジャンプしてこの短剣に足を掛け、さらに大きく跳躍。

 魔法使いヘカトンケイルの喉元に最後の投擲ナイフを差し込んだ。


 柔らかい喉を切り裂き、気道を切断する。

 これで『起死回生』を使おうとも、酸素が確保できない以上、ヘカトンケイルはまともに動けない。


 ニーナの狙い通り、魔法使いヘカトンケイルは最後に『起死回生』で復活して暴れたが……

 十五秒で呼吸が途切れ、動かなくなった。


 「勝者、ニーナ!!!」


 血塗れになったニーナは、気分良く観客席に向かって手を振った。


二度目の相手なので、そこそこ余裕の勝利

ただ次は強敵を用意する予定


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