第15話 新情報
「ん……」
ニーナは起き上がった。
そこは小さな部屋だった。
寝ているベッドはいつもの藁にシーツを敷いたようなものではなく、材質は堅いが、清潔なものに変わっている。
しかも同居人はいない。
個室のようだ。
「ここは……」
そこでニーナは自分が試合に勝利したことを思い出した。
そしてふと、頭の中に妙な声が響いていることに気付く。
『おめでとうございます。レベルが11に達しました。公開可能な情報が増えましたので、ご確認ください』
そこでニーナは一先ず、自分のステータスを確認してみる。
名前:ニーナ
性別:女
種族:人間/????
職業:剣闘士
身分:三等奴隷
属性:混沌/中立
性格:被虐/楽観
性質:妖/獣
レベル:15
生命力:78+5
旋律力:120+5
筋力:60+5
魔力:120+5
耐久力:60+5
耐魔力:120+5
魔力質:A-
魅力:A-
直感:A
理性:B+
幸運:A
運命:E
称号・加護・技能
・格上殺し×2……レベル差分の二倍の数値がステータスに加算される
・打たれ強い疾風の短剣使い+5……短剣装備時、筋力、旋律力、耐久力に+5の補正が掛かる
・打たれ強い疾風の槍使い+5……槍装備時、筋力、旋律力、耐久力に+5の補正が掛かる
・打たれ強い疾風の剣使い+5……剣装備時、筋力、旋律力、耐久力に+5の補正が掛かる。
・魔物殺し+5……敵が魔物の時、全ステータスに+5
・オーク殺し+2……敵がオークの時、全ステータスに+2
・ゴーレム殺し……敵がゴーレムの時、全ステータス+1
・ヘカトンケイル殺し……敵がヘカトンケイルの時、全ステータスに+1
・男の敵+5……敵の性別が男性、または雄の時、全ステータスに+5
・腹パン(され)マスター……腹部(内臓)に攻撃されたとき、ダメージ二割減。
・腹パン(される)天才……腹部(内臓)に攻撃されたとき、ダメージ半減。
・露出性癖+5……履いていない時に全ステータスに+5
・被虐性癖+5……性的興奮時、耐久力に+5
・戦闘狂+5……戦闘時、全ステータスに+5、および性興奮。
・ゲロイン+5……吐瀉後、全ステータスに+5
・魔力操作……魔力を呼吸するように操作できる
・心眼(洞察)……敵の本質を見抜く
・心眼(攻撃)……攻撃時に最適解を導き出す
・心眼(回避)……回避時に最適解を導き出す
・心眼(防御)……防御時に最適解を導き出す
「……また失礼なのが増えてる」
何だよ、ゲロインって。
ニーナは眉を潜めた。
確かにいろいろと戻してしまったが、好きで戻したわけではない。
これはいくら何でもあんまりだろう。
「まあ、でも一気にレベルが五つも上がったし……ステータスも一気に伸びたから、それで良しとしよう」
ステータスはレベル10を超えると伸び率が上がる。
無論、その分レベルも上がりにくくなる。
基本的にレベルは自分の実力よりも上の相手と、もしくは複数の相手と戦った時に上昇する。
これだけの速度でレベルが上がるのは、常に格上と戦わされているニーナくらいなものだ。
その他、魔力操作や心眼という技能も増えている。
この二つは元々ニーナが技術として会得していたものだが……
それが完全に魂に根付いたことで、意識せずとも使用できるようになったことを、これは意味している。
これは技術の技能化と呼ばれる現象だ。
「それにしても、属性・性格・性質か……そう言えばそんなのもあったなぁ」
ニーナは前世の記憶を引っ張り出した。
今まで見ることができなかったので、思い出すことができなかったのだ。
『属性』はその人物が何を重んじるかによって定められる。
『混沌』は人に命令されたり、社会に囚われることを嫌うということを示す。『中立』は善悪は二の次で、積極的に悪をなすことはないが、かといって善行もしないということを示す。
その他、『秩序』『中立』/『善』『悪』などが存在する。
『性格』はその人物の物事の捉え方によって定められる。
『被虐』はどちらかと言えば他者を虐げるよりは虐げられる方を好み、そして『楽観』は常にポジティブに考えている、ということを示す。
その他、『加虐』『両属』/『悲観』『中庸』などが存在する。
『性質』はその人物がどのような存在なのかを示す。
『妖』は自然に属する存在であることを示し、『獣』は原始的な欲求が強いことを示す。
その他、『人』『神』/『聖』『俗』などが存在する。
「……被虐は、失礼じゃない? 私がマゾみたいじゃん」
とニーナは呟いた。
が、かと言って『加虐』でもないような気がするし、ましてや『両属』でもない。
そう考えると消去法的に間違ってはない……のかもしれない。
「それに、『獣』って……まるで私が食べることと寝ることと……え、エッチなことしか考えてないみたいじゃん! 他にもいろいろと……」
と、考えてみるがこれといった欲望があまりないことにニーナは気付いた。
金や地位、名誉などを欲する『俗』でも、かといって全く欲望がない『聖』でもないなら、消去法的には『獣』になるのは、おかしくないような気もする。
「しかし……『妖』ね、普通、人間なら『人』になるはずなんだけど。私の種族が謎なのも、やっぱりそれが理由かなぁ……」
種族などのステータスは本人の認識と、そして周囲からの認識、そして正確な定義の三種類の要素によって複合的に判断される。
ニーナは自分のことをごく普通の人族だと思っているし、周囲の者たちも人族として扱っているが、おそらく正確な定義では人族に含まれないのだろう。
だから????となっている。
「『妖』って、精霊とか魔物とかが多いんだよねー私もそっちに近いのかな? うーん」
次に新たに見えるようになった隠しステータス。
『運命』の項目を見る。
「運命はEね……確か運命が人生全体の幸運で、幸運がその場その場の運勢だったかな?」
例えとして適切なのかは分からないが、運命が戦略で、幸運が戦術と言える。
ニーナの場合は出生とその後の人生は全体としては非常に不幸だが、日常を一つ一つ切り取ってみると幸運……
というのは運命がEで幸運がAというステータスによるものである。
(別にAはいらないから、どっちもBでいて欲しかった……)
幸せな一般家庭に生まれ、平凡に育ち、平凡な幸せを手に入れる。
それはこの『運命:E』では叶わない願いだろうと、ニーナはため息をついた。
ニーナが少し落ち込んでいると、乙女の部屋にノックもせずに入る者がいた。
闘技場のオーナーである。
「おめでとう、 N-2344。これで君も晴れて三等奴隷。鉄球とはおさらばだ」
「ありがとう、ございます」
一先ずニーナはお礼を言うことにした。
オーナーはニーナのベッドの側まで歩み寄る。
「まさか、勝てるとは思わなかったよ」
「それはどうも……」
「ふふ、そんなに不機嫌そうな顔をするな。お詫び……ではないが、君は稼ぎ頭だ。特別に個室を用意した。好きに使い給え」
それからオーナーはニーナに袋を渡した。
怪訝そうな表情でニーナはその袋を開ける。
「これは……」
そこには銀貨や銅貨が詰まっていた。
三等奴隷は財産の所持が認められていない。
どういうつもりなんだ、とニーナはオーナーを見上げた。
「君は稼ぎ頭だからね。必要経費というやつだ……特別に武器や防具を購入することを許す。もっとも、法律上はそれは君の物ではなく、闘技場の物になるけどね」
「……ありがとうございます」
法律にも抜け穴はある。
所持は認められてはいないが、貸出は認められているのだ。
法律上、所有者になっていなければ実質的な所有は認められる。
そもそも奴隷が少し私物を持ったくらいでは実害はないので、処罰を受けるということは基本的にない。
そんなことで処罰をするほど、政府も暇ではないからだ。
「……出歩いて良いんですよね?」
「無論だとも。もっとも、逃亡は許されないが」
「逃亡なんて、できないでしょう……」
足枷や首輪、そしてタグのついたピアスはニーナが奴隷であることを示している。
ニーナは桃色の美しい髪が特徴的なので、すぐに見つかって連れ戻されるだろう。
逃亡奴隷がどのような処罰を受けるかは知っている。
「よく分っているじゃないか。さて、あと三回勝てば二等奴隷だ。次も良い戦いを期待しているよ」
「……ご期待に沿えるように頑張ります」
心にも思っていないことをニーナは口にした。




