おむすび屋、虎さん。 第22話 異世界コンテスト!? 勝負むすびは勝てるのか
ある朝。屋台の天幕に、一通の封筒がぶら下がっていた。
> 「“第一回・異世界グルメ頂上決戦”へのご招待……?」
ルゥナが読み上げると、虎さんはむすび片手に目を細めた。
> 「まーた、どっかの貴族の道楽か?」
だが、その賞品には思わず二度見した。
> 『優勝者には、“神米・五穀煌”一年分と、旅の許可証を贈呈』
「……神米、だと?」
虎さんが微かに頬を引き締めたその表情を、ルゥナは見逃さなかった。
◇
会場は王都の特設広場。
世界各地から集まった料理人たちが、自慢の腕を振るっていた。
派手な魔法を使ったスープ職人。
炎と踊るバーベキュー将軍。
香草を空中で調合するエルフの料理師――
ルゥナは圧倒され、虎さんにささやいた。
> 「こ、こんな人たちの中で、ただのおむすびって……!」
> 「ただの、じゃねぇさ」
虎さんは、かまどの前に立った。
選んだ米は、村のばあちゃんが届けてくれた在来米。
具材は――梅干し、焼き鮭、こんぶ、味噌、そして塩。
そう、“五種むすび”。
今まで旅で出会った味を、すべてひとつの皿に――“むすんだ”。
◇
審査員がむすびを手に取り、ひとくち。
その瞬間、皆の表情が変わった。
> 「……あたたかい……」
> 「これは、“味”というより……“記憶”だ」
> 「食べるたびに違う誰かの想いが流れ込んでくるような……」
最後の審査員は、年配の料理長だった。
一口食べると、ぽろりと涙をこぼした。
> 「……これは……昔、母が……戦場に向かう父に渡していた……あの、むすびと同じ味だ……」
静まり返る会場。
だが次の瞬間、割れるような拍手が起こった。
> 「優勝は……屋台『おむすび屋、虎さん』!」
◇
表彰式を終え、米袋と証書を抱えるルゥナが叫ぶ。
> 「虎さん、やったねっ!」
> 「まあな」
虎さんは、どこか照れくさそうに頭を掻く。
> 「だが、むすびの本番はこれからだ。
この米で、もっと多くの人間の“記憶”を握らなきゃならねぇ」
ルゥナは笑って頷いた。
> 「うん。じゃあ、次のむすびは――どんな人に届けようか?」
技や派手さじゃない。
人の想いを“むすぶ”味こそが、真の力になる。




