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おむすび屋、虎さん。 第23話 無口な騎士と、塩むすびの誓い



王都の城下町、静かな朝。

まだ屋台の準備をしていた虎さんとルゥナの前に、

ひとりの男がすっと立った。


背は高く、鋼の鎧に身を包んだ無口な青年騎士。

しかし、彼は一言も口を開かず、代わりに小さな羊皮紙を差し出した。


> 「……塩むすびが、食べたいです」




それだけが、丁寧な筆跡で書かれていた。


> 「……塩むすびだけ? 具材もなしで?」




ルゥナが不思議そうに問うと、騎士は小さく頷いた。


虎さんは、にやりと笑う。


> 「なら、こいつの出番だな」




彼が選んだのは、“神米・五穀煌”。

先日のコンテストで手に入れた、奇跡の米だ。


ただの塩むすび――

されど、“米”そのものの旨味と、塩の加減が命を握る、真っ直ぐな一品。



火加減、蒸らし、そして手の温度。


虎さんは黙々と、一つのむすびを握った。


> 「――さあ、どうぞ。お前さんの“誓い”に添える味になればいいがな」




青年は受け取り、そっと口に運んだ。


……その瞬間、彼の瞳に、かすかに揺れる光が浮かぶ。



> 「……亡き兄も、騎士でした。

あの人は、戦場に向かう前、必ず“塩むすび”を一つ持って行ったんです」




> 「それは、母の味であり――『必ず帰る』という、約束の証でした」




> 「でも……ある日、帰ってこなかった」




静かに語る彼の言葉に、ルゥナは息をのむ。


> 「だから、ぼくも同じむすびを――握ってほしかったんです。

今度こそ、“帰ってくる”と、誓いたかった」




虎さんは、手を組み、低くうなずく。


> 「……なら、今握ったそれが、お前の“旗印”になる。

忘れんなよ。むすびは、ただの飯じゃねぇ。“想い”の証だ」




青年騎士は、深く頭を下げ、再び無言のまま立ち去った。


背中に、誓いの重みをのせて――。




たったひとつの塩むすびが、

無言の騎士に“帰る場所”を教えてくれる。

それは、静かなる約束の味。






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