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おむすび屋、虎さん。 第21話 ひと粒の涙、ひとくちの未来



その夜、屋台にひとりの青年がやって来た。

まだ若く、旅装束のまま、どこか急いでいるような足取りで。


> 「……おむすびを、ひとつ。ひとくちでいいんです」




ルゥナが驚いて見上げると、青年の目は少しだけ濡れていた。


> 「できれば、優しい味がいい」




虎さんは黙って頷き、炊き立てのご飯をそっと手に取った。


選んだ具材は――さけのほぐし身。


ふんわりと炊き上げた鮭を、ほんの少しの醤油と酒で香ばしく仕上げ、

炊き立てのご飯で、ふわりと包む。


包み込むように握る。それはまるで、誰かの背中をそっと支えるような動きだった。


> 「はい、“ひとくち”のおむすびだ」




小さく、指先ほどのむすび。

青年はそれを手にとると、深く頭を下げて、その場を去ろうとする。


> 「……ありがとう。これで、前に進めそうな気がします」





翌朝、村に届いた報せ。


> 「あの子、村長の息子さんなんだってさ。

村を出てからずっと連絡もなくて、心配されてたみたい。

……でも、今朝、村長の家に“おむすびと手紙”を置いていったんだとよ」




手紙には、こう書かれていたという。


> 『父さん母さん、ごめんなさい。

俺、ちゃんと歩いていくよ。

あの味が、もう一度心に灯ってくれたから』





「むすびってのは、腹を満たすだけじゃない。

気持ちを、誰かに“つなぐ”もんなんだよな」


虎さんの言葉に、ルゥナは頷いた。


> 「小さくても、心に届く味ってあるんだね……」




> 「ああ、ある。ほんのひとくちで、未来を変える力がな」




ほんのひとくちの温もりが、

迷いを晴らし、背中を押す。

それもまた、おむすびの魔法。










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