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おむすび屋、虎さん。 第18話 ルゥナ、むすぶ。初めてのおにぎり



「今日は、あたしが握ってみる」


静かな夜の屋台。

虎さんが風邪で寝込んでしまった夜、

ルゥナはひとり、かまどの火を前に立っていた。


湯気の上がる羽釜。

ぱち、ぱちと炭の音が耳に心地よい。


> 「……こんなに、難しいんだ」




虎さんのように上手くは握れない。

手のひらにくっついた米粒に、戸惑いながらも、ルゥナは少しずつ形を整える。



そんなとき、屋台に影が差す。


「……まだ、やってるかい?」


現れたのは、若い旅の女性だった。

薄い外套をまとい、肩で息をしている。


「ご、ごめんなさい、今日は虎さんがいなくて……。でも、あたしでよければ!」


そう言って、ルゥナは最後まで迷っていた“具材”を取り出す。

それは、今日の朝、虎さんから教わった「卵のそぼろ」。


> 「これ……優しい味って言ってた。

じゃあ、きっと、今のあなたにも合うと思う」




言葉より先に、むすびを差し出す。


旅の女性は驚いた顔をし、ゆっくりと口に運んだ。


> 「……あっ……なつかしい」




> 「え?」




> 「幼いころ、母が作ってくれたお弁当。毎週、遠足でもないのに持たされてたの。

“誰にでもご飯を分けなさい”って言って……変な親だって、思ってたのに」




女性の目に、涙が浮かぶ。


> 「……でも、あの人の気持ち、今ならわかる気がする。

あなたも、そうやって誰かに“結んで”るんだよね」




ルゥナは、思わず恥ずかしそうに笑った。


> 「……うん、あたしも、虎さんに教えてもらったから」





その夜、虎さんの寝床にそっと一つのむすびが置かれていた。

小さくて、少しいびつで、でもどこか温かい。


虎さんは目を細めながら、それを見つめる。


> 「……お前も、握れるようになったんだな」





翌朝、ルゥナは嬉しそうに言った。


> 「あたし、もっと練習するね!

今度は“誰かの記憶”じゃなくても、心に残る味を作れるように!」




虎さんは照れ隠しのように、むすびを一口かじりながら答えた。


> 「……十分、うまかったぞ」





---



誰かのために握る。

それは、思いやりであり、祈りであり――未来へ向けた約束。

ルゥナは初めて、自分のむすびに“想い”を込めた。







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