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特殊犯罪対策課第6班  作者: ヒトノモドキ


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-15-女王のお願い(4)

機動隊長がゆっくり目を開けると、相手の銃口からは硝煙が出ているが――弾は自分に命中していない。

 この距離で外すとは考えにくい...驚きで思考が定まらない中、彼は隣に銃弾を掴んで立っている背の高い人物がいることに気が付く。

 執事のような服を着て灰色の髪の人物――顔だちはハッキリしており、ウルフヘアの男性―――とおもいきや、胸にかなりの膨らみを見せている。


「動けますか?一瞬だけ入口が開くので脱出してください」


女性らしい高い声...その容姿と先ほど銃弾を掴む程の動体視力...間違いない―――彼女は


「霧島さん...!ありがとうございます」


隊長は素早く離脱するが、自分の装備の一部をその場において役立てるように託す。

 隊長が壁の近くで倒れている警察官を抱えて離脱すると、霧島は鋭い目つきを2人に向けた。


「銃弾手で掴むとか激ヤバ...何あんた」

「現場に到着した、どうすればいい?」


カーメラルの言葉を無視して通信機で結良に連絡を入れる。

 通信内容を聞いた霧島はそのまま臨戦態勢に入りカーメラルに蹴りを入れる。


「うわっ?!こっちの話無視するくせに!」


霧島の蹴りを咄嗟に受け止めたカーメラルだが、ちゃんと体制を取った一撃でないにもかかわらず、とんでもない重さを感じる。

 この体は機動隊員のもの、それなりに鍛えているし、力だってある。

 蹴りを受けとめた手が痺れてまともに動かない程の力の差はあり得ない...先ほどの動体視力といい、間違いなく強化系の能力者。


「お姉さん?お兄さん?まあどっちでもいいか、私イケメンは好きだよ。クリス、殺さないでね...あの体は絶対欲しい」

「好きしろ...こっちはこっちで準備――」


クリスが少し離れて壁の突破方法を探ろうとした時――一瞬で霧島が近づき足にローキックを入れたのち崩れた体制で届きやすくなった頭部目掛けて後ろ蹴りを入れる。


「(早っ!反応出来ない!)


カーメラルが応戦体制に入った時には既にクリスは気絶しており、的確に相手を無力化出来る力加減を熟知している。

 戦闘スタイルは足技中心のよう...殴り合いなら間違いなく勝てないが――


「ちょっと大人しくしろ!」


カーメラルは能力を使って液体を床にばらまいて霧島の動きを止め、拳銃を構える。

 足を撃つため狙いを定めて引き金を引くが、弾丸は霧島の足に当てり弾かれるように消えて行った。


「は!?」


足に何か鉄板でも仕込んでいる?

 カーメラルは銃口を彼女の肩に変更し引き金を引く。

 だがその弾丸も弾かれるように消えてしまい、カーメラルは目を丸くする。


「(全身に銃弾弾けるぐらいの何かを仕込んであんな動きできるわけがない.....能力?!)」


強化系の能力で身体能力だけでなく頑丈さまで確保出来ている...なんてことは考えにくい。

 人間離れしている身体能力が仮に素の状態だとすると...この攻撃を無効化しているものが能力。

 確実に後者の方が超常現象に近いため、霧島の身体能力に驚愕するカーメラル。


「どうなってるの...あんたの体」

「情報を話すつもりはない」


霧島が戦闘態勢に戻りカーメラルに蹴りを入れようとしたその時――足元で爆発が起こり彼女は一瞬で炎に包まれた。


「ぷっ...真正面から戦おうとするから。クリス仕込みは完璧ね」


カーメラルが嬉しそうに笑うと、倒れていたクリスは頭を抱えながら起き上がる。


「くそっ...ほんとに気絶するところだったぞ。あいつなんなんだ」


炎に包まれた霧島に苛立ちを見せるクリスだったが、次の瞬間2人の目の前には無傷な彼女が服に着いた埃を払っている余裕そうな姿が映る。


「は?何あれ...」

「攻撃を防御するとかそういう次元の話じゃあない...完全に無効化している」

「そんな能力あり得るの?!クソイベじゃん!」


カーメラルが悔しそうに地団駄すると、クリスは彼女を落ち着かせ冷静に分析する。


「攻撃無効化なんて能力、何かからくりがあるに違いない」

「無効化するのに条件があるとか?」

「銃弾も爆発も...その後の炎も防げるとか条件が広すぎる。可能性として高いのは蓄積量か、時間」

「ギミックボスってことね...よーしちょっとやる気出てきた」


目の色を変えたカーメラルに霧島はため息をついて構える。

 この2人は自分を倒そうとしているが、全て無駄なこと...この泥仕合に自分ほどの適任はいないのだから。


※※※


数分前――警察署が襲撃されていることを知った結良は手袋を外して片手にある紋章を見た。


「日葵」


羽ケ崎は咄嗟に手を掴んで止めるも、結良は躊躇することなく紋章に力を込めた。


「大丈夫、まだ――」

「今日2個目じゃあないの」


結良の言葉より早く羽ケ崎は彼女の嘘を見抜く。

 女王のお願いは両手に1つずつ、そして最後の紋章は結良の胸部に刻まれている。

 今日結良は終始手袋をしており、今この場面で外したのは左手...利き手である右手にある文様は既に使っている可能性が高い。


「まだ2個目だよ。大丈夫」

「あなたが倒れたら――」

「みんな命かけてるの」


結良は止める羽ケ崎の手を振り払って真剣の表情を見せる。


「レイヴンメンバーも、今本部で戦ってる人達も...全員命かけてるの。私だけノーリスクとかあり得ないし、あってはいけない。今回の作戦は私が立案した。だから私だって命がけだよ」


懸賞金をかけられたことを気に色々なことが判明して、逆手に取った作戦を立案したのは自分。

 それによる被害は全部自分の責任...結良は自分の命が一番軽いとずっと考えている。

 羽ケ崎が命がけで国会テロ事件に向かっていった時―――自分はただ祈ることしか出来なかった。

 祈ることしか出来ない自分の命なんて...真っ先に駒にするべきだ。


「霧島 京華、今すぐ警察本部に現れなさい」


紋章が光り左手に若干の痛みが走る――そしてその命令が正常に実行されたことを感じ取る。

 すぐに通信機に霧島の声が流れ、彼女の判断ですぐに接敵したことを知る。


「霧島 京華、ウロボロスメンバーの確保及び、他メンバーの作戦行動に時間確保のため2人を確保しなさい」

『了解』


短い応答のとが終わると、結良はその場に力が抜けたように座り込む。

 女王のお願いの命令は本人が実行できると否は問わず、強制的に実現させる。

 だが、その命令の規模が大きければ大きい程、結良本人には疲労という形で反動を与える。


「作戦プランを修正してレイヴンメンバーに伝達しないと...」


振るえる手で携帯を取り出す結良に羽ケ崎は少し怒ったように携帯を取り上げる。


「自分のこと大事にしない日葵のことは嫌いだよ。日葵が自分のことどういう評価してるかは勝手だけど。私にとって日葵は大事な仲間だよ」

「ごめん...」


素直に謝る結良に羽ケ崎は少し安心して携帯を返す。


「こっちでもカバーする。だから最後までしっかりやろう」

「...うん」


戦いは既に始まってしまった。

 思惑がどうであれ、ウロボロスの拠点を制圧とメンバーを捕まえてないといけないことは変わらない。


※※※


「(私はあくまで時間稼ぎ)」


カーメラルとクリスを相手にしている霧島は2人の能力を考察する。

 逃げれる可能性を考慮するならどちらも可能ではあるが、2人ともいまいち能力がハッキリとしない。

 警察の体を乗っ取っているが、条件は?範囲が狭く視認の必要性がないと聞いている。

 視認の必要性がないということはかなりのアドバンテージであるため、距離と相まって条件もかなり厳しいものだと推察できる。


「(男の方は...)」


血液、もしくは体液が爆発する能力...と考えたいところだが、体液が爆発したというにはラグがあった。

 そして、爆発した箇所をよく見ても爆発は地面全体から起こっている。

 自分が立っていた局所的な部分が爆発性の何かに変わった...すると、自分の体液をかけた物質を爆発性の物質に変質させる能力と見た方がいい。


「クリス、あいつ全然ダメージ入らないんだけど!」

「時間も量も不足しているとは思えない...特定の攻撃に対しての免疫でもない...常時完全無敵とかあり得ない能力だ...」


突然現れどんな攻撃も通じない霧島。

 彼らの目的は警察組織の足止め、それは一応出来ているのかもしれないが、自分たちもまた足止め受けている状態でもある。

 第2の生命(リンカーネイション)を移送するまでにはまだ時間が必要...


「カーメラルお前の能力はどうだ」

「対象外...そもそも感情が読めない...私の能力に対しても抵抗してるみたい」

「精神的なダメージの耐性もあるのか?ますますあり得ない能力だ」


完全無欠...そんな能力はこの世に存在しない。

 人間は不完全なものであり、完全になることは出来ない。

 第2の生命が作用する仕組み的にも、人間は完全なる能力を発現することは出来ない。

 能力は...本人の渇望を歪に叶える。

 カーメラルが人の心を理解したいと渇望したように、自分が焼けるような痛みから身を守りたいと渇望したように。


「作戦会議が終わりましたら早めに投降することをお勧めします」


霧島が再び構えると、カーメラルとクリスは互いにアイコンタクトを送ってカーメラルが突進する。


「(あの男が爆発物を生成する時間を稼ぐつもり?)」


突進してきたカーメラルを軽々と交わしてクリスを叩こうとした霧島――だがカーメラルが追撃する様子はなく、そのまま立っている。


「今回は私の負け。次は勝つよ」


次?霧島の疑問より先に突然クリスが霧島に掴みかかる。

 瞬時に腕を折り突き放すが、彼は既に意識がない――あの一瞬で何かが起こっている。

 クリスと距離を置いた霧島は次の瞬間目が開けられない程の閃光に包まれた。


「なんだ?!」


警察本部の外に避難していた警察官たちは戦っていた場所が光ったと思ったら大爆発を起こし建物が倒壊している光景を目にする。

 建物にはもう霧島と犯人たちしか残っていない...そんな中建物が倒壊する程の爆発が起こってしまっては誰も生き残れない...


「ちっ...」


だが、崩れた建物から霧島が何事もなかったように出てきた。

 能力によってダメージを受けることない彼女以外、その周囲にいたクリスとカーメラルが乗っ取った警察官は死亡。

 クリスから離れた時――彼の手に何かが握られており、霧島がは瞬時にそれだけを回収した。

 だが、犯人を確保出来なかった失態に落ち込む霧島に、多くの警察官が心配そうにかけつける。


「霧島さん大丈夫ですか?!」

「はい、犯人確保は出来ませんでしたが...あの、すみません。何か服を貰えませんか?」


爆発と建物の倒壊に巻き込まれ、流石にまで守ることは出来なかった霧島。

 ほぼ全裸の状態でも恥ずかしそうな様子はないが、慌てて警察官たちが毛布を渡し、被害状況を確認する。

 彼女は唯一確保できた手掛かりの薬品の瓶を注視する。

 ラベルには「re-200」と書かれたいた。

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