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特殊犯罪対策課第6班  作者: ヒトノモドキ


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15/17

-14-女王のお願い(3)

警察署に潜り込んだウロボロスメンバーの1人、カーメラル・イベリカは思ったより収穫が少ないことにガッカリとする。


「(この人の階級だと見れる情報が限られてるし、上位階級でも1人で閲覧することは出来ない...思ったよりしっかりしてるじゃん)」


大規模なテロ事件が起きて国が揺らいだと聞いていた彼女は、組織内部もかなり欠損していると予想していたが、どうやら火事場の馬鹿力で色々と頑張っていたらしい。

 そもそも日葵の居場所についてはトップシークレット...この地区を統括している本部だとしても情報があるとは限らない。


「(なーんかちょうとでもヒントあればと思ったけど、思った以上に収穫なさ過ぎて面倒...これだから潜伏系のイベントは嫌なんだよねー)」


彼女はこの世全てをゲームとして考えている。

 この状況ですら楽しみの一つであり、現在警察署に潜り込んで情報を取得てしている段階は潜伏イベント...報酬が期待できないと踏んだ彼女は諦めてPCから離れて廊下を歩き始めた。


「(さて、この人の記憶でもあんまり有用そうなものはないし...いい能力もちを狙って略奪イベントといきますか)」


記憶から読み取れる情報で有用そうな能力を持っている人を探す。


「(大当たりは羽ケ崎 雅...3年前の国会テロ事件で主防犯を逮捕した能力。靭性(リマジン)変化(タフネス)これ特異1級ってなってるけど、災害指定クラスじゃあないの?)」


靭性変化は生物に適応されないが、無機物を一瞬で破壊することが可能な能力。

 そして、自分はどんな装備をつけていても中々壊れない最強アイテムへと強化することが出来る。

 こんな能力が災害指定されていないことに疑問を感じるのと同時に、不可解な点がもう1つある。


「(ってこの能力でどうやってテロ事件の主防犯に勝ったの?)」


主防犯の能力はこの記憶にはないが、災害指定特異1級であり攻撃性能があり得ない程高い。

 ほぼ単独で国会どころか都市1つ制圧可能な能力であったことが分かるが...どう考えても羽ケ崎の能力で制圧まで至ることが出来ない。


「(まあ、でもこの本部にはいないか...あ、あとあのカッコイイお兄さん強化能力者じゃあなかったの?!すごっ。しかも能力もめちゃくちゃ強いじゃん。あーあー惜しいことした)」


強キャラを逃がしたことに惜しみつつ、戦闘向きの能力者を探す。

 案外人を負の感情に陥れるのは簡単...恐怖。

 人は死に対して絶対的な恐怖を覚え、逃れようとする。

 命に手がかかる状況さえ作ってしまえば...人は自然と恐怖という負の感情で状況を打破しようとする。


「(さて――一応候補は強化系、あと物質操作系も悪くないね)」


ゲーム画面で操作キャラクターを選択するように...彼女はとても嬉しそうに警察署内を歩く。

 制限時間を20分残して、早々にご褒美に取り掛かったウロボロスメンバー。

 結良は手段であって目的ではない...第ニの生命(リンカーネイション)その確保が最優先だ。


※※※


「うん、了解...」


突然かかってきた電話に出た結良はため息をつきつつ指示をして電話を切る。

 どうやら相手はレイヴンメンバーらしく、アジトを掃討する過程で新しい情報を手に入れたとのこと。


「悪いニュース。ウロボロスは攻撃班が1つ日本で活動するために潜伏してたみたい」

「班?」

「ウロボロスは最低4人以上で構成された1つの班で行動する...日本で何かをするために既に上陸して準備をしていたみたい」

「日葵とは別件...ってこと?」

「そう、元々潜伏してたのが今回の事件で明るみに出てしまって行動せざるを得ない状況になったみたい」


ウロボロスは出所不明の莫大な資金を所持している。

 過去国外で起きたテロでは賄賂を渡して政治家を買収し、逃走まで完璧に成功させた。

 その時渡した金額は議員報酬6か月分相当だったとの噂もある程巨大な力を持っているが――強行策をいくらでも建てられる組織が、長い時間をかけて潜伏して活動していた理由が全く分からない。


「計画変更、早めに打って出た方がいいかも」


日葵は立ち上がって出かける準備をする。

 その姿をみて羽ケ崎は眉をひそめてため息をついた。


「...日葵。今回の護衛のためにうちのメンバーにも結構無理させてる。現に静はこれ以上能力は使えない。これで計画変更したら私結構怒るよ?それでもするの?」

「うん。雅ちゃんが気が済むなら何でもする。でも計画は変更するよ」


ウロボロスが実際に潜入しており、その目的が結良の確保でないことが判明した現状で計画変更はもちろん合理的だ。

 だが、現状でかけたコストを全て見捨てる策であることも確か。

 結良の計画に巻き込まれたのが羽ケ崎だけなら彼女もここまで言うことはないが...メンバーに無理を強いてしまった以上簡単にYESとは言えない。


「...はあ」


だとしても、現状で誰も結良を責めることは出来ない。

 状況に対して誰よりも先に打って出て脅威を出来る限り排除しているのは間違いない。

 今までかけたコストのせいで身動きを制限するより、状況に応じてある程度の切り捨ても判断するのが得策。

 全て上手くいくことなんて...現実ではまずあり得ない事象だということは羽ケ崎が自身が一番よく知っている。


「日葵の奢りでご褒美買ってね。どう出るの?」

「とりあえずウロボロスの班を特定したいところだけど...ウロボロスの情報網は特殊でね...おそらく能力絡み」

「矢崎くんみたいな能力者がいれば、第3者の干渉は難しいね」

「正直ウロボロスが長い間潜伏していた巣穴から出てきた理由が分からない...懸賞金がトリガーなのは確かだけど」

「...」


ウロボロスはそもそも日本に長年潜伏しており、何かの準備をしていた。

 だが、今回耐えかねず出てきたのは――結良に莫大な懸賞金がかかり裏社会にも大きく揺れ動く波紋となったから。

 結良がウロボロスの潜伏先候補としてアジトを絞りきれたのも今回の騒動が原因であり、想定とは違うが確かにその巣穴にはウロボロスが居た。

 だとすると――今回結良の懸賞金騒動は「結良の確保」が目的でなく、ウロボロスの巣穴を突かせるのが目的だったのでは?

 ウロボロスの目的を何らかの形で妨害することで利益を得るものが存在する。


「企業連盟がウロボロスの存在を感知していて、私たち警察にウロボロスを妨害させたと仮定しても、リスクが大きすぎると思う」

「懸賞金なんて出したら簡単に追跡できるからね。それを度返しに出来るぐらいの利益は正直想像できないかな...」


企業連盟も自爆覚悟としか思えないが...正直現状では仮定することしか出来ず、どうにか情報を1つでも多く獲得する必要がある。


「出るにしても目的は明確にして、むやみに出ても懸賞金騒動はまだ続いているから...ウロボロス以外の組織から狙われる可能性は否定できない額だよ」

「そうだね...とりあえずアジトを1つでも多く潰して情報を確定――」


結良の言葉の途中、通信が入った羽ケ崎は言葉を止め口の人差し指を当てる。

 通信内容は矢崎の能力によるものであり、しばらくそれを聞いた羽ケ崎は目を丸くして驚く。


「結良...レイヴンメンバーすぐ招集出来る?」

「近い人は最短3時間...どうしたの?」


拠点は国内の様々な場所に点在しており、ダミーも多く存在しているため、レイヴンメンバーは7名はある程度別れて行動している。

 それを聞いた羽ケ崎は頭を抱えて結良に伝える。


「...警察本部が襲撃された」


※※※


10分前――凄まじい爆発音が警察本部4階で響き、被害が出た一室を機動隊員が包囲。

 能力が不明の段階ではうかつに手を出さないのが鉄則...燃えるオフィスに居た人達はおそらく即死――スプリンクラーで炎が収まる室内に見える2名...その周りには肉が焼ける不快な匂いが漂っていた。


「避難誘導は?」

「6割完了してます...」


隊長が避難状況を確認し、盾を構える中――オフィス中央に立っている人物の1人に目を丸くする。

 本部に所属している警察官の1人...その方割に立つ異様なまでに白い肌と病的にやせ細った体の男性は見覚えがない。

 警察官がテロを起こした?そんな考えが過る中、警察官は隊長を見て手を振る。


「おーい、入ってこないの?まだ誰か生きてるかもよ?」

「はあ、こんな状況で誰が生きてると思うんだ。だから1人ぐらい人質にって言っただろう」

「あークリスが失敗したのに私に責任転換するんだ!酷くない?!」

「お前が派手にぶっ放せとうるさいからだろう...全く、後先考えないのはもう少しどうにかしろ」


2人が会話している間、隊長は周囲を固める。

 爆発はクリスと呼ばれた男の能力であることは断定できる。

 隣にいる警察官はこの本部に所属している者で間違いない。

 だが――まるで別人に入れ替わっているよう言動...これも能力によるものなら――


「全員衝撃に備えろ!」


隊長の命令で隊員たちが盾を構え部屋をから少し後退する。

 すると、部屋の入口の全てに液体のようなものが流れ瞬時に硬化――2人の行動より一瞬で密室が出来上がった。


「ちっ...」


クリスは舌打ちをして指を少し嚙み切ると血を入口に向かってかける。

 血がついた箇所は徐々に赤くなり突然爆発――入口が突破されかと思ったが――


「硬いな」


入口は傷一つなく、クリスはため息をつきながら止血する。

 謎の物体に近づいて触るカーメラルはゆっくり目を閉じる。

 記憶ではこの能力は機動隊員の1人の物質を液体として取り込んで操る能力。

 液体の硬度は元の物質依存のため、爆発に耐えられるように別の能力で強化している模様。


「仕方ないな...まあ、今のキャラよりはいいか」


能力の範囲から考えてもこの液体の向こうにいるのは間違いない。

 カーメラルの能力は目視する必要はない...必要なのは負の感情がどれぐらいその人にあるか。

 この事務室にいた全員が死んでいる状況...そしてそれをやったのは警察官――いくら機動隊員だとしても、そんな状況で心を強く持てるはずもない。


「みーつけた」


カーメラルの声が響いたと同時に入り口を塞いでいた者を乗っ取り能力を解除する。

 これで反撃開始――そう思った矢先、カーメラルは強烈なタックルを食らいそのまま部屋に戻される。


「塞ぎ直せ!」


機動隊の隊長が乗っ取られた隊員とともに自分もろとも部屋に閉じ込めた。

 そして、カーメラルを入口から遠さげ臨戦態勢になる。


「いった!マジこのおっさんイカレタる!タイマンとか勝てないっしょ!」


隊長の能力は把握している。

 特定の電気機器の性能を増幅させるというもので、決して戦闘向きでない。

 だが、隊長は臨戦態勢のまま再び塞がれた入口の向こうに叫ぶ。


「壁から5m以上離れろ!もう1人の能力は目視することなく体を乗っ取れる!」

「(ちっ...感いいじゃん)」


入口で倒れているもう1人の警察官の位置、そして新たに乗ったりした機動隊員の位置からおおよその能力範囲を絞っている。

 隊長を倒すか乗っ取りしない限りこの状況を打破することが出来ないと思ったカーメラルは、気は乗らないが隊長の体を乗っ取って開けさせる方向に。


「!」


だが、隊長はこの状況でも付け入る負の感情がない。

 覚悟している...何をされてる、例えここで死ぬとしても――ここで自分たちを絶対止めると覚悟している。


「キモ...なんでそんな必死なの」

「必死...?それりゃあそうだ...俺はな...一回こういう状況から逃げてるからな」


3年前の国会テロ事件...当時機動隊員として現場に向かった隊長。

 だが、現場は想像以上の地獄――上層部も混乱し行動決定がなされないまま、中継先では命乞いをする議員を次々と惨殺する犯人たち。

 人質に取られた人が狂乱し逃げ出そうとしてもそのまま射殺され、その状況は全て生中継されいた。

 国会議事堂を包囲する機動隊員たちにもその生々しい悲鳴は届き、誰もが絶望していた時―――当時の隊長が全責任を自分が取るため、一緒に突入する人を募集した。

 その時彼は恐怖のあまり手を上げることは出来なかった。だが、自分の同期や先輩の多くが手を上げ、そして誰一人帰って来なかった。

 仲間たちが突入する中――能力が向いているからと、率先して走り出した人の1人がいた。

 羽ケ崎 雅...警察官になりたての彼女含め多くの仲間が死地に飛び込むのに誰一人臆することは無かった。


「俺はずっと後悔してたんだ...あの時一緒に行けなかったことを。ここで逃げたらもう俺は一生逃げ続ける人生なんだ!それは死ぬことより恐ろしいことだってこの歳になってやっとわかったんだよ!!」


3年間ずっと悔いていた。

 自分が行っても何も変わらなかったかもしれない。だが、それはあの場にいた誰もがそうだった。

 彼は恐怖で逃げてしまっていた。

 もう一度そんなことをしてしまったら...自分は警察官どころか、この先どんなことからも逃げてしまいそうだと。


「無駄に熱いおっさんは嫌いなんだよね...ぶち殺し決定で」


カーメラルがイラつきながら身に着けていた拳銃を構える。


「はい、無駄死にご苦労、バイバイ」

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