アーサーの結婚式。
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王城の廊下を少し早足でベンジャミンは目的地に向かっていた。時刻は御昼過ぎで陽が少し頂点より下がり始めているがまだ暗いと言うほどではないが、午前中より影の多くなった廊下をベンジャミンは突き進んでいた。
目的の扉の前に着くと警護の騎士達に中の人物に呼び出された事を伝えると、無言でうなずき入室確認を扉越しに行いしばらくすると入室許可が出たので、警護の騎士がゆっくりと扉を開いた。
「殿下、お呼びとの事で参りました」
「急に呼び出してすまないね、ベンジャミン先生。こっちに座ってください」
「いや、殿下。今日は授業の日では無いので”先生”はおやめください」
「全く、まあいいか。ベンジャミン、正式に明後日には辞令が下りる事になった。急に人事部から言い渡されると困ると思ったのでこちらで最初に伝えたのだ。おめでとう、これで正式にポートトレビスの代官だ」
トーラリオン王太子が元気よく代官就任祝いを伝えている一方ベンジャミンは見るからに落ち込んでいた。最終的に王太子の前にも関わらず大きなため息を吐く始末だった。その様子を見てトーラリオン王太子も小さくため息を吐き言った。
「なぜ君たち兄弟は貴族への陞爵や出世に後ろ向きなんだい?普通、嫡子ではない貴族の子女は他を陥れてでも取りに来ると思うのだが?」
「カインも私もとても名誉な事である事は重々承知しておりますが、それに付随する面倒ごとの方に対応する事を考えると気持ちが後ろ向きになるのです。やはりご辞退する事はかないませんでしょうか」
「無理だな」
ベンジャミンの願いをトーラリオン王太子はバッサリと切り捨てるのであった。その言葉を聞きベンジャミンは漸く観念したのか、その場で片膝を突き右手を胸に当てて「ありがたき幸せにございます」と絞り出す様にポートトレビスの代官就任を承諾したのだった。
儀式?が終わりトーラリオン王太子の向かい側にベンジャミンが座ると先ほどまでは部屋の中にいなかったメイドが二人の前に香茶とお茶請けのビスケットを置いてまた、部屋の中から消えたのだった。トーラリオン王太子の【魔法】の師として教え始めた時は驚いていたが今では考えない様になっていた。
「トーラリオン王太子、就任日はいつになるのでしょうか?ポートトレビスまで馬車で移動すると1カ月半はかかると思いますが…」
「就任日は来月の中旬だ。ちなみに人事部からの辞令は今月の中旬に降りるから再度登城する様に、私も引継ぎの為にポートトレビスに一緒に向かうので安心しなさい」
「…あの、計算が合いません。それにトーラリオン王太子が1カ月半もこの時期に城を離れるのは問題かと?」
現在先日発表された酷寒期の対応で王太子には、食料と燃料の確保及び復興の指揮という重要な仕事を割り当てられたばかりだったのだ。城内の噂では法衣貴族の半数が酷寒期が本当に来るのかを怪しんでいて中々思う様に準備が進んでいないと言われている。
「それは大丈夫、私の居ない数日に不要な膿を出す手はずになっているからね。あっちなみに出発まで口外禁止ね、もし口を滑らせたら私でも庇いきれないから」
「しょ、承知いたしました。それよりも数日というのは?やはりポートトレビスにはいかれないという事ですか?」
「もう、私も体験しているから大丈夫だよ。ハイエルフの知人の力を借りて移動するんだよ、だからついでにベンジャミン先生の実家によってお兄さんの結婚式にも出席させてもらうよ。友人としてね」
ベンジャミンはがっくり肩を落としつつ「承知しました」としか答える事が出来なかった。そして次にトーラリオン王太子が言った言葉に撃沈されるのだった。
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