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朝日が昇り人々が一仕事終え手を休め仕事仲間たちと短い談笑を楽しんでいる。まだ朝夕は冬の冷え込みが残るが太陽が昇ると
春がもうすぐそこまで来ている事を感じるポカポカ陽気の中、カインは目の前に広がっている景色を見て眉間にしわを寄せていた。
「ララさんや…これは何かねぇ…」
1か月の昏睡状態から目を覚まし半月の外出禁止中、可愛いい妹のリファに会いに行く以外楽しみが無くカインはララと『ご隠居』ごっこで
楽しんでいた。設定はカインが元大商店の商会長で隠居した老人、ララが老人の秘書兼身の回りの事をする侍女役だ。ララとしては通常の業務と
あまり変わらないが、口調と若い新人の設定なので老人役のカインに公然と“甘える”事が出来役得だと思っている。
半月も続けカインとしてはかなり楽しかったのもあり、ララと話をする時の口調が戻らずにいた。
「はいっ、ご隠居様。こちらは先日出来上がりました“温室”ですっ」
「うん…それは見ればわかるのじゃが…って大きすぎない?計画だと小さな倉庫(広さ10畳ほど)くらいじゃなかった?!」
「はいっ、ご隠居様のご記憶通りですぅ。ご隠居様ぁ、口調が戻ってますぅ」
「あっ、う、うん。どうして計画が変更されてしまったのじゃ?予算の関係で大きくしたいが出来ないと言っておったはずじゃ?」
カインとララが『ご隠居』ごっこの口調のまま、温室の前で話をしていると夏でもないのに麦わら帽子をかぶった農家のいで立ちの
ザインが温室の中から扉を開けて出てきた。
「ああ、カイン様。もう外出禁止令は解けたのですか?」
「えっ?ザインさんっ!なんですかその恰好はぁ?」
いつも貴公子とまではいかないが、ハイソサエティの香りを感じる服装のザインが麦わら帽子に首から手ぬぐいを下げ、少し泥でほほを汚し
簡易な服装で現れたのでびっくりして大きな声が出てしまった。
「どうです、似合うでしょう?いま、この中でストロベリーやトマトなどの野菜の試験栽培を行ってまして、はははっ」
「ザインさんがっ?なぜに農作業を?」
「あれ?カイン様には共有されてない?…まあ、そのうち伝わりますから中で説明しましょう。ここは少し寒いですから」
ザインは腕を組み右手の人差し指をほほに持っていき、何かを思慮するポーズを取った後にっこり微笑みカインを温室の中へと
案内をした。温室の大きさはテニスコートを縦に2面ほど並べたくらいの大きさがあり、両サイドと真ん中に柱を並べ屋根を半円にした
まさに地球時代の農業のニュースなどで出て来ていたビニールハウスだった。
ザインはカインとララを温室の入り口近くにあるテーブルに案内をして着席を促す。温室の中は想像通りに温かく外気15~16度くらいの
長袖が欲しい気温に対して、23~25度くらいの半袖でも動くと汗ばむのではないかと思う暖かさだった。温室の奥に向かってイチゴの
苗が少し高めの畝で栽培されており、奥の方にはトマトなどの苗も見える。それらの苗の周辺には数人のエルフの男女が収穫や水やりなどの
農作業をしていた。
「カイン様、元気になられて本当によかった。こちら外で少し冷ました香茶になります」
カインの前に小さめの木のコップに入った香茶を配膳した女性がカインに話しかけてきた。
「えっ、メリダさん?メリダさんも一緒に農作業をしているのですかっ!お店は?」
「そんなに私が農作業をしているのが珍しいでしょうか?魔道具店の方は店番を他に雇いまして、と言っても受付だけですが。
日中はザインが温室で作業をしているので通っているうちに農作業を手伝う様になりました。だって若返ったと言ってもこちらは
王都より少し寒いのでしょう。この暖かい温室で過ごすようになったらより元気になりましたの」
メリダは目を細めながら微笑みとても楽しそうに答えた。確かにサンローゼ領街では寒い冬は暖かい部屋に集まって過ごすためか
外出が減る。買い物などの回数も減る傾向にあると以前誰からか説明をされたのをカインは思い出していた。
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