第17話 ペルセウス・ヒューマン・シアター
「遅いなあ、ペルセウス。手こずってんのかな……」
さてと。
見事メドゥーサの首……、
ではなく、美女蛇たちの首を取ったペルセウスでありましたが、
「なーんてね、嘘だよ。ねえ蛇さん、僕は君たちみたいな残虐非道な奴らがいっちばーん嫌いなんだ」
「はあ……」
「ギャッ……。今、今、『はあ』って言った? 言ったよね、確実に。ってことは……、な、なななん生首が喋ったっ? ご、ごごごごめごんなさいっ、もうしませんからー」
「バカだね、あたしだよ」
そうです。物分かりの良い読者のみなさんお察しの通り、「はあ……」と声を出したのは、美女の生首ではなく、メドゥーサのほうだったのでございました。
「なあんだ、君か」
「何はともあれ、奴らを斬ってくれてありがとうよ、勇者さん。あたしゃ、おかげで助かったよ」
「なんのなんの、お安いご用ですよ。だってあいつら、鼻持ちならなかったんだもん。……あ、比喩だよ、比喩。もちろん、香りは君の何億倍も甘くて綺麗で、君のそれとは天と地底の国ほどの差があるんだけどね、人間も怪物も、大切なのは心の香りのほうで、あいつらはそっちが鼻持ちならなかったんだ」
「……」
「え、なんかひどいこと言った?」
「……そう言うのは、あんた、その自覚があるからだね」
「あ、もしかして、睨んでる? 僕はもう、石にされちゃう感じ? 助けたのに?」
メドゥーサは一瞬迷ってから、
「なわけないじゃないか、はは……、ということに」
「そうだよね、あはは……。僕は君って、すごくいい怪物さんだと思うよ。もちろんそれは、さっきの美女たちがえげつなかったからってのもあるけど。一番ひどいのはあいつだね、アンドロメダに似てたやつ。なぜかって? そりゃあ、僕の好みの容貌を、汚い言葉で穢したんだもん。……ねえ、僕は本当に、そう思ってるんだよ、君はいい怪物さんだって。だから、本当は……、でも、ごめんね」
ずしゃっ。
「うっかり君に石にされちゃったらたまらないし、なんてったって、アンドロメダからのお願いを断るわけにはいかないもんね」
そうして勇者ペルセウスは、切り落としたメドゥーサの首を持ち、洞穴を後にしたのでございました。
いえ、その前に。
「待っててね、アンドロメダ。僕の恋人」
先ほどの美女を拾い上げ、律儀に挨拶をしていったのでございました。
「早く来てよう、こっちはこっちで大変なんだよーう」




