最終対決(C)
⑥炭素です。
「あいつら?」
「ええ、地獄界の連中です。愚鈍裁判官などと呼ばれているやつらなんですが、こいつらときたらろくに調書も確認しないで、私たちの仲間(天使)に無期懲役の判決を下したのですよ。わかりやすくいえば、終身刑ですか」
「終身刑? 天使にも寿命があんのか?」
「ありますよ。通常であれば人間の十倍生きられます」
「長生きするなあ――で?」
「ただでさえ天使界と地獄界には軋轢が生じていたのです。なのでこの際は法廷だけでなく、武力でも黒白を争うことに決めたんです」
「なるほど……。きっかけがあればいつでもやるぞ、という気構えだったわけだ」
「一触即発というやつですか。それで『あの大戦争』を仕掛けたわけですが、結果は無念の惨敗。私は天使界の敗走時に殿を務めたのですが、ちょうどそのときに師匠に出会ったのです」
「ほう……?」
「師匠は私に、『独立か死か』と尋ねてきました――。私はすぐに、なるほど『イピランガの叫び』かと理解しました。しかし『独立か死か』は日本語でいうところの、『いざ鎌倉』のように使うはずです……。ではこの人の意図はいったいなんなのか? そのように考えました」
「…………で、ムンクの叫びがどうしたって?」
「師匠はつまり、霊界(天国界、地獄界、天使界、悪魔界、神世界)を一つにまとめようとしているのです。天下統一というのでしょうか」
「へー、それは難儀だ」
「そういう意味での『独立か死か』だったのです。霊界を一つにまとめる(独立)か、ここで死ぬか、二者択一を迫られました。生き残るために私は独立を選び――そういう経緯で彼の軍門に下ったのです」
「ふーん、それじゃあ因縁はないな」
「いいえ、因縁はあります」
そして畄嗣覇阿はいった。
ごく当たり前に。
「私という優秀で右に出るものがいない、他の追随を許さぬほど完璧な弟子を所有していながら、自縛霊という悪魔界でも最底辺に位置するような下等種を、なぜこの期に及んで弟子にしたのか」
「仲間は多いほうが良いからじゃねーの?」
「許せません――犬飼颱が許せません。私と同列だなんて、絶対に認めません」
「お前って自意識過剰だろ? ウザッてえな。だったらその氷柱みてーに伸びた鼻を、いまからへし折ってやるよ!」
「お望み通りにやってみなさい。望むところですよ」




