最終対決(B)
⑤ホウ素です。
まずいな、と欲張り詐欺師は自らのトラップが崩壊しているのをひしひしと感じていた。このまま警戒されでもしたら、すべては元の木阿弥になってしまう。どうしたものか……。
【もういっそのこと小細工はやめて、実力勝負に賭けるか? ――しかし、勝率があまりにも低い】
【このままバトルにもつれ込めば、確実にやられるてしまうだろう】
【どうすればいい……?】
【そういえば俺も変わったよな。前までは日和見主義の平和主義者だったのに、自縛霊のやつが、助力はあったにせよ、怒れる獅子に勝ってしまうんだからな】
【なかなかうまくいかないものだ】
――あまり長く沈黙を続けると、畄嗣覇阿の言を認めたことになってしまいかねない。
犬飼颱は仕方なしに、痛いところを質問した。
「では逆に訊かせろ! スマホもない通信機器もない、この状況で俺はだれと会話が出来るというんだ?」
「ですからただの推測です。あるいは邪推でしょうか」
「ふん。痛くもない腹を探られて、こっちは良い迷惑だけどな」
「失礼しました」
形式上だけはとりあえず謝罪をする一番弟子。しかし、油断のない面構えになっている。
「因縁についてですが、それはそれはもうとにかく、端折って端的に申し上げますね」
畄嗣覇阿から柔和な表情は消えている。どうやら宥和政策をやめたようだった。
もちろん最初から譲歩するつもりなどはなかったのだろうが。
「ああ、手短に頼む」
「――私と師匠との出会いは敵同士としてでした。人間界に寄生していた犬飼颱くんは知るはずもありませんが、昔、『あの大戦争』がといわれる小規模な争いがありました。小競り合いというか――ちょっとした衝突があったのです」
「知らねえな」
「冗長になるので、相づちは不要です」
鹿爪らしく彼女は遮り、そして続ける。
「『あの大戦争』などと仰々しい名前こそつけられていますが、結果は悲惨なもので、私たちは本当になすすべもなしに敗走を喫したのです」
「どうでも良いことかもしんねーけどさ、お前はだれを率いて、どこと戦争をしたの?」
暗に口をはさむなと注意されていたので、このような疑問など柳に風と受け流されるのではないかと、犬飼颱は心配したのだが、
「失念していました。犬飼颱くん、ご指摘ありがとうございます」
と、畄嗣覇阿は素直に非を認めた。
「私はその頃はまだ天使だったので、天使界の者を率いて地獄界に攻め込みました」
「なんで?」
「冤罪――とでもいうのでしょうか。いいえ、冤罪では物足りません。あいつらの下した誤審はそんなものでさえなかったのです」




