表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/105

犬飼颱の暴走Ⅱ

 ただし――

 それは食いしん坊が、元弟子を殺そうとしているからではなかった。

 技のちがい――である。

 チョークスリーパーではなく、スリーパーホールドを用いたということは、すくなくとも致死性は弱まるということだ。

 スリーパーホールドが試合に勝つ技ならば。

 チョークスリーパーは試合に負ける反則技である。

 ――とはいえ。

 総合格闘技ではチョークスリーパーは使用可能だし、そしてなにより必殺技であるのだが。

 必ず殺す技なのだが。

 部僂是武舞は、あえてスリーパーホールドを選んだ。

 良くも悪くも。

 殺さずに――気絶させる方法を選んだのだった。

 犬飼颱の顔が真っ赤に染まる。血管は浮き出て、空咳までしている。

 目もうつろになってきた。

「このままだと、やられるな」

 欲張り詐欺師は、不器用な恋愛感情を心配そうにみつめているが、しかしそんなことはお構いなしに、婀崇姆出嫗朱は眠ったままであった。

 要は――憑依したまま。

 能力を使ったまま。

「取り憑いたはずが、取り憑かれたのか? もしくは取り疲れた」

 婀崇姆出嫗朱の能力は、乗っとるというよりは、乗っかる技。

 相乗であり、累乗である。

 かけて、かけて、無限大。

 もしも掛けるものがなくなったら――

 もしも賭けるものがなくなったら――

 犬飼颱の父親がやったように。

 だれかの生命を賭けるしかなくなるだろう。生命といっても、魂といっても、それは霊魂なのだが。

 乗っ取った側――婀崇姆出嫗朱。

 乗っ取られた側――犬飼颱。

 どちらかの生命を賭けなければならなくなる。

 だから不器用な恋愛感情は、なるべく早めに憑依をやめるべきなのだが。

 そうはいかないのだろう。

「若さゆえに制御不能か。地縛霊も恋愛感情も……」

 呟いて、後ろを振り返る。

 グランドピアノを演奏している彼女をうかがう。

 と、歌っていた。

 歌を熱唱していたのだ。

 その曲名は萬捫にはわからなかったが、ピアノの伴奏を主体とするバラード曲であることはたしかだった。

 スタンドマイクを使用して、館内に響くように歌っているのだ。

「…………」

 なにか企図があるのか?

 それともただ単に気分が乗ってきただけか?

 いやいや、余計なことを気にしている場合ではない。

 このまま二人がバトり続けたら、(アイツ)が死ぬ。

「うっ……。ぐっ……」

 果たして。

 (アイツ)は倒れた。

 いわゆる窒息状態だ。

 呼吸が浅くなって、顔が青ざめている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ