《番外編:ヴァレン&エルヴィラ》
「きゃー!セラフィーちゃん、とても可愛いわ」
「……少し肌を露出し過ぎてるんじゃないか?」
「これも似合うわね!」
「少しスカートの丈が短すぎないか?」
「もう!なんなのよ、ヴァレン!!私の楽しみの邪魔をしないでよ!」
私は今日、贔屓にしている仕立て屋に、セラフィーちゃんを連れてきている。
この日をどんなに待ちわびたことか!
綺麗系な私と違って、可愛い系のセラフィーちゃん……私には似合わないドレスを着こなすセラフィーちゃんが可愛すぎて、もうお姉さまとしての欲求が止まらないわ。
私の幼いころからの夢……可愛い妹を着せ替え人形のごとく着飾ること──
生憎、可愛げのない弟しか恵まれなかった私の夢がとうとう叶うの!
なのにヴァレンまで付いてきて、あーだこーだ喧しいこと。
セラフィーちゃんも苦笑いよ。
公爵夫人ならば、社交界の流行も自らが作っていくものよ?
自分はドレスやら装飾品やら贈りまくっているくせになんなの?
図体と態度ばっかり大きくなっちゃって……
幼い頃は、それはそれは可愛かったのよ?
大きな氷青の瞳で『エルヴィラ姉様』とか言っちゃって!
それがいつの間にかなに?目は鋭くなるし、私のこと呼び捨てにするし──
そんなヴァレンが改まった様子で執務室に現れたの。
「──折り入って、頼みがある」
冷静さを装ってはいたけど声も固くて切羽詰まった様子。
セラフィーちゃん関係の話だと、私にはすぐに分かったわ。
我が弟は、そうそう人に頼るタイプではないもの。
ヴァレンは一瞬、言葉を選ぶように視線を彷徨わせてから、ようやく口を開いたわ。
「セラフィーのことだ」
「あら、順調なんじゃなかったの?」
やっぱりね。
周りから見ればお互い好意があったのはバレバレ。
先日ようやく想いが通じ合ったと聞いたばかりなのに何があったの?
「セラフィーはなぜか、リリアーナ・ローゼン嬢が俺の婚約者ではないかと思っている。俺がいくら『そんな事実はない』と言っても、セラフィーの不安は消えないようだ」
「……どういうこと?」
「ローゼン家とドラヴェン家の間に、家同士で決めた約束があるんじゃないか……セラフィーは、そう思っている節がある」
ヴァレンは小さく溜息をついた。
リリアーナ・ローゼン。
いつもヴァレンの横に立って優越感に浸っていたあの女ね。
はっ!もしかして、あのお茶会でなにか余計なこと吹き込まれたんじゃない!?
もう何してくれてるのよ!これで2人の仲がこじれちゃったらどうするの!?
「俺の言葉だけでは足りない。家として、ローゼン家とそのような話は一切ないと、はっきり言えるのは──ドラヴェン家の人間である、エルヴィラの力が必要だ」
「……」
「セラフィーはエルヴィラを信頼している。頼む、俺と一緒にセラフィーに話してほしい」
普段は誰にも頭を下げないヴァレンが、私に対して深く頭を下げた。
セラフィーちゃんのことになると、本当に必死ね。
「──分かったわ。可愛い義妹になる子のためだもの、一肌脱いであげる」
「すまない、恩に着る」
「その代わり!今度、私が選ぶセラフィーちゃんのドレスとかに、ひとっ言も文句、言わないでよね」
「……検討する」
「そこは即答しなさいよ!」
いつもの調子を取り戻したヴァレンに、私はつい口元を緩めた。
それから2人で、必死でセラフィーちゃんに説明したわ。
そもそも、うちの父とローゼン公爵は年齢も近いせいか昔からライバル同士。
そんなに仲良くもないのよね。
セラフィーちゃんも納得してくれたようで安心したわ。
一件落着!円満解決!!
なのに……なのに、なのに!
「こんなに高いヒール、足が痛くならないか?」
本当にこの男は!
少し黙りなさいよ!!




