皇女の秘密、皇帝の秘密
少しの沈黙の後、陛下が口を開いた。
「エーファンゲリン、私はそなたに謝らなくてはならない」
「と申しますと?」
「今まで、公務の多忙でそちらを優先するあまり、家族としての時間を持とうとしてこなかった。セリーヌやベスティアン、ナルツィス、アゼリア、マッティオに対してもそうだ。皇族としての立場ばかりを重んじていた。本当に申し訳ない」
「仕方のないことです。国をまとめるには皇族が働かなくてはなりませんもの」
「それは確かにそうだが、国民を大事にするには己や己の家族をまず大事にしなくてはならないと気付いたのだ。それも、そなたによってな」
「そうなのですか?」
「ああ。昨日の測定で風船が割れて魔力が噴き出した時、そなたは私や他のものに危害が及ばぬよう、無意識に魔法を発動したのだろう。それを見たときに気づかされたよ」
「まあ…」
「それで、そなたに聞きたいことがある。
皇帝としての立場ばかり優先してきた私を赦してくれるか?
私的な場だけでも、そなたを『エヴァ』と呼んで良いか?
私を『父』と呼んでくれるか?」
陛下のこんな姿、初めて見た。
「赦すだなんて…。
私もずっと『エヴァ』と呼んでほしかったんです…。
『お父様』!」
嬉しい。遂に言えた。
やっと父娘になれた。
「それから、エヴァに打ち明けることがもう1つある」
「お父様、それは何ですか?」
えっ?
どんな秘密を抱えていらっしゃるの?
「実はな…。
私には前世の記憶がある。
『日本』という国のとある会社で係長をしていた。
その時の名前は、高橋宏一という」
ええええ?!
お父様も転生者?!
前世の会社って、もしかして…!
「そうなのですね?実は…。
私にも前世の記憶があります。
佐藤真悠子、という名前でした。
突然いなくなって申し訳ありませんでした。
『高橋係長』」
「!!やはりエヴァは『佐藤さん』だったんだな。
私の予感は正しかったようだ。
今世で再び会えるとは、嬉しい限りだ」
私たちは再会を喜び合っていたが、そろそろ御前会議の時間だ。
執事頭がお父様を呼びに来た。
「そろそろ会議に行かなくては。
今後の事は後々話すとして、エヴァは今日一日ゆっくり休むと良い」
「ありがとうございます、お父様。
行ってらっしゃいませ」
それにしても、今日は驚きと嬉しさでいっぱい。
前世で尊敬していた人が、今世は本当の家族だもの。
こんな風に、皇后陛下や他の殿下方とも家族になっていきたい。
ゆっくりでいいから。
お読みいただきありがとうございます。
ようやく、父娘としてのスタートを切りました。




