いったい誰が助けてくれた?
エヴァが前世を思い出す前後の話です。
主にナルツィス視点ですが、別視点もあります。
私はナルツィス・フォン・ローゼンブルク、この国の第2皇子だ。
一昨日から、2週間ほど前に起きた北方の崖崩れの復旧にあたっている。
物心ついた時から「皇族たる者、国民よりも魔力が多い分たくさん働かなくてはならない」と教わってきているから、このくらいは当然。
災害現場周辺の住民の生活を取り戻すために、一刻も早く復旧させなくては。
自分の魔力をつぎ込んで、崩れたところを元に戻していく。
それにしても、住宅被害が広範囲に及んでいたな。
今やっと終わったところだ。日数もかかった。
あとは取りこぼしが無いように入念にチェックだ。
サーチをかけて…。
よし。
もう大丈夫だ。
でも、住民たちに直接確認しないと。
「皆さんの家の中で、土砂がまだ残っているところはありませんか?あったらすぐに対処します」
手が挙がる様子はない。
「問題ありません。先ほど確認しましたが、土砂が残っているところは1つもありません。私共皆が殿下のおかげで安心して元の生活に戻れます。ありがとうございます。本当に感謝してもしきれません」
「それは良かった。
皆さんも、お体には気を付けてください。
私はこれで失礼します」
住民たちが、帰途に就く私を手を振って見送ってくれている。
住宅には保護魔法をかけておいたから、何かあっても大丈夫だろう。
やっと城に着いた。
復旧に約3日もかかったからか、疲労感がやけに大きい。
「フェリックス、この後の予定はどうなっている?」
念のため、専属執事のフェリックスに確認をとる。
「皇帝陛下へ結果報告をする以外にはございません。
私が対応しますので、殿下はお休みください」
「そうさせてもらう。
それと、この報告書を陛下に渡しておいてもらいたい。
私はこの辺で休憩してから部屋に戻る」
「かしこまりました」
今回の災害復旧の報告書をフェリックスに預け、このあたりで暫し休憩する。
その時だった。
傍にあった木が、こちらに向かって倒れてきた。
急いで避けようとするが、身体が動かない。
「まずい!逃げられない―」
ドーーーーーーン。
そこで意識が途切れた。
「ナルツィス殿下!どうされましたか?!」
「大変!ひどい怪我をされています!
出血も多くて意識がありません!」
「早く医者を!」
「このままじゃ間に合わないわ!
いったいどうすれば…」
「私がやってみる!」
「ーーー様、ご無理をなさっていませんか?
お身体もまだお小さいのに…」
「物は試し、やってみなければわからないわ!
結界を張って遮音魔法もかけたから、皆は念のため邪魔が入らないように警戒して頂戴!」
「「「「かしこまりました!」」」」
「絶対に死なせないわ!『フォルハイルング!』」
うーん…。
?
私は確か木の下敷きになったはずじゃ…。
?!
傷が無い。
公務帰りの疲れも消えている。
誰が助けてくれたんだろう。
礼を言いたいが、辺りには誰もいない。
後でフェリックスに聞いてみよう。
とにかく今は部屋に戻って休まなくては。
「お戻りになったみたいね」
「はい。
それにしても、本当にやり遂げられるとは…」
「そうね。
しかも、兄殿下をお助けになったことを秘密になさるとは」
「この御方は大きく目立つことを嫌がられますからね」
「ともかく、今はお部屋で休んでいただかなくては」
「そうですね。
しっかり休んで、しっかり回復なさってください。
エヴァ様」
お読みいただきありがとうございます。




