魔力測定と皇帝の邂逅
皇帝視点です。
私はキリアン・フォン・ローゼンブルク、この国の皇帝だ。
建国以来、『皇帝や皇族は国民を最優先に考え、国民以上に労働すべし』の考え方が浸透しているが、過去、国民を虐げた上に暴政を行っていた皇族や貴族がおり、父である先代皇帝が一斉に処断している。その為、現在貴族は公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵が2名ずつ、皇族は私と皇后、皇太子、ナルツィス皇子、アゼリア皇女、マッティオ皇子、エーファンゲリン皇女の7名だけ。
政治に参加しているのは私、皇后、皇太子と爵位を持つ貴族全員だが、国をより良くするにはまだ意見が足りないように思う。国民の中から選んで参加してもらいたいのだが、選挙制度を構想しているときに大規模な処断があり、現在は放置状態。
実務についても、土木技術などの専門知識や技術を持つ者も多数処断され、今に伝える者がいなくなってしまった。その上、災害復旧など急いで対処しなくてはならない問題も多い。だから、皇子や皇女たちには10歳に満たず学院に入学する前から実務を担当させているのが現状だ。
「皇帝陛下、先ほど、エーファンゲリン皇女の魔力測定に伴う立会の依頼が入りました」
そういえば、まだ測っていなかったな。それにしても、随分早い。
「いつにいたしますか?陛下のご予定ですと、早くて3日後の夕方、その後は1か月先になります」
「そうか…。では3日後にしよう。できるだけ早く済ませたい。
そのように連絡を入れよ」
「かしこまりました」
公務の担い手は、ある程度多い方が良い。
3日後。
城の地下の測定室に入ると、エーファンゲリンが待っていた。
「皇帝陛下にご挨拶申し上げます。
本日は、私、エーファンゲリン・フォン・ローゼンブルクの魔力測定にお立会いいただき、誠に光栄に存じます」
「構わぬ。楽にせよ」
皇女は、身体は年相応だが、言動は完璧な淑女のそれ。
皇族としてのマナーは申し分ない。
「そなたは7歳前ではあるが、同時に皇族でもある。皇族が何をすべきかわかっておるか?」
「はい。国民を思いやり、国民のために働き、国民がより良い生を送るために必要なことを考え、時には自らの命を賭して国民を守ることです。その為、皇族は国民以上に働くものだと考えます。この私、既にその覚悟は持っております」
皇族の在り方まで理解しているようだ。
以前はなかったのだが、今はエーファンゲリンに対する関心が高まってきた。
「よろしい。では測定器の確認を行う」
私がそう告げ、皇宮庁の担当官が確認した後、私が魔法でもう一度確かめる。
「『シャインヴェルファー!』」
私がこう唱えて10秒ほどすると、風船の一部が赤く光った。
異常がある証拠だ。
どうやら、魔力孔以外に風船に穴が開いていたようだ。
急いで交換させ、もう一度確認する。
今度は異常なしだ。
測定機に魔力を流すようエーファンゲリンに命じ、測定が進んでいく。
私や皇后、皇太子をはじめとする4人の皇子と皇女のときは身長の3倍ほどで風船が膨張しなくなったのだが、エーファンゲリンの魔力は風船をどんどん膨らませていく。
私が座る玉座の前まできたところで…。
パァァァァァン!
勢いよく割れた。
魔力は勢いよく噴き出していて、このままだと皆に当たって危ない。
そう思っていたのだが。
皆無事だった。
私はおろか、誰にも当たらなかった。
ただ1人、魔力の持ち主であるエーファンゲリンを除いては。
「陛下、ご無事ですか?!」
「ああ、何ともない。
風船から魔力は噴き出したが、それが何故か持ち主であるそなた以外には私にも誰にも当たっておらぬ。誰一人怪我をしたものはおらぬ」
「それは・・・良かった・・・ご無事で・・・何より・・・です・・・」
ドサッ。
先ほどの衝撃で、エーファンゲリンが倒れた。
「皇女を自身の部屋に運ぶのだ。
幼い体に強い魔力衝撃を受けた故、安静が必要だ」
私の命令で、医務官たちが担架でエーファンゲリンを運んでいく。
その時の顔を見たら、何故だか懐かしい記憶が思い起こされた。
「『・・・藤・・・さん・・・』」
ん?!
「『佐藤さん』」
この男は…私なのか?!
前世、というものか?!
目の前のエーファンゲリンは…。
前世で突然亡くなった、佐藤真悠子さんなのか?!
皇帝陛下も前世持ちでした。
しかも同じ職場の人。




