公爵夫人とご対面。私は大丈夫でしょうか(汗)
後半で別視点が入ります。
侍女たちが確認を取ってくれて、公爵夫人は1時間後にに来ていただけることになった。
もっとも、急なお願いだしお忙しい方だから基本的なマナーを見てもらうだけになるらしい。
どんな判断をされるかわかんないから、不安がすごい。
色々考えているうちに約束の時間が来た。
「エヴァ様、公爵夫人がいらっしゃいました」
「お通しして頂戴」
入ってきたのは、温和なようでいて凛とした雰囲気をまとった綺麗な女性。
「エーファンゲリン皇女殿下にご挨拶申し上げます。
グロスバウアー公爵の妻、マリア・フォン・グロスバウアーと申します。」
「ローゼンブルク帝国第2皇女、エーファンゲリン・フォン・ローゼンブルクです。
本日は私のために急遽お時間をとっていただき、深く感謝申し上げます。
ここは私的な場ですので、私のことはエヴァとお呼びください」
緊張する~!
どこをどう見られているかわからないから、無我夢中で「自然さ」と「笑顔」を意識して夫人をおもてなしするように心がけた。
ドキドキしっぱなしだったけど、会話が途切れることはなかった。
そうこうしてるうちに夫人がお帰りになる時間になったのを、アガーテが知らせてくれた。
「本日は素晴らしい時間を過ごさせてくださり、誠にありがとうございます。
辺りは日が落ちてきていますので、道中お気を付けてお帰りくださいませ」
「お心遣いありがとうございます。
ここまでお話ししてまいりましたが、率直に申し上げまして…」
えっ?!
何か粗相しちゃったかな?
「お教えすることは何もございません。
これならどのような場でも通用するでしょう。
相手への心遣いは、逆に私の方が学ばせていただいたくらいです」
よかった~!
これって異世界チートってやつかな?
「そのように仰っていただき、大変恐縮でございます。
今後も驕ることなく精進いたします。
本日はありがとうございます」
互いに挨拶を交わし、夫人を馬車までお見送りする。
緊張しすぎて、流石に疲れてきちゃった。
「エヴァ様、流石にお疲れのようですから、早めに休まれてはいかがですか?」
「そうね。湯浴みの後で夕食をとったらすぐに休むわ。侍女長もアガーテたちも、早めに体を休めてね」
「ありがとうございます」
本当に、ローゼンブルク城の侍女たちは優秀だわ。
彼らのおかげで生活できているんだから、皆体を大事にしてもらわなくちゃ。
今日、思いがけずにエーファンゲリン殿下にお目通りできた。
家族である両陛下やきょうだいの殿下方とは交流が全くなく、侍女たち以外には周囲との関わりも持っていらっしゃらない。おまけに、皇族としてのマナーを教わり始める年齢なのに、既に完成されている。
誰かに教わったこともないのに、だ。
神の加護を頂いている?
もしかして、人生2周目かしら?
「奥様、あと少しでお屋敷に到着します」
「わかったわ。
ところでリーザ、エヴァ様に初めてお会いしたけど、印象はどうだった?」
「そうですね。まだ幼いのに、数々の修羅場を潜り抜けてきている感じで、大人と話しているようでした」
「私も同感よ。多分、エヴァ様は皇室で最も優秀な方だろうし、領地の込み入った話とかもできそうだわ。ただ…」
「ただ、とは?」
「子供らしいところが全く見えないの。これはごきょうだい方も同じこと。
『皇族たる者、民の命を最優先に守るべし』という陛下の方針は素晴らしいし、家族にも徹底させているのは良いわ。実際に、皇族に感謝している国民は多いもの。
でも、いくら魔力が多くて勉強も優秀だからって、あそこまでするのは考え物よ。皇太子殿下は政治や外交で両陛下と共に働いていらっしゃるし、ナルツィス皇子殿下は災害の復旧、アゼリア皇女殿下とマッティオ皇子殿下は飢饉やかんばつ、水害対策に明け暮れてて、皆さん疲れていらっしゃる。こんなんじゃ、皆さんやられちゃうわ。せめてご家族で交流なさらないとどうなってしまわれるか、考えただけで恐ろしいわ。『早くからでも公務に入れるように立派な皇族として育てる為』だからって親元から離されて育てられることの弊害かもしれないわ。これから見守り続けないといけないわね」
「はい」
「皆、今日はお疲れ様。当直でない人は早く休むように」
「かしこまりました。お疲れさまでした」
部屋で就寝の準備をしていると、同室のリリエが話しかけてきた。
「アガーテ、今日はどうだった?」
「エヴァ様のマナーを急に見てもらうことになって、緊張の度合いが半端なかったわ。でも、エヴァ様は完璧な対応で、グロスバウアー公爵夫人に太鼓判を押されたの。
マッティオ様はどうなの?」
「相変わらずよ。今日は南方の干ばつ対策に出向かれて、帰ってきたのはさっきの事よ」
「この様子だと、いつものことながら他の殿下方もお忙しいようね。学院の授業と並行だし。
両陛下はもちろん、皇族方は私たちを常に気遣ってくださるし、それに応えていきたいわ。
でも、同時に壊れてしまわないか心配でもあるの。
エヴァ様は今日、初めてグロスバウアー公爵夫人にお会いしてマナーを見ていただいたんだけど、太鼓判を押されるほど完璧に身に着けていたの。誰も教えていないのに、ね」
「えッ?!本当に?!」
「そう。エヴァ様の傍にいても、一体いつ練習されているか私にもわからないの。
誰もいないときに相当努力されていたんだわ」
「もしかして、この城で一番優秀なのかしら?」
「あながち嘘じゃないかも。
今後魔力判定の結果次第では、たくさんの公務にあたられることになりそう。それに対する不満は口になさらなかったわ。姫様は『家族ともっと話をして、交流したい』っていう理由で大変な公務を引き受けるおつもりなの。けど、頑張りすぎてご自身が倒れらる可能性もとても大きいのよ」
「そうだったのね。
そういえば、マッティオ様はここのところ感情を読み取れない日も多いんだけど、いつ倒れられてもおかしくない状態まで来てるってことね」
「そのようね。私たちがお見守りしなくちゃね」
私たちは同じことを考えていたみたいね。
公爵夫人、鋭いです。
マナーの出来は異世界チート、ということでご容赦ください(汗)




