家族としての第一歩
今回は皇帝、皇后、アゼリアの3人の視点が入り混じっています。
「驚かせてしまって申し訳ない。
いくつか聞きたいことがあるが、聞かせてくれるか?」
専属侍女のアガーテ・ガルテンは、1人だけ残るように言われて委縮してしまったに違いない。
まずは緊張を解かなくては。
「はい。
どのようなことでございますか?」
「まずは、エーファンゲリンの魔力についてだ。
彼女が高い魔力を有することを知っていたか?」
そう聞かれたガルテンは、困った様子で口籠っている。
「もし止められていたとしても、教えてほしいの。
エーファンゲリンの命にも関わってくることだから」
皇后から「命に関わる」と言われれば、話すしかなくなる。
彼女は意を決したように話し始めた。
「実は…知っておりました。
流石に、測定室の風船が割れるほどだとは思っておりませんでしたが。
おそらく魔力が高いであろうと思った出来事が、5日前に起きました」
「それはどんな事?
5日前といえば、ナルツィスが北方の崖崩れの復旧から帰ってきた日よね?」
「はい。
そのナルツィス殿下に関係しています。
実は、殿下が戻られて城の庭園で休憩されているとき、近くの木が倒れて下敷きになってしまわれました」
「何ですって?!」
「落ち着きなさい。
続きを聞きましょう」
「そのナルツィス様を、近くを散歩しておられたエーファンゲリン様が見つけて治療なさいました。
その時ご自身の魔力をすべて使われて、魔力切れで倒れられたほどです。
また、救助の際に『ナルツィス殿下を含め、誰にも知らせてはならない』と命じられました。
おそらく、変に注目されるのを避けたかったのではないかと思います。
姫様は、大きく目立つことを嫌がられるお方ですから」
「そういうことだったのね。よく話してくれたわ」
「それからもう1つ聞きたいことがある。
一昨日、エーファンゲリンは皇宮庁の試験について執事長に質問していたそうだが、なぜだか分かるか?」
「はい。
公務に携わる時間を増やすためです。
試験に合格して就学期間を短縮すれば、それだけ公務に時間を割けると仰っていました。
また、直接お伺いしたわけではありませんが、姫様は多分、試験の満点合格を目指されています。
そうなれば、学院に行かなくてよくなりますから」
「そうだったの。
でもいったいなぜそんなに大変なことをしようとするのかしら?」
これは私だけじゃなくて両陛下も気になっていらっしゃると思う。
「皆様のご負担を減らすためです。
また、エーファンゲリン様は『皆様と家族になりたい』と思っておいでです。
自ら大変な行動をされるのも、『家族を喜ばせたい』からなのです」
「「「!!!」」」
「話を聴かせてくれてありがとう。
後は我々で話し合う必要がある。
下がっていてもらえるか?」
「かしこまりました」
そう言って、ガルテンが部屋を後にする。
「我々は皇族として国民のために働いても、家族を大事にできていなかった。
とても『家族』といえる状況ではない」
「どれだけ公務が忙しかったとしても、家族の時間を全くとらないのはいけませんね。
これは大人の責任でもあります」
「しかしいったい何から始めたらよいのやら…」
「私的な場だけでも呼び方を変えたいです。
私もずっと、皆と家族になりたいと思っていました。
『お父様』、『お母様』」
「「!!」」
「今まで寂しい思いをさせてしまって申し訳ない。
私たちが間違っていた」
「アゼリアもエーファンゲリンも、私たちの大事な『娘』よ」
この瞬間、我々は漸く家族としての第一歩を踏み出し始めた。
「『息子』たちとも話をしなくては」
「そうですね。
それに、エーファンゲリンが目覚めた時に呼び方を変えていいかどうかも聞かなくては。
『エヴァ』と呼んでいいかを」
「はい。
私も早く、『妹』をそう呼びたいです」
「今はまず、エーファンゲリンの回復を待たなくてはな」
「「はい」」
エヴァ、目覚めたらたくさんお話ししましょう。
お読みいただきありがとうございます。
視点がわかりにくくて申し訳ございません。




