皇后、そして家族
皇后視点です。
私はセリーヌ・フォン・ローゼンブルク、この国の皇后。
筆頭公爵家から嫁いで、今は皇帝陛下と共に公務に当たっている。
3人の皇子と2人の皇女を産んだが、『皇族として立派に育てる為』として引き離された。
自分のもとで育てたいと思ったが、周りがそれを許さなかった。
『皇帝や皇族は国民を最優先に考え、国民以上に労働すべし』の方針が根強いからだ。
それを強力に刷り込まれ、いつしか私自身も皇族としての義務を優先するようになり、今では家族として関わることがなくなった。
皇子や皇女たちから『母』と呼ばれる日を夢見ているけれど、いつになるかはわからない。
現状では難しいわ。
今日はローゼンブルク帝国の子供たちが通う学校へ出向いていた。
教育現場の実態調査と、採るべき施策を考えるため。
行ってみてわかったのは、教師のなり手不足が深刻なこと。
病気で休んでいる人も何人もいる。
すぐに手を打たなくてはね。
教員養成所の数を増やすとか、教員の経験がある人にも入ってもらうとか。
あるいは、皇族に適用されている学業のスキップの制度を国民にも導入するとか…。
実行するのはどれも簡単なことではないから、政治の場で議論が必要ね。
この後報告書を持っていくときに相談してみようかしら。
そういえば、今日はエーファンゲリンの魔力測定の日ね。
いつもは17時くらいに陛下にお会いするけど、今日は立ち会いがあるから18時を過ぎるという話だったわ。
彼女の魔力はどの程度のものか、どの公務に当たらせるのが良いか、その件も話し合うことになりそう。
そんなことを考えていたら、部屋の前の廊下が騒がしくなった。
外を覗いてみると、魔力測定の担当官や医務官が走り回っている。
私に気づく者がいないほど忙しいようで、何があったか聞きづらい。
そうしている内に、陛下がこちらに来られた。
「いったい何が起こったのですか?」
「エーファンゲリンが倒れた。
風船が破裂して、噴き出してきた魔力の衝撃を勢いよく受けたのだ。
その時に無意識に防御魔法を発動したからか、その場にいた者は私を含めて全員無事だ」
「えっ?!
ということは、彼女の魔力は…」
「そうだ。非常に膨大だ。
皇族だけでなく、この国で歴代最高レベルだろう」
「その分、身体への負担がものすごいということですね…」
「おそらくな」
そう思ったら、身体が勝手に動いた。
「待ってくれ。どこへ行く?」
「エーファンゲリンの部屋です。
今は彼女が心配でなりません。
行かせてください」
「私も行こう。
彼女の様子が気になるからな。
今回ばかりは公務の報告どころではない」
2人で連れ立って、エーファンゲリンの部屋へ急ぐ。
扉の前に来ると、そこにはアゼリアがいた。
「あなたもエーファンゲリンが心配なのね?」
「はい。見舞いの許可は取っております」
「ともかく中へ入ろう」
部屋に入ると、意識がなく息も上がった様子のエーファンゲリンの姿があった。
「「身体は無事なの?!」」
「皇后陛下、アゼリア殿下、落ち着いてください。
エーファンゲリン様は徐々に落ち着かれてきています」
少し様子を見ると、医務官の言葉通り徐々に呼吸が安定してきたのがわかる。
「ごめんなさい。取り乱してしまったわ」
「私も。申し訳ありません」
「ご無理もないことです」
「そうだな。
私も危うく取り乱すところだった。それから…
エーファンゲリン付きの侍女のガルテン以外は席を外してほしいのだが、構わぬか?」
「はい。もちろんです。
外に控えておりますので、もし何かございましたらいつでもお申し付けください」
「助かるわ」
他の者たちが退室して、部屋には5人だけになった。
私たちは、エーファンゲリンの専属侍女から話を聞くことにした。
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