もう1人の皇女
第1皇女、アゼリア視点です。
私はアゼリア・フォン・ローゼンブルク、この国の第1皇女。
先月皇宮庁の試験に受かって、来年から第3皇子のマッティオと共に学院への入学が決まっている。
さっき東方の飢饉対策から帰ってきて、今は湯浴みを済ませて部屋で休んでる。
それにしても、あの地域の対策には骨が折れた。
私とマッティオが生まれる前に起きた大規模な干ばつの影響が残ってて、作物が育ちにくかったの。
それを育ちやすくする魔法をかけるために、自分の魔力を限界まで流しては休み、を繰り返して、1週間かかった。
相当きつい公務だったけど、国民の生活のほうがもっときつい。
それを思うと、呑気に休んでるわけにはいかない。
皇族は魔力が多い分、国民の命を守るためにたくさん働く義務があるからね。
全部終わって帰るときに、その地域の長老から泣いて感謝された。
こういう嬉しい瞬間があると、私ももっと頑張らなきゃって思う。
そういえば、皇族が国民のために働くのは当然としても、身内同士が交流しないのはいかがなものかしら。
いくら『早くからでも公務に入れるように立派な皇族として育てる為』に引き離すといっても、ちょっとやりすぎのような気がする。
侍女や執事を通して伝えると彼らの生活が脅かされかねないし、直接伝えようにも取り合っていただくのは難しい。
いったいどうしたらいいのやら…。
「アゼリア様、今日は相当お疲れのようですし、早めに夕食になさってはいかがですか?」
専属侍女のソフィアが、気を利かせて聞いてくれる。本当に優秀だわ。
「そうする。
今日は寝るのも早い方がいいわ」
「かしこまりました。
すぐに準備いたします」
「お願いね」
30分ほどして、部屋に食事が届いた。
食事はいつも決まって自分の部屋。
皇族の中で、食事を共にしたことがあるのは一人もいない。
帰るときに見かけた、ある住民の家族の食事風景を見て羨ましいと思ったわ。
質素だけど、楽しそうな食卓。
これは、私たち皇族に足りないものね。
私もこんな食事がしてみたい。
豪華じゃなくていいから、家族で食卓を囲みたい。
でも、私たちには無理。
だって、『皇族』といっても単に血が繋がっているだけで、
『家族』ではないから。
さて、こうして文句ばかり言ってるわけにはいかない。
城で働いてくれている人たちを無碍にすることは許されないものね。
美味しくいただいて、恩に報いなきゃ。
食事を済ませて寝る準備をしようとしていた時。
外が騒がしくなった。
いったい何が…。
「早く担架を!」
「急いで!」
そんな声が聞こえている。
「外で何が起こってるの?」
「確認してまいります」
ソフィアがドアを開けて様子をうかがう。
「今しがた、測定室でエーファンゲリン様の魔力測定が行われていましたが、
そこでどなたか倒れられたようです」
「いったい誰かしら?」
そう言って私も外を見ると、誰かが担架で運ばれていくところだった。
顔も少し見えた。
「あれは…
エーファンゲリン?!」
どうやら、倒れたのはエーファンゲリン本人のようだ。
近くにいた医務官に聞いたところでは、パンパンに膨らんだ風船が割れて、噴き出してきた魔力の衝撃を勢いよく受けたらしい。
皇帝陛下を含む周りの人間に危害が及ばないよう、咄嗟に防御魔法を展開したのだそう。
幼いながら、皇族としての自覚はしっかり持っているのね。
それにしても、彼女の身体が心配だわ。
あれ?
そういえば、エーファンゲリンの顔。
なんか懐かしい。
今まで通りがかりに見るだけで、直接話すことはなかったのに、何でだろう。
知らない記憶も頭に浮かんできた。
何か思い出せそうな気がするんだけど…。
「ソフィア、今からエーファンゲリンの見舞いに行ってもいいかしら?
少し顔を見るだけでもいいわ」
「確認してみます」
ややあって。
「問題ないとの事です。
部屋の外までは、私もご一緒いたします」
初めて、エーファンゲリンの部屋に行くことになった。
お読みいただきありがとうございます。
エヴァと同じことを考えている人がもう1人いました。




