いつもと違う、陛下の雰囲気
第3皇子、マッティオ視点です。
エヴァの魔力測定の日の話です。
俺はマッティオ・フォン・ローゼンブルク、この国の第3皇子だ。
ついさっき、南方の干ばつ対策から戻ったところだ。
水が干上がらないように魔法を何重にもかけたし、しばらくは大丈夫だろう。
それにしても、干ばつ対策は思った以上に魔力消費が大きい。
何度も魔力切れを起こしかけたし、完了するまで2日もかかった。
誰かに手伝ってもらいたいけど、両陛下と皇太子殿下は政務、ナルツィス殿下は災害対策、アゼリア殿下は飢饉の対策で忙しいし、エーファンゲリンはまだ7歳前で公務を担えるとは思えない。
それに、俺以外の皇族とはまともに話したことがないから頼みづらいというのもある。
皇族以外の者の魔力を使わせてもらった場合、身体への負担が計り知れない。
俺たちと同じような状況にはさせたくないから、1人でやる方がいい。
「マッティオ様、そろそろ部屋に戻って休まれますか?」
「そうする。
報告書は執事頭に渡してあるし、やることはもう終わったからな。
食事と入浴が終わったら、リリエも休むといいよ」
「お心遣いありがとうございます。
かしこまりました」
そんなやりとりをしながら、自分の部屋へと戻っていく。
その途中、近くの部屋から大きな音がした。
ズーーーーーーーーン。
パァァァァァン!
「何かすごい音がしたな。
ここは測定室だったね」
「はい。
今ちょうどエーファンゲリン殿下の魔力測定が行われています」
ん?
魔力測定?
だとしたら、さっきの音は風船が相当大きく膨らんで割れた音。
エーファンゲリンは膨大な魔力を持っているようだ。
その風船が割れたということは…。
大変だ!
怪我人が出ているかも!
そう思ったとき、測定室の扉が突然開いて、人が1人担架で運ばれていった。
あれは…。
エーファンゲリン!
少し後、皇帝陛下も部屋から出てこられた。
「マッティオ、帰ってきたか」
「はい。今しがた南方の干ばつ対策を終えて戻ってまいりました。
今、エーファンゲリンに何かあったのですか?」
「ああ。
そなたは察しているのだろうが、エーファンゲリンの魔力測定で風船が割れた。
風船自体は問題ないのを確認しているから、彼女の魔力が膨大だったのだ。
私の目の前まで膨らんできたからな。
それと、魔力衝撃を受けたのはエーファンゲリンただ1人だ。
私を含む周りの者に危害が及ばぬよう、無意識に魔法を発動したからだ。
その分、自分の身体は傷ついているが」
あれ?
陛下の雰囲気が今までと違う。
何でだろう。
「それとマッティオ、明日以降そなたと話をする時間を取りたい。
構わぬか?」
「もちろんです。
こちらからお伺いすれば良いですか?」
「いいや、私が行こう。
行くときは改めて連絡を入れるから、そなたは部屋で待っていてくれ」
「かしこまりました」
そういうと、陛下はこの場を後にされた。
俺も部屋に戻ろう。
自分の部屋で、さっきの出来事を振り返ってみた。
今まで近寄りがたい存在だった皇帝陛下は、まるで人柄が変わったみたいに優しい感じになった。
それと、運ばれていったエーファンゲリンの顔。
なんか懐かしい感じがした。
ん?
俺って、両陛下や皇子、皇女たちとまともに交流したことなかったよな。
多分全員そうだと思う。
なのに何故、前から知ってる気がするんだ?
お読みいただきありがとうございます。
次回はアゼリア視点です。




