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2章・電波症候群

結局おばさんは説得できず、あいつらを外に放ってやることもできなかった。


好き勝手やってるあいつらに何か、負けたような悔しさと、あいつらが外にでる為に何もできなかったことに対しての申し訳なさが渦を巻く。



ドアを開けてみると妹の友愛がいた。

トイレに行った帰りなのだろう。


部屋からでることも珍しい友愛にジャストタイミングで会えたことに、四つ葉クローバーを見つけた時にも似た高揚感が、劣等感やら自責の念やらを払拭してくれた。


小学5年生にしては幼すぎるような顔つきと体つきだ。

いつもくらい部屋の中でベッドに座り込んでパソコンやらテレビを見ている姿ばかりを見ていたものだから、久しぶりに全身を良く見ることが出来た気がした。


「…?ご飯まだ?」


首を傾げると、日本人形のような長い黒髪がサラサラと流れる。

日がな一日部屋に篭る妹の肌は透けるように白かった。


「ああ…遅くなっちゃったな…悪い」


遊と話すよりも、身内なのに余り会話もしなければ、顔もあわせない妹と話すほうが、なにか話しづらい。


そう言って、玄関のドアを開けるためにお盆ごと床に置いた二人の食事を持ち上げた


「……ううん…ありがと…」


引きこもりとはいっても、他人に心を閉ざしてるわけじゃない。

お腹がすいて、おいしそうな物を見て笑顔になれるんだ。



「どうしたの?ねえちゃん?」

友覇が部屋のドアから顔を出した。


友覇は友愛の双子の弟だ。顔つきも似通っているが、やっぱり男の子の顔だ。

友愛もそうだが、小学5年生にしては、幼いような顔つきで肌も透けるように白い。髪は余り手入れをしないから男の子にしては長い黒髪。



「…なんでもないよ……ゆー…ご飯きたよ」


「なんだよ!待ちくたびれたよ兄ちゃん!遅いっての!」


こちらを見ると良くわかるが、やはり顔の形は友愛そっくりだ。その睨みつける目つきをやめさせ、髪の毛をとかしてあげれば可愛いらしい女の子にしか見えないだろう。

その目つきを直せばな。


「だまって感謝し…

「で!ねえちゃん。これこれ…このサイト!」


人の話を無視して話題を変えやがった。


人生の色んなモンをショートカットしてるくせに、反抗期はちゃんとやるんだな…。


「どれ?」

友愛が友覇につれられた《ユウハの部屋》に入る。


「…!」

この光景はずっと暮らしてきたが、こんなことは一度もなかった。


「おまえら…互いの部屋行き来したり、してたのか?」


《ユウハの部屋》の奥にある四台パソコンの内の一つに夢中で食らいていた友覇は忌ま忌ましそうに言った。


「そうだよ…」


「へぇ…兄ちゃん、知らなかったな」

ちょっと嬉しいかった。ずっとお互い一人で引き込もってたと思っていたから。


こうやって見ると、普通の姉弟だな。


しみじみと珍しくドアを開けたままのユウハの部屋に入って二人の見ているものを覗こうとした


「兄ちゃん!気をつけて入ってよ!!」


友覇が怒鳴る。


「…わるかった…」


悔しいが、ここで言い返すとパソコンの画面を見せて貰えそうにないので謝った。



「兄ちゃん、そこのヤツさわんないでよ?」



「わかってるよ…」


そこのヤツとは

アニメキャラクターねフィギュアの軍団のことだ。


そう友覇は引きこもりにして、アニメ、ゲームに関してのオタクなのだ。


しかし、イケメンのオタクというのはまったくオタクらしくない。


「ほんと…!私の予言どおり……すごい!」

大きな瞳をキラキラ輝かせて、パソコンの画面を見ながら嬉しそうに言う。


ちなみに言っておくが、コイツは引きこもりであり電波娘だ。


予言だの宇宙だの魔法だの そういう言葉をかけると、話にならなくなってしまう。


今回はもう…電波に目覚めてしまったらしい。


「こんなこと、してる暇は無いわ……」


そういうと床にあるフィギュアケースを円状に並べた


「ねぇお兄ちゃん!トイレットペーパーない?トイレットペーパーを賢者の石“エリクシル”に見立てて術式を組み上げるの早くしないと宇宙との交信が出来ないわ!トイレットペーパーでなくともいいの、似た形状なら形と意味が同じものなら、使うのはその二つだから。形ってのはね…」


「わかった!わかった!トイレットペーパーあるからっ!」



このままだとと

延々と喋り続けるだろうと思いさっさとトイレットペーパーを持ってきてやった。


「魔法陣とか賢者の石とか宇宙とか、なんなんだよ、錬金術と魔法と宇宙をごっちゃにするなよ」


友覇はそれについては常識のあるオタクだった。


「いいえ、違うの。魔術も錬金術も全部同じもの、宇宙をそれぞれの形で表現してるだけで、本質は似通ってるのよ…。宇宙ですら…」


また…語り始めた。こうなるといつもは口数の少ない友愛はリミッターが外れたように喋りだす。


「おい!いいのか?魔法つかって宇宙と交信しなくて」

この妹をこんな風になだめられる僕は、普通ではないだろう。


「そうだった!ありがとうお兄ちゃんっ!」


そう言うと、これまでに見たこと無いような機敏な動きで隣の自室へと向かう。


パジャマがはだけて肌が所々露出していたが、今の彼女には何を言っても無駄だろう。



「リアルと二次元の分別がつかないなんて…」

友覇は呆れたように呟いた。



「知らなかったのか?友愛が電波だってこと。」



パソコンの画面に視線を戻し友覇は答えた。

「知ってたさ。けどね何度みても、あの状態のねえちゃんは理解できないんだよ。」


確かに、理解できないな…


そう僕は心で呟いた。



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