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大賢者と16人の落ちこぼれ弟子  作者: 伝説の男前
第二部 育成編

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37/38

第37話 「二日目」

夜。


村の、広場。


八百七十五人の、会議が、続いていた。


「……手が、ありません」


バルドは、言った。


「……蔓は、半分、焼かれました」


彼は、続けた。


「……煙は、一度、見られました」


「……」


「……沼も、知られました」


バルドは、言った。


「……つまり」


彼は、続けた。


「……明日は」


バルドは、言った。


「……同じ手が、通じません」


### 二


「……なら」


ガルドが、言った。


「……新しい手を、考えるしかねえな」


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……でも」


彼は、続けた。


「……材料が、ありません」


「……材料?」


ジャンが、聞いた。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……武器も」


彼は、続けた。


「……人も」


バルドは、言った。


「……足りません」


### 三


そのとき。


ヴェルナーが、口を、開いた。


「……一つ、聞く」


彼は、言った。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……明日」


ヴェルナーは、続けた。


「……あの男は」


彼は、言った。


「……どこから、来る」


バルドは、しばらく、考えた。


そして、答えた。


「……わかりません」


「……考えろ」


ヴェルナーは、言った。


### 四


「……それが、指揮官の、仕事だ」


彼は、続けた。


「……はい」


バルドは、頷いた。


そして、地図を、見た。


村の、地図。


北。


東。


南。


西。


「……北は」


バルドは、言った。


「……蔓と、柵が、あります」


「……ああ」


「……東は」


彼は、続けた。


「……沼です」


「……そうだな」


ヴェルナーは、頷いた。


### 五


「……南は」


バルドは、続けた。


「……地下避難所が、あります」


彼は、言った。


「……そこを、攻められたら」


バルドは、続けた。


「……終わりです」


「……しかし」


ヴェルナーは、言った。


「……南に、回るには」


彼は、続けた。


「……村を、半周する」


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……時間が、かかります」


### 六


「……では」


ヴェルナーは、言った。


「……残りは」


バルドは、答えた。


「……西です」


「……そうだ」


彼は、頷いた。


「……西には」


ヴェルナーは、続けた。


「……何がある」


バルドは、答えた。


「……何も、ありません」


「……そうだな」


ヴェルナーは、言った。


「……だから」


彼は、続けた。


「……そこから、来る」


### 七


十六人は、その結論に、頷いた。


「……では」


バルドは、言った。


「……西を、守ります」


「……誰が、行く」


ガルドが、聞いた。


バルドは、しばらく、考えた。


そして、言った。


「……北も、守らないと、いけません」


彼は、続けた。


「……はい」


「……北は、主力が、来ます」


バルドは、言った。


「……だから」


彼は、続けた。


「……人を、多く」


### 八


「……つまり」


トムが、言った。


「……西には、人を、割けない」


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……何人、出せる」


ヴェルナーが、聞いた。


バルドは、答えた。


「……二人です」


十六人が、驚いた。


「……二人!?」


リナが、叫んだ。


「……はい」


彼は、答えた。


「……無理だよ!」


彼女は、言った。


### 九


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……無理です」


彼は、続けた。


「……普通なら」


バルドは、言った。


そして、二人を、見た。


ノアと、シオン。


「……お二人に」


彼は、続けた。


「……お願いしたいです」


ノアは、その言葉を、聞いた。


そして、顔を、上げた。


「……何を、すれば」


彼女は、聞いた。


### 十


バルドは、答えた。


「……止めてください」


「……止める?」


ノアは、聞いた。


「……はい」


彼は、頷いた。


「……戦わずに、ですか」


彼女は、聞いた。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……武器は」


ノアは、聞いた。


「……持たないでください」


彼は、答えた。


ノアは、その指示を、聞いた。


そして、しばらく、黙っていた。


そして、言った。


「……何人、来ますか」


### 十一


バルドは、答えた。


「……たぶん」


彼は、続けた。


「……三百から、四百」


「……四百人を」


ノアは、言った。


「……二人で」


「……はい」


バルドは、頷いた。


ノアは、その数字を、聞いた。


そして、シオンを、見た。


シオンは、何も、言わなかった。


ただ、頷いた。


「……わかりました」


ノアは、言った。


### 十二


「……できますか」


バルドは、聞いた。


ノアは、答えた。


「……わかりません」


彼女は、続けた。


「……でも」


ノアは、言った。


「……やってみます」


「……ありがとうございます」


バルドは、頭を、下げた。


そして、続けた。


「……一つだけ」


彼は、言った。


「……はい」


「……危なくなったら」


バルドは、続けた。


「……逃げてください」


### 十三


「……はい」


ノアは、答えた。


そして、聞いた。


「……バルドさん」


「……はい」


「……一つ、質問が、あります」


彼女は、続けた。


「……なんですか」


バルドは、答えた。


ノアは、聞いた。


「……なぜ、私たちですか」


バルドは、その問いに、答えた。


「……武器が、ないからです」


### 十四


「……武器が、ない?」


ノアは、聞き返した。


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……お二人は」


彼は、続けた。


「……武器を、使いません」


「……はい」


「……つまり」


バルドは、言った。


「……相手も」


彼は、続けた。


「……武器を、使いにくい」


ノアは、その説明を、聞いた。


そして、頷いた。


「……理解しました」


### 十五


夜明け前。


村の、西側。


そこは、平坦な、草原だった。


柵も、ない。


蔓も、ない。


ただ、草が、生えているだけ。


そこに。


二人が、立っていた。


ノアと、シオン。


武器は、持っていない。


そして、鎧も、着ていない。


普段着のまま。


「……」


二人は、何も、話さなかった。


ただ、西を、見ていた。


### 十六


「……ノア」


シオンが、言った。


「……はい」


「……怖いか」


彼は、聞いた。


ノアは、しばらく、黙っていた。


そして、答えた。


「……はい」


「……」


「……シオンさんは」


彼女は、聞いた。


シオンは、答えた。


「……怖い」


「……そうですか」


ノアは、言った。


そして、少し、笑った。


「……安心しました」


### 十七


「……なぜだ」


シオンは、聞いた。


ノアは、答えた。


「……一人じゃ、ないからです」


シオンは、その言葉を、聞いた。


そして、頷いた。


「……そうだな」


彼は、言った。


そして、二人は、また、黙った。


一時間。


夜が、明けた。


そして。


西の、地平線に。


砂煙が、見えた。


### 十八


「……来ました」


ノアは、言った。


「……何人だ」


シオンは、聞いた。


彼女は、その砂煙を、見た。


そして、答えた。


「……四百です」


「……そうか」


シオンは、頷いた。


そして、聞いた。


「……作戦は」


ノアは、答えた。


「……ありません」


「……そうか」


彼は、言った。


そして、少し、笑った。


「……いつも通りだ」


### 十九


四百人が、近づいてきた。


歩兵。


そして、その先頭に、指揮官が、いた。


若い男。


三十代。


彼は、二人を、見た。


そして、動きを、止めた。


「……なんだ、あれは」


彼は、呟いた。


「……二人、です」


副官が、答えた。


「……見ればわかる」


指揮官は、言った。


「……武装は」


彼は、聞いた。


副官は、答えた。


「……ありません」


### 二十


「……罠か」


指揮官は、言った。


「……かもしれません」


副官は、答えた。


「……周囲を、探れ」


彼は、命じた。


そして、斥候が、走った。


十分後。


斥候が、戻ってきた。


「……報告します」


彼は、言った。


「……周囲に、伏兵は、ありません」


「……本当か」


指揮官は、聞いた。


「……はい」


斥候は、答えた。


「……あの二人、だけです」


### 二十一


指揮官は、その報告に、困惑した。


「……なぜだ」


彼は、呟いた。


「……なぜ、二人だけで」


そして、彼は、前進を、命じた。


「……全隊、前進」


四百人が、動いた。


そして、二人との距離が、縮まった。


百メートル。


五十メートル。


三十メートル。


そして。


二十メートルで、止まった。


### 二十二


「……そこの、二人!」


指揮官が、叫んだ。


「……道を、開けよ!」


ノアと、シオンは、答えなかった。


ただ、立っていた。


「……聞こえないのか!」


彼は、叫んだ。


「……道を、開けよ!」


沈黙。


指揮官は、苛立った。


「……最後の、警告だ!」


彼は、言った。


「……開けなければ」


指揮官は、続けた。


「……殺す!」


### 二十三


そのとき。


ノアが、顔を、上げた。


そして、指揮官を、見た。


一秒。


そして、また、俯いた。


「……」


そして、彼女は、言った。


「……ハルト・ヴェイル、さん」


指揮官の、動きが、止まった。


「……なぜ」


彼は、言った。


「……私の、名を」


### 二十四


ノアは、答えなかった。


代わりに、続けた。


「……北部、ケルン地方の、ご出身ですね」


「……!」


指揮官は、驚いた。


「……なぜ、それを」


彼は、聞いた。


ノアは、答えた。


「……訛りです」


「……」


「……そして」


彼女は、続けた。


「……剣の、握り方」


ノアは、言った。


「……ケルン式です」


### 二十五


指揮官は、その分析に、動揺した。


「……それが、なんだ」


彼は、言った。


ノアは、答えた。


「……ケルンは」


彼女は、続けた。


「……三年前」


ノアは、言った。


「……ゲルニアに、焼かれました」


指揮官の、顔が、強張った。


「……そして」


彼女は、続けた。


「……村人が」


ノアは、言った。


「……逃げました」


### 二十六


「……その人たちは」


彼女は、続けた。


「……南へ、逃げました」


「……」


「……そして」


ノアは、言った。


「……今」


彼女は、続けた。


「……この村に、います」


指揮官は、その言葉に、凍りついた。


「……何?」


彼は、言った。


「……ケルンからの、避難民が」


ノアは、続けた。


「……四十三人」


### 二十七


「……四十三」


指揮官は、繰り返した。


「……はい」


ノアは、頷いた。


「……嘘だ」


彼は、言った。


「……本当です」


彼女は、答えた。


「……証拠は」


指揮官は、聞いた。


ノアは、答えた。


「……名前を、言います」


そして、彼女は、読み上げ始めた。


「……マルタ・ゲルン」


「……ヨナス・ヴァイス」


「……エレン・ホフ」


### 二十八


指揮官は、その名を、聞いた。


そして。


顔色を、失った。


「……止めろ」


彼は、言った。


しかし、ノアは、続けた。


「……クラウス・ベルガー」


「……ハンナ・ベルガー」


「……そして」


彼女は、言った。


「……ミレーナ・ヴェイル」


指揮官の、体が、震えた。


### 二十九


「……ミレーナ」


彼は、呟いた。


「……ご存じですか」


ノアは、聞いた。


指揮官は、答えなかった。


そして、しばらくして、言った。


「……妹だ」


四百人が、ざわめいた。


「……生きて、いるのか」


彼は、聞いた。


「……はい」


ノアは、答えた。


「……嘘では、ないな」


指揮官は、言った。


ノアは、答えた。


「……嘘は、つきません」


### 三十


「……会わせろ」


指揮官は、言った。


「……はい」


ノアは、頷いた。


「……ただし」


彼女は、続けた。


「……条件が、あります」


「……なんだ」


彼は、聞いた。


ノアは、答えた。


「……武器を、置いてください」


指揮官は、その条件を、聞いた。


そして、しばらく、迷った。


そして、言った。


「……私だけだ」


「……はい」


ノアは、答えた。


### 三十一


彼は、剣を、置いた。


そして、一人で、前に、出た。


四百人が、その背中を、見ていた。


そして、ノアが、案内した。


村の中へ。


十分後。


一人の女性が、現れた。


三十代。


そして、その顔を、見た瞬間。


指揮官は、崩れ落ちた。


「……ミレーナ」


彼は、言った。


女性は、彼を、見た。


そして、言った。


「……兄さん?」


### 三十二


二人は、抱き合った。


そして、泣いた。


四百人は、遠くから、その光景を、見ていた。


「……なんだ、あれ」


「……妹らしいぞ」


「……生きてたのか」


ざわめきが、広がった。


そして。


一人の兵士が、呟いた。


「……俺の、家族も」


彼は、言った。


「……どこかに、いるかな」


### 三十三


ノアは、その呟きを、聞いた。


いや。


見た。


彼女は、その兵士の、口の動きを、読んでいた。


そして、シオンに、言った。


「……シオンさん」


「……」


「……あの人です」


ノアは、続けた。


「……三列目、左から、七人目」


シオンは、頷いた。


そして、歩き出した。


四百人の、方へ。


一人で。


### 三十四


兵士たちが、身構えた。


「……止まれ!」


しかし。


シオンは、止まらなかった。


そして。


その兵士の、前に、立った。


三列目、左から、七人目。


二十代の、若い兵士。


「……な、なんだ」


彼は、言った。


シオンは、答えなかった。


ただ、見ていた。


そして。


しばらくして、言った。


「……名は」


### 三十五


「……え?」


兵士は、聞き返した。


「……名は」


シオンは、繰り返した。


「……お、俺?」


「……」


シオンは、頷いた。


兵士は、しばらく、迷った。


そして、答えた。


「……トビアス・ケラーです」


シオンは、その名を、聞いた。


そして、頷いた。


そして、聞いた。


「……家族は」


### 三十六


「……え」


トビアスは、戸惑った。


「……家族は」


シオンは、繰り返した。


「……あの」


彼は、答えた。


「……北の、ザンド村に」


「……」


「……父と、母と」


トビアスは、続けた。


「……妹が」


シオンは、頷いた。


そして、振り返った。


そして、ノアを、見た。


ノアは、その名を、聞いていた。


そして、答えた。


「……います」


### 三十七


「……え?」


トビアスが、言った。


ノアは、続けた。


「……ザンド村からの、避難民」


彼女は、言った。


「……十二人」


「……」


「……その中に」


ノアは、続けた。


「……ケラーという、名字の方が」


彼女は、言った。


「……三人」


トビアスの、体が、震えた。


「……父と、母と」


彼は、呟いた。


「……妹」


### 三十八


「……確認しますか」


ノアは、聞いた。


トビアスは、答えられなかった。


ただ、頷いた。


何度も。


そして、彼は、剣を、落とした。


音が、鳴った。


そして。


その音を、聞いた、周囲の兵士たちが。


一人ずつ。


こちらを、見た。


### 三十九


「……皆さん」


ノアが、言った。


四百人が、彼女を、見た。


「……この村に」


彼女は、続けた。


「……五百人の、避難民が、います」


「……」


「……北から、逃げてきた人たちです」


ノアは、言った。


「……そして」


彼女は、続けた。


「……名簿が、あります」


「……名簿?」


一人が、聞いた。


「……はい」


ノアは、答えた。


### 四十


「……全員の、名前」


彼女は、続けた。


「……出身地」


ノアは、言った。


「……そして、家族構成」


「……」


「……私が、記録しました」


彼女は、続けた。


「……一年かけて」


四百人は、その言葉を、聞いた。


そして、ノアは、言った。


「……見ますか」


### 四十一


沈黙。


そして。


一人が、前に、出た。


「……見たい」


彼は、言った。


そして、もう一人。


「……俺も」


さらに、一人。


「……俺の、村の名は」


そして。


四百人が。


動き始めた。


武器を、持たずに。


### 四十二


その頃。


村の、北。


主力が、攻めていた。


六百人。


そして、そこを。


十四人が、守っていた。


「……来ます!」


シルフィが、叫んだ。


「……盾!」


バルドが、命じた。


矢が、降った。


そして、盾が、それを、受けた。


しかし。


「……!」


一枚の盾が、割れた。


### 四十三


「……!」


その後ろにいた、村人が、倒れた。


「……エマさん!」


バルドが、叫んだ。


エマが、駆けた。


そして、その村人を、診た。


「……肩です」


彼女は、言った。


「……重傷」


「……助かりますか」


バルドは、聞いた。


エマは、答えた。


「……はい」


彼女は、続けた。


「……でも」


エマは、言った。


「……腕は」


彼女は、続けた。


「……動かなく、なります」


### 四十四


バルドは、その報告を、聞いた。


そして、拳を、握った。


「……バルド」


トムが、言った。


「……はい」


「……自分を、責めるな」


彼は、言った。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……でも」


彼は、続けた。


「……僕の、指示です」


「……ああ」


トムは、頷いた。


「……そして」


彼は、続けた。


「……君の指示で」


トムは、言った。


「……八百人が、生きてる」


### 四十五


正午。


北側の、戦闘は、激しくなっていた。


六百人が、柵に、取りついた。


そして、それを、壊そうとした。


「……ドグさん!」


バルドが、叫んだ。


「……おう!」


ドグが、動いた。


そして、柵の内側から。


ハンマーで、地面を、叩いた。


すると。


柵が、震えた。


そして、取りついていた兵士が。


振り落とされた。


### 四十六


「……なんだ、今のは」


兵士が、叫んだ。


「……共振です」


レンが、答えた。


「……え?」


「……この柵は」


彼は、続けた。


「……わざと、緩く、作ってあります」


レンは、言った。


「……だから」


彼は、続けた。


「……特定の、振動を、与えると」


レンは、言った。


「……大きく、揺れます」


### 四十七


「……つまり」


バルドは、言った。


「……登れません」


「……はい」


レンは、頷いた。


「……壊れませんか」


バルドは、聞いた。


「……壊れます」


レンは、答えた。


「……いつ」


彼は、聞いた。


レンは、答えた。


「……あと、五時間ほどで」


### 四十八


夕方。


柵が、崩れた。


北側の、三十メートル。


「……突入!」


指揮官が、叫んだ。


そして、百人が、村に、なだれ込んだ。


「……来ます!」


トムが、叫んだ。


「……レオンさん!」


バルドが、命じた。


「……おう!」


レオンが、駆けた。


そして、その後ろから。


シルフィの矢が、飛んだ。


### 四十九


百人と、十四人。


しかし。


十四人は、殺さなかった。


レオンは、転びながら、敵の足を、払った。


ガルドは、拳で、盾を、砕いた。


しかし、人は、殴らなかった。


リナの爆弾は、足元で、鳴った。


しかし、誰も、傷つけなかった。


音と、光だけ。


そして。


一時間後。


百人は、後退した。


### 五十


「……被害は」


バルドが、聞いた。


エマが、答えた。


「……こちら、重傷、三名」


彼女は、続けた。


「……軽傷、四十七名」


「……死者は」


彼は、聞いた。


「……ゼロです」


エマは、答えた。


「……向こうは」


バルドは、聞いた。


トムが、答えた。


「……たぶん、負傷者、百名以上」


彼は、続けた。


「……でも」


トムは、言った。


「……死者は、ゼロだ」


### 五十一


日没。


二日目が、終わった。


第一師団は、後退した。


そして、村では。


八百七十五人が、生きていた。


死者、ゼロ。


「……二日」


ジャンが、呟いた。


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……あと、一日だ」


彼は、言った。


「……はい」


バルドは、答えた。


しかし。


その顔は、前日より、暗かった。


### 五十二


「……どうした」


ジャンが、聞いた。


バルドは、答えた。


「……柵が」


彼は、続けた。


「……壊れました」


「……ああ」


「……明日は」


バルドは、言った。


「……守るものが、ありません」


彼は、続けた。


「……そして」


バルドは、言った。


「……重傷者が、三人」


### 五十三


そのとき。


ノアが、戻ってきた。


そして、バルドに、報告した。


「……西側は」


彼女は、言った。


「……止まりました」


「……本当ですか」


バルドは、聞いた。


「……はい」


ノアは、頷いた。


「……どうやって」


彼は、聞いた。


ノアは、答えた。


「……名前を、呼びました」


### 五十四


「……名前?」


バルドは、聞いた。


「……はい」


ノアは、頷いた。


「……四百人の、うち」


彼女は、続けた。


「……三十七人が」


ノアは、言った。


「……この村に、家族が、いました」


十六人が、驚いた。


「……三十七人!?」


リナが、叫んだ。


「……はい」


ノアは、答えた。


### 五十五


「……なぜ、そんなに」


バルドは、聞いた。


ノアは、答えた。


「……当然です」


彼女は、続けた。


「……五百人の、避難民が、います」


「……はい」


「……その人たちの、家族は」


ノアは、言った。


「……どこかに、います」


彼女は、続けた。


「……そして」


ノアは、言った。


「……多くが」


彼女は、続けた。


「……軍に、入ります」


### 五十六


「……なぜですか」


エマが、聞いた。


ノアは、答えた。


「……村を、失ったからです」


彼女は、続けた。


「……仕事が、ありません」


「……」


「……食べるために」


ノアは、言った。


「……軍に、入ります」


十六人は、その説明を、聞いた。


そして、トムが、言った。


「……つまり」


彼は、続けた。


「……あの軍の中に」


トムは、言った。


「……村人の、家族が、いる」


### 五十七


「……はい」


ノアは、頷いた。


「……何人、くらい」


バルドが、聞いた。


ノアは、答えた。


「……わかりません」


彼女は、続けた。


「……でも」


ノアは、言った。


「……西側で、三十七人でした」


彼女は、続けた。


「……千人なら」


ノアは、言った。


「……九十人前後だと、思います」


### 五十八


バルドは、その数字を、聞いた。


そして、しばらく、考えた。


そして、言った。


「……ノアさん」


「……はい」


「……名簿を」


彼は、続けた。


「……全部、写せますか」


ノアは、答えた。


「……五百人分ですか」


「……はい」


バルドは、頷いた。


ノアは、しばらく、考えた。


そして、答えた。


「……一晩、あれば」


### 五十九


「……お願いします」


バルドは、言った。


「……何に、使うんですか」


ノアは、聞いた。


彼は、答えた。


「……明日」


バルドは、続けた。


「……千人に、見せます」


十六人が、驚いた。


「……全員に?」


ミアが、聞いた。


「……はい」


バルドは、頷いた。


「……そして」


彼は、続けた。


「……読み上げます」


### 六十


「……五百人分をか」


ジャンが、聞いた。


「……はい」


バルドは、答えた。


「……何時間、かかる」


彼は、聞いた。


バルドは、答えた。


「……五時間ほどです」


「……その間」


ジャンは、言った。


「……攻撃は」


バルドは、答えた。


「……止まると、思います」


そして、彼は、続けた。


「……そして」


バルドは、言った。


「……五時間、稼げれば」


彼は、続けた。


「……三日目が、終わります」


第37話終了。


---


## 次話予告


第38話「三日目」


最終日。


柵は、壊れた。


蔓は、焼けた。


そして、重傷者が、三人。


残された手は、一つ。


五百人の、名前。


「……読み上げます」


バルドは、そう、宣言する。


千人の、軍の前で。


しかし。


ダグラス・ヴァインは、それを、許さない。


「……耳を、塞げ」


彼は、命じる。


「……全軍、耳を、塞げ」


そして、そのとき。


一人の女が、前に、出る。


白い、翼の紋章を、背負って。


「……では、私が、話します」


エリス・ヴァレンティア。


三日間、一度も、剣を抜かなかった女。

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